日本ガイシ,高効率燃料電池を開発---SOFCで発電効率63%
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090612/171654/
燃料電池が有望なのは、自然エネルギーと違って必要なときに必要なだけ電力を供給できる事。スマートグリッドやバッテリーで負荷を平準化しても、どうしても電力供給にムラが生じるとき、燃料電池は頼りになる。
ではなぜ、既にある火力発電所では駄目なのか?それは火力発電所では発生した熱を捨ててしまうことで、高効率なものでも60パーセント位で、その上、10%程度、送電ロスでなくなってしまう。つまり、総合効率が実質54%なのに対し、燃料電池場合、分散電源なので送電ロスは殆どなく今回の燃料電池では、発電効率63%、また、熱も使った場合、総合効率が90%を超える。。つまり、実質36%程度燃料電池の方が有利なのだ。
燃料電池のメリット
1.分散電源なので送電ロスがない
集中電源に比べて10%の送電ロスがない
・火力発電:54%(発電効率60%×(1-0.1))
・燃料電池:63%
2.熱も使った場合の総合効率は90%を超える。(総合効率で1.58〜1.67倍)
燃料電池(総合効率90%)
・発電効率:63%
・熱の利用:27%以上
火力発電(総合効率54%)
・発電効率:60%(実質54%)
・熱の利用:0%(捨てている)
3.自然エネルギーと違って、ほしいときに電力が供給できる
自然エネルギーの補助電源として有望
これらのメリットを総合すると、火力発電よりも燃料電池の方がメリットが多い。このような形で考えると、燃料電池はスマートグリットと連動する事で、自然エネルギーのムラを吸収するのに役立つと考えられる。さらに熱を利用し、燃料電池で暖房をし、ペアガラスで保温すれば、ムダがない。太陽の熱があるときは太陽熱を、それがないときには、燃料電池の熱をという形で、相互補完関係が作れそうだ。
火力発電では、そもそも熱は捨ててしまうし、電力の供給も送電ロスで1割程度失ってしまう。そう考えると、21世紀の電気は分散電源であり、自然エネルギーと燃料電池の相互補完による電力の安定供給がベストに見える。今回の日本ガイシの発表は、そういう可能性を感じさせてくれるものだった。
2004年の電源(人口1億2777万人)
日本の2004年の消費電力:9700億kwh
2030年の電源(人口1億1300万人)
日本の2030年の消費電力:6800億kwh
- 1.省エネ/人口減少:2900億kwh
- ・省エネ LED+調光 :1800億kwh削減
- (蛍光灯を80lm/wとし、250lm/wのLEDが出来るとする)
- ・人口減少(1400万人):1100億kwh減少
- 2.燃料発電 :2500億kwh(全電力の36%)
- ・原子力 :1600億kwh(ベース電源として電力消費の23%を確保)
- ・燃料電池 :900億kwh(変動吸収として13%を確保:フル出力だと倍の出力が出せる)
- 3.自然エネルギー :4360億kwh(全電力の64%)
- ・太陽光(集光型) :1600億kwh(発電効率40%)
- ・太陽光(住宅用) :1100億kwh(発電効率23%)
- ・水力 :960億kwh(ベース電源として電力消費の14%を確保)
- ・風力 :700億kwh
原子力が大幅に減っているのは、電力の変動吸収量を考えたときに原子力のような一定出力の電源では、ムラを吸収しにくいから。そこで、燃料電池の割合を増やし、出力変動に備えるようにした。スマートグリッドが、より効率的に機能するならば、原子力を増やして二酸化炭素の排出量を減らすという発想もありだと思う。一番シビアなのは、6月の梅雨時の無風の状態、自然エネルギーの電力が少なく、蒸し暑くてエアコンが動き、供給電力に支障が出る時期だと思う。この状況をクリアできるスマートグリッドをはじめとするインテリジェント電力網や磁気冷凍技術などを使った高性能なエアコン、断熱性の高い住宅など、総合的に対処する事により、電力消費のムラを抑制しつつ、蓄電池や燃料電池を高出力で動かして、供給電力を一定に保つ。もちろん省エネ技術や仮想都市を使って電力消費そのものの水準を下げる事も忘れてはならない。
このようにすべてを組み合わせ、未来の電力は絶妙なバランスを保ちながら、エネルギー消費を抑えつつも二酸化炭素を削減し、快適な生活を約束する。