東京大学大学院 工学系研究科科学生命工学専攻の野崎京子教授と伊藤慎庫助教授、中野遼大学院生が、二酸化炭素とブタジエンを合成し、ボリラクトンという新しいプラスチックの合成に成功した。
CO2から新しいプラスチックを合成
http://news.mynavi.jp/news/2014/03/12/077/
特徴は従来のものに比べて、高温でも容易に変形せず、燃やしても有毒ガスも発生しないという。3月10日の英科学誌ネイチャーケミストリー・オンライン版で発表した。
【ポリラクトン】
合成
・ブタジエン+二酸化炭素(29%)=ポリラクトン
特徴
・高温でも容易に変形しない(耐熱温度:340度)
→溶かして整形できる。
・燃やしても有毒ガスは出ない
従来、二酸化炭素を原料としたプラスチックはあったが、燃焼すると発生する窒化酸化物、低い耐熱性、二酸化炭素利用率の低さなどの問題があった。今回のものは、それらの問題点の多くを解消している。
製造法
合成ゴムの原料であるブタジエンに二酸化炭素を加え、パラジウム触媒の活性をなくしてラクトンを重合させ、ポリマー樹脂を合成したという。何やら意味がわからないが、そうすると、ブタジエンと二酸化炭素が組み合わさってポリラクトンという質の高いプラスチックが作れるのだという。
用途は、箱やフィルムなどの幅広い利用を期待しているとのこと。
このプラスチックのいいところは、資源のない日本が削減が義務付けられている二酸化炭素を資源化出来る点にある。日本のプラスチックの消費量は、大体4400万トン(2009年)
プラスチックは石油どどれくらい消費している
http://www.pwmi.jp/plastics-recycle20091119/life/life3.html
ポリラクトンでプラスチックを生産するとなると、その29%の1276万トンの二酸化炭素をプラスチックとして再利用することが出来る計算になる。それに対し、日本の二酸化炭素の排出量は13億0800万トン(2011年)であり、大体、全体の1%程度の二酸化炭素を減らせる計算になる。しかし、将来的に再生可能性エネルギーやバイオマスなどを使うと、恐らく13億トンが1億トンくらいまで下げられると考えられる為、この1%は、将来的には13%程度にまで上がる事になるかもしれない。
広島大学の鉄並に強度を上げるポリマー加工法(高結晶化)により、電気自動車のボディや建築物などに応用し、鉄の代替素材として使っていけば、さらに需要が広がっていくだろう。最終的には鉄の需要は減り、こういうポリマー樹脂に取って代わられ、その原材料は二酸化炭素という世の中になる日も、そう遠いことではないのかもしれない。
ちなみに日本の最近の鉄の生産量は1億トン、その1/3が国内向け、2/3が輸出用である。これを強化ポリマーで代替するとなると、5000万トン程度になる。つまり、プラスチックと鉄と合計で9400万トンのポリマーが必要となり、その内の29%が二酸化炭素に出来ると計算すると、2726万トンの二酸化炭素が再資源化できるだろう。
最終的に鉄と石油の時代は終わり、ポリマーと電気が21世紀の主流の時代になると考えられる。そして、その原材料として二酸化炭素が活用されるようになっていく、そう言う未来を感じさせる発表であった。