先輩、最近、TPPって言われてますけど、あれって本当に日本の輸出産業が伸びるんですか?
そうだな、伸びるかどうかというと、難しいだろう。本質的には日本のアメリカ化と言えるものだしな。それに工業製品の関税は車だと2.5%程度、この程度の関税がなくなった所で輸出産業は伸びないよ。為替で言ったら2円程度、そんなのアメリカが毎年ドルを刷っているから、円高1年分にもならない。ちなみに、去年の11月の為替水準は1ドル81円、今は大体、78円だから3円程度、つまり、今回のTPPの関税が無くなるメリットは円ドルレート8ヶ月分でしかない。
つまり、今回の関税が安くなるってのは、アメリカがドルを刷って1年分にもならないってことですね。全然メリットないじゃないですか、それとアメリカ化って言いますけど、どんなふうにアメリカみたいになるんですか?
例えば、車で言えば、現在の日本の車の排出ガス規制とか、そういうものが緩和される。そうなるとアメ車が入ってきやすくなる。
でも、そんな車、日本人買いませんよね。
ああ、そうだ。日本人だったら買わない。日本人は、安くて、燃費が良くて、排ガスの少ない車を選ぶだろう。だから、規制を緩和したからといってアメ車は日本では売れない。
でも、アメリカはそういう規制を参入障壁としてみているんですよね。
そうだ、非常に頭の悪い連中が、今回のTPPには関わっている。アメリカの産業界の要請でTPPが作られているらしいが、基本的に他国の状況をきちんと理解しているとは言いがたい。
アメリカってだからダメなんですかね。
そう、そこが彼らのダメな所、自分のダメなところを見ずに、相手がダメだと言っている段階で、既に彼らは負けているんだ。
話をTPPに戻しますけど、あれって日本にメリットがあるんですか?
産業界が乗り気なのは、海外の人材を自由に雇えるので、人件費を安く出来ることだ。
そうなると、非正規雇用の人たちはお払い箱ですか?
多分、そうなるだろう。
だとしたら、とても残酷なことですね。
ああ、そうだと思う。特に今の30代は、社会に出た時から不況で一度もいい目にあったことがない。安月給で働かされ、安定しない雇用で振り回され、結婚もできず、ただ働かされるだけで、今度はTPPに日本が入ったら、外国人に仕事を奪われる。ここまで来ると、いくらなんでも怒るだろう。恐らく暴動になるだろう。
そうですね。そこまでこき使って、今度TPPになったから君達いらないって企業が言い出したら、いくら何でも怒りますね。
彼らの世代は、人生を犠牲にしてきた。グローバル、グローバルといって、その言葉が響く度に雇用は奪われ、給料は下がり、人生を奪われてきた。要するに競争する度に、幸せがなくなっていく状態に陥っている。
でも、日本は資源もないし、それしか生きる道がないじゃないんですか?
いや、そうでもないんだ。なければ作ればいいし、最近は、エネルギーコストが上がってきたので、自然エネルギーと従来のエネルギーが拮抗し始めているんだ。
でも自然エネルギーって高いんですよね。
あれは、デマだ。電力会社がテレビ局に莫大な広告費を払って、主張している嘘だ。例えば1kwhあたり49円というのは、10年前の数値で、現在の日本の太陽電池のコストは取り付けコストも含めて1kwhあたり29円程度、中国だと自然エネルギーの買取価格は1kwhあたり14円なのだけど、それで採算がとれはじめているんだ。
つまり、実際は自然ネルギーのコストは、日本で広まっている数値よりも1/2から1/3程度なんですね。
そう、だから、エネルギーは自然エネルギーでも大丈夫なんだ。もし、自然エネルギーがそんなに高いんだったら、中国が大規模なソーラーファームや風力発電所を作ったりしない。作っているのは採算が合うからなんだ。でも、日本では、採算が合わないと経済産業省が言っている。
なぜなら、そこには、原発利権が絡んでいるんだ。原発に関わる仕事には莫大なコストが掛かる。そこに天下り法人もたくさんある。なにより、電力会社に天下り先のたくさんある経済産業省にとって、既存の電力会社を危機に陥れる自然エネルギーは、邪魔なんだ。
でも、原発吹っ飛びましたよね。もう、そんな事やってられないんじゃないですか?
いや、原発を廃炉にしたり、汚染された土地を除染したりと、莫大なコストが掛かる。その仕事の発注を国は東京電力の関連会社にしている。この入札を有利に進めるために官僚のコネが必要になってくるとは思わないか?
確かにそうですね。大きな金の動くところに利権ありですか?
そうだ、利権があるかぎり、それを進めたがる。甘い汁があるところに群がっているのが今の官僚の姿だ。また、官僚の評価制度もそうやって無駄を拡大させたものが出世するような仕組みになっている。
つまり、官僚の評価制度が国民中心ではなく、利権中心になっているんですね。
そのとおり、これは天下りを有効に機能させるためには、国民中心の評価システムだと機能しない、だから、官僚OBの主張を取り入れる為には、利権中心の評価制度が必要になってくる。自民党政権が続いた長い間に、腐敗構造が出来上がり、その結果、こんなに歪んだ制度ができてしまった。
だから、先輩は自民党に票を入れないんですね。
そのとおり、日本をこんなにダメにした政党だからな
でも、民主党もTPPをやるって言ってますよね。民主党もダメなんじゃないんですか?
民主党でTPPを支持しているのは一部の議員だけで、本当の多数派は慎重派なんだ。だけど、テレビ局は、少数派の推進派をクローズアップしているから大きく見える。TPPを指示している議員と反対している議員は拮抗しているんだ。問題は、彼らが批判している内容を具体的に伝えず、ただ反対しているという事しか伝えないテレビ局だ。
新聞もそうですね。どうして、日本の大手メディアは嘘を付くんでしょうか?
多分、原発問題と同じ構造が、アメリカに対してもあるんじゃないかな
なるほど、でも、彼らアメリカに従順な理由は、どこにあるんですかね。
そこは俺にも分からないが間接的な情報はある。記者クラブメディアは癒着していることで、お互いの利益を享受している。故に、その中での主要なメディアの方針に金魚の糞のようにつながって動いているのではないかと思う。
それは、どういうことですか?
俺は読売グループが怪しいと見ている。というのは、読売グループ創設者の正力松太郎は、かつて、CIAとつながっており、日本の原発を推進したのも、彼らだ。
なるほど、原発、東京電力、アメリカ、TPP、読売新聞、記者クラブとつながっていきますね。
そう、多分、そういう構造で動いているんじゃないかと思う。
日本の今の問題に読売新聞やアメリカが暗躍しているのではないかというのは穿ち過ぎかもしれないが、妙に関連性があるとは思わないか?
確かに妙に連鎖していますよね。
つまりだな、こういう連中を排除することが日本を正しい方向に導くんだと思う。まず、記者クラブをなくし、東京電力は解体、TPPは排除、アメリカ流の経営形態から日本流の経営形態へ移行、外需産業の内需化を推し進め、国内であらゆる資源やエネルギーを自給自足できるようにすること。それが出来るのが日本のすごいところなんだ。
そんな事本当に出来るんですか?
現状では、元安、ドル安の状況が続く限り、この先、外需産業で儲けることは、ほぼ不可能に近い。であれば、外国の資源に頼っている部分、石油、石炭、ガス、小麦、とうもろこし、大豆などを国内で生産できるようにするしか、日本は生き残っていく他ないんだ。他国に、日本が利益出せないからドルや元を高くしてくださいと言ったって言うことを聞いてくれないだろう。であるとするならば、科学技術で国内で頑張るのが日本の取るべき道だと思う。たとえば、石油を藻で生産したり、食用油に使っている大豆を藻(ボトリオコッカス)で代替したり、また、その藻から油を取り出した粕を飼料として活用したり、やり方は色々ある。また、その分野で世界で最も進んでいるのは日本なんだ。
じゃぁ日本は、これから輸出ではなくて科学技術で食っていくしかないってことですね。
そのとおり、それしかないから、そうするしかないんだ。まさに天は自らを助くものを助くだ。