SKY NOTE

skymouseが思った事考えた事を記したもの

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銭ゲバを見て義父を思う

銭ゲバを見ていて、風太郎が義父と酒を酌み交わすとき、ふと思った。自分の義父も私と酒を酌み交わしたかったのだろうか?と。私の義父は天才だったけど飲んだくれでどーしようもなかった。だから、子供の私は酒が嫌いだった。東京に出てから、田舎にあまり帰る事もなく、酒を酌み交わす事もついに一度もなかった。
 
だが父親というのは、息子と酒を酌み交わしたいものなのかなとあのシーンを見ていて思った。私は養子で血のつながりはなかったし、あまり縁もない人の様に思っていた。義父は亡くなって、知らせは実家からではなく、母の友人から来た。それだけ家からも縁が薄くなっていた。だが、天才的な頭脳と強烈な個性、飲んだくれなのに時間の約束は守る変な人だった。そういう個性的な人だったし、怖い父親でもあった。怖すぎて殴られた事はない。なぜなら、逆らう事すら威圧感で出来なかったのだ。言う事は論理的で、短い言葉でスパッと切られてしまい、いかなる論理も通用しない人だった。思い出すのは、沢を歩いていて、石の隙間に落ちた時、全然助けてくれず、「だから言ったろう、気をつけろと」つまり、気をつけろと言ったのに気をつけなかったお前のミスに俺は同情しないという亊なのだ。挟まった石の隙間から、自力で這い上がって、ホコリを振り払いながら、黙々と歩いた子供時代を思う。
 
要するに論理性、義務、そういうものには厳格な人だった。そして同時に、その義務を果たしていれば、基本的に自由である事も教えてくれた人だった。だが、大人になってもやはり怖い人であった。いかなるウソも通用しないので、私は正直にならざる終えなかった。だから、嘘をつくという甘えが許されない。だから、正直に率直に話す必要があった。鷹の目に見透かされる怖さを感じながら正直に話すという亊が必要なのだ。
 
その義理の父と私はついに酒を酌み交わす亊はなかった。義父は私と酒を飲みたかったのだろうか?父親とはそういうものなのだろうか?そう思うと、多少悪い事をしたのかもしれないと思った。酒の一杯くらい酌み交わしてさよならしておいた方が良かったのかもしれない。だが、酒が嫌いなのは、義父のせいなので、義父の自業自得だと言えば、亡くなった義父も「まぁそのとおりだな」とクールに受け答えしてくるかもしれないな。クールな人だったから。そんな亊を述懐する様なシーンだった。