SKY NOTE

skymouseが思った事考えた事を記したもの

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目先を尊ぶ愚かさ

日本では目先の利益を追求する事を現実的という。そして、長期的な利益の追求を理想といって蔑む。日本が強かった時代は、短期的利益を蔑み、長期的な問題解決を尊んだ。なぜならば、短期的利益追求よりも、長期的な利益追求は、遥かにハードルが高く、困難が伴うので、尊ぶ必要があるのだ。そして、それが出来ていた時代の日本は、外国に対して圧倒的なアドバンテージを持っていた。なぜならば、長期的な研究開発は、外国の企業が真似をしようにもできない水準にあったからである。特に材料開発において強い。(今でも強い)
 
1990年代、アメリカ型の経営モデルを採用する過程で短期的利益追求こそが正義という流れが強まった。思えば、その頃から日本は弱くなり始めたといえる。なぜならば、短期的に取得できるノウハウは、他者にも同様に習得が可能だからである。圧倒的なアドバンテージを確保する事が出来ず、その結果、高付加価値製品を作れず、量産能力で日本は劣るようになる。やがては売り上げでも見劣りするようになり、グローバル戦略の欠如も伴って、日本経済は徐々に後退し始める。さて、現実的というのは利益を追求する事であるが、日本が負けているのはなぜか?と考えてみよう。それは、目先の利益を追求した結果なのだ。本来、日本は高付加価値品を作らなければいけない。その為には、長期的な研究開発が必要だ。それを90年代にあらかた辞めてしまった。それが、その将来である現在に響いているのだ。つまり、過去の失敗が現実に響いている。これもまた現実とは言えないだろうか?
 
昔の人は、長期的な対処を放棄した場合の負の要素をよく理解していた。つまり、将来に備える為に現在やっておかないと未来において困る事になる。そういう考え方を持っていたからこそ、安易に目先の利益に偏る事なく、長期的な研究開発を続けてきたのだ。つまり、ピンキリのキリの部分を把握していればこそ、理想を大事にする姿勢があるのである。よく現実的という言葉を使う人は、目先の利益を追求する事が、シビアで高度な判断が出来ていると思っているようだが、実際は逆である。困難な長期の研究開発に挑む事こそ、真にシビアで高度な判断が必要なのであって、短期的利益追求は比較的楽な方法論に過ぎない。その楽な方を選んで、困難な方をバカにするのは、考え方がアベコベである。短期的には、良い結果が出ても、そのメッキは時間とともに剥がれる。それが短期的利益追求の脆さである。そのピンキリのキリの部分が見通せないところが、目先の利益を追求し、長期開発(理想)をバカにする人の幼稚さといったところだろう。所詮はメッキに過ぎないという現実の表面部分しか見ていないと言ったところだろうか...
 
長期戦略による抜本的革新とグローバル戦略の融合こそ、真に強い経済である。最近の日本企業は、こじんまりとしたものしか作れなくなっている。それは長期戦略が欠落しているからだ。GoogleAppleが勝っているのは、OSを土台にした確固とした長期戦略の土台の上に自社の短期戦略をのせているからである。その上にグローバル戦略を融合させているので、時間軸では、短期、中期、長期に強く、その強さを世界戦略によって広げる努力を惜しみなく続けているからこそ強いのだ。それが出来るのもOSと言う長期戦略の土台があってこそなのである。だから、長期戦略を理想と言って蔑むのは、土台の根底から否定する発想である。つまり、見当違いと言う事だ。
 
そういう意味では、長期戦略とはレールであり、短期戦略は、そのレールの上を走る電車のようなものだ。そしてグローバル戦略とは、そのレールの路線網のようなものと言えるだろう。レール自体が陳腐化して古くなっている時に、そのレールを交換保守する作業を怠って、古いレールを使い続けて、原発事故でドカンとなったのが今の日本だとすると、日本にも新しいレール(長期戦略)が必要である。それは、自然エネルギースマートグリッドとバイオエネルギーによる新しいエネルギー自給戦略である。放射能二酸化炭素も出さず、しかも国産のエネルギー源である。そして、その道は困難である。しかし、だからこそ、挑むに値する価値がある。なぜなら、困難な事を成し遂げてこそ、そこに価値が生まれ、その価値が経済となって跳ね返ってくるからである。それを見通せれば、理想をバカにするのが愚かだと分かると思う。なぜなら、それが本来、日本が向かうべき高付加価値路線だからだ。短期的な利益追求という低付加価値路線でジリ貧になっている現実を直視すれば、それが真に現実的なのである。