SKY NOTE

skymouseが思った事考えた事を記したもの

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1%の先見性が99%の時間を与える

私は、プログラムの中のループ命令のバグに日本が陥っていると感じる。ループ命令のバグとは、必要な結果に至る前にループを終わらせてしまう事である。条件が成立するまでループを続けることを無意味だとする理屈が横行している。

または、そのループ命令を高速化するために、その条件に過激なパラメーターを設定しようとすると、プログラムそのものがハングアップするというリスク、というか、変なパラメーターを入れると、システムが破綻する原因になったりする。過激なパラメーターは、Jobsのような人間にやらせるのがいい、だが、そのJobsですら、その方法論によってアップルから追い出された。復帰後のJobsを見れば、過激でありながらも細心の注意をはらって、行動することの重要性が分かる。だから、成功したのだ。その細心さのない未熟さ、失敗というものを知らない愚かさ、そういうものを社会は相手にしない。昔のJobsは、完璧を望むあまり、不完全な商品をリリースして失敗した。復帰後のJobsは、長い時間をかけて、自分の理念を実現するために、その条件となるOS、サービス、ハードウェア、デザインなど一つ一つを完璧なまでに洗練させて、最終的にはアメリカで時価総額No.1の会社にまで自社を育て上げた。

Jobs復帰後のアップルは、技術オタクの私から見れば、非常に退屈だった。その殆どが飛躍ではなく基盤技術の修練に過ぎなかったからである。昔のJobsから見ると、非常におとなしい印象だった。昔のJobsだとOSにAIを最初から乗っけてしまうような過激さがあったが、復帰後のJobsは、安定したOS、使いやすいOS、そういうユーザーのメリットになることを徹底的に突き詰めていた。世の中が飛躍だと言っていたことは、その10年以上前に、既にオタクの中では提唱されていたことである。Jobsの素晴らしい所は、それを実現したことにある。それは、その基盤となるものを彼が不断の決意をもって一つ一つ築きあげてきたからに他ならない。その基盤なくして、現実化はありえなかった。製品の系譜を見ると、最終結果を得るために何年も前から準備をしていることが分かる。彼の頭には最初から答え(理想)があった。だが、それを実現するための基盤を何年もかけて一つ一つ地道に築きあげてきたのが、復帰後のJobsである。

彼の華やかとも言えるプレゼンの裏には、それを実現するために費やされた何年もの時間と労力がある。だから、彼の華やかな部分を見て、その上辺だけを真似しようとするのは間違っているのだ。大事なのは、それを実現する99%のプロセスである。ただ、最初の発想という1%の重要性も忘れてはいけない。彼が誰よりも早く、現実をつくり上げることができたのは、まず、1%の先見性があってこそなのだ。何年も前から、その理念を忘れず、そのために継続して努力した結果が、彼の成功の裏にある。1%の理念がなければ、彼は他人の後追いをするしかなかっただろう。何年も前から誰よりも先に行っていたからこそ、十分な時間をかけて準備をすることができた。他者はそれに追いつけない。なぜなら、その1%の先見性を尊重しないからである。

1%の先見性が生み出す時間、そして、その時間を使った弛まぬ努力、それが結実したのがアップルのイノベーションである。単なる、1%の先見性ならば、技術オタクならば誰でも言えた。私でも言えた。だが、それを実現するために99%の努力をしたものがJobsである。他者は途中まで行って諦めた。継続するために必要な地味な努力を忘れていたからである。問題なのは、地味な努力を省いて、結果を求めるあまり、最初から完璧な答えを要求してしまうことである。99%の努力を省いた1%など子供の戯言に過ぎない。Jobsは自身が考える完璧な製品とは違う製品を作り続けてきた。だが、その時々でベストの製品を提供し続けた。その継続の果てに新しい製品を生み出す土台を作り、その上で、イノベーションを実現した。例えば、iPod、単なる音楽プレーヤー、これがiTunesとなり、音楽サービスとなった。それを映像や書籍にまで広げ、コンテンツサービスとなり、その土台のもとにタッチパネル式のiPhoneの登場と、ひとつの結論にダイレクトに結びつかないが、その土台となるものを着実に積み上げてきたのがJobs。

問題は、タッチパネル式のiPhoneをイメージするあまり、初代iPodをそれとは似ても似つかないダメなものと評価することである。昔のJobsならば、それを糞だといって捨てただろう。だが、復帰後のJobsは、それを洗練させ、最終的にはiPhoneにまで結実させた。自分はiPodが出た時、新しいがJobsらしい飛躍した新しさはないと思った。しかし、現実的であると思ったことは確かだ。そのときはその程度にしか思っていなかった。だが、これは単なる序章だったのだ。市場を広げるためにコンテンツ市場を制し、その規模を持って最終的にはiPhoneという形に結実した。重要なのは、最初からiPhoneのようなものを作って、人々に支持されたかということだ。おそらく、非常にクールで新しいが新しすぎてマイナーだと思われたことだろう。それはニュートンの失敗がそれを証明している。それをマイナーではなくメジャーにさせたのは、iPhoneとは似ても似つかない初代iPodから始まったコンテンツ市場の制覇だった。物事には手順が必要で、その手順を省いて、完璧な結果を望んでもダメなのだ。まず、地道な努力の下積みがあって、その土台の上にイノベーションが結実する。それを無視するのは、幼稚である。「iPodなくして、iPhoneなし」なのだ。

他者の地味な努力を、笑ってバカにするほど偉いのならば、自分でやってみせればよい。その時、プロセスの重要性に気づくだろう。それを知らないというのは、そいつが何もやっていない証拠だ。理念、理想というのは、それができていないからといって笑うものではない。誰もが、理念、理想を知っている。だが、その実現が困難であるからこそ、その前段階の土台となるものを必死で作っている。その土台を作っている人たちを笑うの人間こそ、笑える。タコが自分の足を食うようなもので、全く馬鹿げているからだ。批判を受け入れていないのではなく、批判を受け入れつつも、それが出来る前段階で四苦八苦している現実が見えていないのがおめでたい。プロセスが見えていない人間は、ダメだね。