SKY NOTE

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児童ポルノ法=偽善

新しい児童ポルノ法は、明らかに偽善である。なぜならば、正義とは罪のあるものを裁き、罪のないものを裁かない為にある。では、罪の所在をどのように説明するかというと、被害者の存在を前提とする。しかし、この法律の主旨では、二次元素材の所持が問題とされている。つまり、二次元が呼び水になって三次元に移行するという罪の所在を間接的に定めているところが問題。ていうか、現実は逆、二次元を規制したために、三次元に被害が及んでいる。(下記リンク参照:下の方にあるPDF)他の問題点として客観的基準がない。故にいくらでも拡大解釈が出来るため、権力者にとってはいつでも、気に入らないものを犯罪者にする事が出来る。主観であるのだから、それを決める人間を操作できれば、誰でも処罰できる。間接性という曖昧さによって拡大解釈が簡単だからだ。

さて、こういう強権型法律(被害者もいない、二次元メディアを所持しているだけで犯罪)の問題点を歴史で見ると、生類哀れみの令がある。一見、動物愛護法の究極系とも言えるべき法律だが、結果は酷いものだった。犬を殺したら、人間も死罪という極端なものであった為、娘を野犬から守ろうとした父親が死罪になるなど、酷い結果を招いた。今回の児童ポルノ法は、それに近い「におい」のする法律である。

少女が登場する二次元作品が作りにくい状態になるだろう。なぜなら、どのような表現がポルノに当たるか曖昧である為、その枠をある程度大きめに予想して作品を作る事になる。だから、表現の幅が今回の規制では極端に狭くなる。売った作品で読者を犯罪者にしてはいけないから、出版社も神経質になるだろう。そうなると、「これも駄目、あれも駄目」という事になる。過去の作品のあの表現も駄目、この表現も駄目という事になり、復刻版の映像作品の修正箇所が大幅に増えるのではないかと危惧している。

すると、何が起こるのか?
強権型の法律には矛盾が生じやすいのだが、権利が大きすぎて、悪人も普通の人もまとめて罰する強烈なパワーを持っているので、良い目的で作られた啓蒙的な作品も作れるかどうか分からなくなる。例えば、少女漫画でレイプによって傷ついた少女が出てきて、その少女がどれだけ傷ついたかという事を表現した作品があったとすると、それを表現したシーンで、それがいいのか悪いのかという問題になる。悪いとなったら少女漫画のあるコマは修正されて書き直されるとか、削除される様になるかもしれない。これは極端な例で、そんな事はないと思うが、この法律の解釈の曖昧さが結果として、そういった事が不可能とは言い切れない法律であるわけだ。

つまり、矛盾が生じやすい法律で、法律そのものの筋が悪いのだ。筋の悪い法律の結果は恐らく、逆の結果を招くだろう。出来の悪い法律は、児童を守るどころか傷つけると思う。前回の児童ポルノ法で取り締まった後、児童相手の性犯罪は逆に増えたのだという。そこで、今回のより強力な法律の策定になったのが事の顛末のようだ。

警察庁資料:被害件数
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen29/siryou2.pdf
児童ポルノ法 1999年11月に施行(平成11年11月)

この統計は児童ポルノ法の施行後(平成12年)から始まっているが、規制を開始した直後に出会い系サイトを経由する犯罪が飛躍的に増えている事が注目に値する。多分、規制前は写真など実物以外の対象に対して向けられていた性欲が実物に向かっている可能性を示唆する内容であると考えられる。つまり、法律によって逆に性犯罪は増えてしまっている。もし、仮想物にぶつけられていた性欲が今回の法律で実物に向かっていったら...と考えると、この法律を施行する事はかなりリスキーではないかと考えられる。この法律は児童を保護するよりも、危険にさらす可能性が高いと、この統計からは判断できる。

つまり、欲望自体が存在し、それを吸収してくれているダム的な役割をしているメディアを規制する事によって、ダムが決壊し、逆に新たな被害が生じる。ある種の必要悪で、それを規制する事は危険な行為だと言える。これは普通の社会に当てはめてみると分かる。例えば世の中のエロ本を全部わいせつだとして規制したら、欲望のはけ口を塞がれて、どこかに溢れるしかなくなる。溢れた欲望の先に犯罪が含まれてくる事は簡単に予想できる。そういう常識を適用すれば、この法律案は百害あって一利なしと分かるだろう。本当に子供を守りたいのならば、この法律案に賛成しないか無視する事が妥当であると考えるが、どうだろうか?

児童ポルノ
http://ja.wikipedia.org/wiki/児童ポルノ

あとがき
昔、掃除屋でアルバイトしている時に男子寮の取り壊しの為に掃除をするというのがあった。そこにあった、エロ本の山が強烈に印象に残っている。高さ1.5メートル横1メートル、奥行き1.5メートルくらいにうず高く積まれたエロ本の山で、「おお〜すげ〜」と思った。要するに欲望とはそういうものである。欲望の総量と規模を想定する事なく観念的にルールを設定する事は実物に対して非常に危険な行為だと思う。幻がエロいだけならば、何も問題はない。しかし、その幻が処理している欲望を、幻をなくす事で外に出してしまうのは、野犬を野に放す行為であり甚だ危険だと思う。