半導体を作る時に発生する切粉産廃シリコンで作った負極でリチウムイオン電池の容量が3倍になるという。
リチウムイオン電池の大容量化に産業廃棄物を活用した新たな道筋
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1045611.html
半導体の製造過程で、製造されたシリコンのうち、半分が切粉廃棄シリコンとなり、全世界で9万トン生じるという。殆どが廃棄されるのだが、この産廃シリコンをリチウムイオン電池の負極に用いると、リチウムイオン電池の容量が3倍になるとの事。具体的には以下のようになる。
リチウムイオン電池の容量(従来比:3.23倍)
正極:リチウム遷移金属酸化物
負極:黒煙(最大:372mAh/g)→シリコン(1200mAh/g)
シリコンは、黒煙に比べてリチウムを数倍以上溜め込む事が出来るとされていたが、充電時に体積が4倍にもなってしまう為、充放電を繰り返すと急速に電池内部の構造を破壊してしまい、劣化が激しく実用にならなかった。今回の研究成果は、劣化しがたいシワ状構造を用いる事によって、体積が増えても構造耐性が高いものが出来たという。
1.シリコン負極のシワ状構造
具体的には800回の充放電を繰り返しても1,200mAh/gを維持する事に成功したとの事。(黒煙のものは大体500回で372mAh/g)
2.シリコン負極のリチウムイオン電池の充放電耐性
全世界のリチウムイオン電池の負極材料の消費量は、2013年のCMCリサーチの資料によると、2011年は4万トン、2015年には9~10万トンに達するという内容なので、恐らく現在は9~10万トン
CMCリサーチ:LiB構成材料(正・負極材)の市場動向 2013.4
http://cmcre.com/archives/2704/
2011年の負極材の構成比(4万トン)
全世界の切粉シリコンの廃棄量は9万トンと、現在の需要の殆どを置き換える事が出来る量といえる。電気自動車の普及などが進めば、2020年には、もっと需要が増える事だろう。そういう意味では、将来的に全負極材料を廃棄切粉シリコンに置き換える事は出来ないだろうが、容量が3.2倍になる事から主要な負極材として有望な事は、明らかだ。