大気下の室温で印刷によって有機薄膜トランジスタを作成する技術を物質・材料研究機構の三成剛生(みなり たけお)研究員、岡山大学の金原正幸(かねはら まさゆき)助教らが世界で初めて確立した。
マイナビ:室温印刷で有機薄膜トランジスタを作製
http://news.mynavi.jp/news/2014/05/12/318/
EE Times:室温印刷プロセスで有機TFTを実現、紙や皮膚にも形成が可能に
http://eetimes.jp/ee/articles/1405/12/news118.html
既存の無機薄膜トランジスタとの製法との違い
1.温度:100度以上→室温
→熱に弱いプラスチックや紙、生体材料にトランジスタを作成できる
2.大規模で高価な製造設備→低コストなプリント技術で作製
→有機薄膜トランジスタは一般的には製造コスト1/10と言われている。
3.真空プロセスがいらない
1.室温導電性金属ナノインク(岡山大の金原正幸氏が開発)
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- 図1. 室温導電性金属ナノ粒子と室温印刷で作製した有機トランジスタ
- 室温で塗布して乾燥するだけでよい金属ナノインクを開発
- 金属ナノインク
- ナノスケールの金に芳香族化合物の分子を配位したナノ粒子
- (高価な金ではなく銀を使う方法を試みているという)
2.精密な電極形成を可能にするプロセス(物質・材料研究機構の三成剛生氏が開発)
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- 図2. フレキシブルなプラスチックフィルムに印刷した有機トランジスタ
基板の表面に光照射によって親水・撥水性の領域を形成することで、この金属ナノインクを塗布して、精密な電極を形成する新しい方法を考案した。このプロセスは1℃の昇温や真空にする必要もない。この方法で作った有機薄膜トランジスタは、性能面においても、高温プロセスで作った従来品をしのいでいる。
同研究では線幅が約10μmの配線を形成することが可能であることを確認している。
真空プロセスがいらない、高温プロセスもいらない、プリント技術で非常に低コストにトランジスタが作れるという話だ。これを使えば、薄いディスプレイなど、従来にはないポリマーや紙に電子回路を形成できる技術のようだ。
これによってウェアラブル技術の進歩が加速するだろう。低コストなので色々なもの(衣類や装飾品)に電子回路が組み込まれ、生体センサーやインターフェースとなって、人々の生活をサポートするようになるだろう。タブレットもプラスチック基板で薄く軽くなるだろう。そうなると、ウェアラブルデバイスと携帯、タブレットが無線で接続され、健康管理やナビゲート情報など、情報を着る時代になる。そして、その情報を活用した色々なサービスが生まれるだろう。メガネのようなもので情報を手に入れる場合、音声入力で近くのサービス情報を検索したり、心拍数などを計測して、疲れていると判断したら、休む時間や必要な食事などを提案したり、色々とユーザーに世話を焼いてくれるお母さんのようなコンピューター端末が出来るのかもしれない。それは煩いのかもしれないが...
薬を飲む時間、食事の時間、スケジュールの報告などをメガネの中にいる秘書が、あれこれと世話を焼くような時代になるのではないかと思う。欲しくない!という人も出てきそうだが、便利だ!という人も出てくると思う。ソフト次第なんだがね。自分的には、お母さん型よりもバトラー型が欲しい。
薄くて軽くて安いタブレット(太陽電池駆動)を気球を使った低価格の無線通信ネットワークでつないで、発展途上国の人々に教育を普及させるとか、そういう事ができる。日本も、コンピューターを使わない人でも、安い端末があれば、ちょっと買ってみようかなってことになって、その情報を元に世の中がより民主的になるかもしれない。そういう意味で、この有機薄膜トランジスタの製造技術は未来の新しい可能性を開くものとして期待している。
トランジスタとはどんな部品?
http://www.maroon.dti.ne.jp/koten-kairo/works/transistor/Section1/intro1.html
トランジスタの語源:trans(運ぶ)resistor(抵抗)