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王子HD、LEDの正面輝度を20%向上させる微細加工技術を開発

王子ホールディングスは、従来よりLEDの輝度を20%向上するサファイア基板、PSSPSS:Patterned Sapphire Substrate)の製造技術を確立したと発表した。
 
 
 EETims:LEDの正面輝度を20%向上、サファイア基板に微小な複合構造体を形成
 http://eetimes.jp/ee/articles/1403/07/news076.html

 王子ホールディングス:プレスリリース
 LED向け微細構造つきサファイア基板の新規製造技術確立のお知らせ
 http://www.ojiholdings.co.jp/news/2014/140227.html

LEDや有機ELなどの発光素子は、内部で100%近い効率で発光するものが既にあるが、それらは内部で反射して外に出てこれない事で最終的な発光効率が下がっていた。今回の王子ホールディングスの技術は、それを微細加工で反射させて、外に出てこれるようにしたもの、簡単にいえば、蛍光灯の裏に銀紙を敷いて、明るくするのを微細加工で実現した感じ。

PSS構造有り無しによるLED光取り出しの概念図

微細粒子の精密塗工技術を応用する手法により、全面に微細凹凸を形成したサファイヤ基板(PSS)を作ることで、光が素子の外に反射するようにする。新開発のPSS基板は、従来の3マイクロメートル(マイクロ:1/1000mm)よりも微細な0.2マイクロメートル(200ナノメートル)の微細凹凸を広範囲に制御でき、形状も円すい形や釣鐘型、ドーム型など様々な形状に対応することで、光の波長に合わせた加工が可能

今回のPSS基板技術の概要

・大きさ:3マイクロメートル → 0.2マイクロメートル(マイクロ:1/1000mm)
・形状 :円錐、釣り鐘、ドームなど自由自在に形状を生成できる
・効果 :従来のPSS基板のLEDよりも20%正面輝度向上
     凹凸構造のないもの(PSSでないもの)と比べれば、1.8倍輝度が違う。
・量産 :2014年4月サンプル出荷、2016年度中の製品化を目指す。

PSS構造有り無しによるLED点灯比較

PSS基板のない平坦なサファイア基板を用いたLEDチップに比べて、全光束1.8倍、正面輝度は2.4倍の出力が得られる。
<凹凸構造のピッチが3μm程度で発光波長385nmの場合>
(全光束:光源から全ての方向に発せられる光束)

図1. 新規開発したPSSの作製例(ピッチ:400nm、アスペクト比:0.64)

図2. 新規開発したPSSの作製例(ピッチ:200nm、アスペクト比:0.85)

さらに、この新開発のPSSは、LED行程中の成膜品質を高められると考えられる数百nmピッチの微細加工技術と数μmの微細構造体を組み合わせた複合構造体を作成することが可能

図3. 新規開発した複合構造型PSSの作製例(ピッチ:400nm/3µnm、円錐)

図4. 新規開発した複合構造型PSSの作製例(ピッチ400nm/3µm、円錐台)

この微細加工技術によって、LEDの輝度が20%高まるということは、最近発表されたロームの190lm/wのLED蛍光灯が、この基板を用いれば228lm/wになるという事。2016年度中に製品化とのことなので、その時期にはLEDの発光効率も今より高まっているだろうから、そこからすると、2016年辺りでLEDの発光効率は250lm/w以上いくんではないかと思う。つまり、このサファイヤ基板により、2016年度には、ほぼ理論限界値(300lm/W:白色光/コストや電力損失などを考慮すると実質的な限界値は250lm/wと言われている)に近いレベルのLEDが登場するという発表ともとれる。では、現在の蛍光灯と比較してどうなるか比較してみる。

40形蛍光灯で比較
 普通の蛍光灯   :40w
 インバーター蛍光灯:32w
 最新のLED   :13w(ロームの190lm/Wの40形LED蛍光灯)
 今回の技術    :11w(推定:20%向上すると見積もって) 

インバーター蛍光灯と較べても1/3程度になることが分かる。日本の照明電力需要は1500億kWhだが、それが、500億kWh以下になる可能性があるということなのだ。つまり、LEDによって、1000億kWh分の電力削減余地があるということなのである。それは、こういう微細加工技術を使ったLEDチップによる発光効率の向上によって可能となっているのだ。こういう技術はLEDのみならず有機ELにも採用されるだろうし、携帯やタブレットのディスプレイの消費電力の削減にも貢献するだろう。バッテリーが少なくできるので、より軽く、より薄いモバイル端末が、こういう技術でできるはずだ。ディスプレイ技術では、最近、MEMSディスプレイが出てきて、これによって、液晶よりもさらに1/2の電力で表示できるというから、さらに薄く軽くなるだろう。そう考えると、地震がいつ起きるかわからない中で事故原因も究明されていない原発を再稼働するよりも、こういうものをエコポイントなどで普及させる事が重要だと分かる。日本には優れた技術があり、わざわざ危ないものを使わずに安全に快適に暮らせるのに、利権で動く政治は、人々の危険を度外視して進む。しかし、それを選んでいるのは国民自身というのは悲劇という他ない。