Googleが開発者向けカンファレンス「Google I/O」にて、次世代動画規格「WebM」を発表した。このビデオコーディーックは別名、VP8と言われ、YouTube動画に採用されているVP6の後継規格である。このビデオコーディックを開発したon2社をGoogleが去年買収して取得した技術、Googleは、WebMをH.264に代わるビデオコーディックにするつもりのようだ。
前の規格のVP6の特徴がウィキペディアに載っているので、それを引用
http://ja.wikipedia.org/wiki/VP6
VP6の特徴(WebMはVP8)
良い点
・MPEG-2等と比べて廉価なライセンス料(WebMではこれがフリーになる)
・高圧縮、高画質(フルハイビジョンは6〜8Mbps程度で可能)
・デコードが速い(1920×1080の動画を2.5GHzのPentiumMで再生可能)
・低レートにおいても破綻しない
(640×480ピクセルの動画を200kbpsでエンコードしても見られる範囲)
・高レートでも安定している
欠点
・エンコードが非常に遅い
WebMの特徴(古い規格VP6から想定)
- YouTubeの動画と聞くと画質が悪いと思われる人もいるかもしれないが、実際には画質はすごくいい、同等の画質であれば大体、H.264の70%程度の容量(VP6の場合)で済む。使っている技術は三次ウェーブレット圧縮と言われている技術であり、JPEG2000で採用されている技術、映像を点ではなく波形で解釈するフォーマットであるため、ブロックノイズが原理的に発生しない。これをGoogleは使用料フリーにしてぶつけてきた。この規格は、再生は最高、エンコードは大変と言う規格であるが、OpenCLを使ってGPUを使えば、かなり便利なものとなるだろう。H.264規格はライセンス料金が発生する規格で不便であった。
H.264のライセンス条件
- MPEG LA、H.264の共同ライセンス体系を発表(2003年の記事)
- http://av.watch.impress.co.jp/docs/20031118/mpegla.htm
【デコーダー/エンコーダーの使用費用】
・エンコーダ/デコーダ搭載製品の製造会社から、製品辺り0.2ドルのライセンス料を徴収
・年間10万個以下の場合は、ライセンス料は無料
・年間10万個以上500万個以下0.2ドル/個
・年間500万個を超えると0.1ドル/個
・1社辺りのライセンス料の上限は
・2005〜2006年が350万ドル
・2007〜2008年が425万ドル
・2008〜2009年が500万ドル
・初期のライセンス期間
・2010年の12月31日までで、
・2005年1月1日以前に販売されるエンコーダ/デコーダに関してはライセンス料は無料
(早期の市場参入、立ち上げを促すため)
【動画利用費用】
・AVC Videoを利用した映像タイトルなどのコンテンツ
(物理メディアや、PPVやビデオオンデマンド)
・12分以下のものにはライセンス徴収を行なわない。
(Googleの動画の時間制限はこれが理由かも...)
・12分を超えるコンテンツにつては、タイトルに支払われた料金の2%、
もしくはタイトルあたり0.02ドルを徴収する
・月額課金などの購読式コンテンツ配信事業
(衛星放送やインターネット、CATVなどの用途を問わず、配信システムの購読者)
・10万以下であれば課金を行なわない
・10万を超える購読者を持つ事業者には、ユーザー数に応じて課金が行なわれ
・10万〜25万人 :2.5万ドル
・25万〜50万人 :5.0万ドル
・50万〜100万人 :7.5万ドル
・100万人以上 :10.0万ドル
・無料放送
・10万以下の家庭への配信はロイヤリティ免除
・10万を超える家庭への配信の場合は1万ドル
・インターネット配信
・2010年12月31日までの初期ライセンス期間に課金は行なわない
・1社辺りのライセンス料の上限
・2006〜2007年が350万ドル
・2008〜2009年が425万ドル
・2010年が500万ドル
- 初期のライセンス期間は2010年の12月31日までとなっており、早期の市場参入、立ち上げを促すため2006年1月1日以前の製品、サービスに関してはライセンス料を徴収しない
・制限のないWebM、これによって動画利用はフリーになる
- ...とこのようにH.264は配信事業者、エンコード/デコード製品の業者にライセンス料が発生する。例えばYouTubeのような動画配信の場合、インターネット配信なので無料(2010年12月31日まで)だが、コンテンツ配信になると、ライセンス料が発生してしまう。このようにライセンス的にガチガチなH.264に対し、Googleの「WebM」(VP8)はフリーである。しかも、画質はブロックノイズがなく、容量も3割少なくていい、時間制限もない。このGoogleの発表でH.264の2010年12月31日以降のライセンス規定更新に影響を与えるだろう。
・WebM、HTML5に採用される可能性大
- WebMによって自由に動画が扱える事になる。そして恐らくは、動画フォーマットの主導権をグーグルが握る可能性があるのだが、そうなったとしても、誰もが無料で使えるというのがGoogleの姿勢のようなので、むしろその方がユーザーにとっては好都合と言えなくもない。HTML5にWebMとH.264は併存する形で採用される可能性が高い。
・同じウェーブレット圧縮を使っているJPEG2000が復活するかも...
- JPEG2000の画質を知っている人は、同じ技術を使っているWebMの画質が想定できるはずだ。WebMが普及する事でウェーブレット圧縮に最適化されたチップが出てくるだろうから、これによって同じ技術を採用したJPEG2000も採用しやすくなるのかもしれない。デジカメやビデオカメラにWebMが採用され、JPEG2000も3D規格が追加されてJPEG2010とかになって、復活するかもしれない。もし、JPEG2000が採用されたら、静止画フォーマットをJPEG2000に統一する事ができる。GIFもJPEGもPSDもRAWも全部いらない。JPEG2000一つでいい。GoogleのWebMにより、静止画フォーマットの構成がシンプルになる可能性が出てきた。