京大ととシャープが、充放電サイクル25000回という驚異的なリチウム電池を開発した。
京大とシャープ、バッテリの寿命を70年に引き延ばす材料を開発
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20140804_660790.html
革新的材料設計手法により超長寿命 2 次電池開発に成功
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2014/documents/140730_1/01.pdf
25000サイクルというのは、充電容量が70%になるまでの値
グラフを見ると、10000サイクルで80%位であることがわかる。90%で1800サイクルくらい
この電池の開発の特筆すべきところは、コンピューターによる材料シミュレーションによって、開発されたことだ。
<引用>
- 量子力学の原理のみに基づいて原子構造や特性を予測できる「第一原理計算」を数千種類に渡り高精度に実行し、そのデータをハイスループットスクリーニングすることで、最適な化学組成を効率的に見つけ出す手法を開発した。
<引用2 京大のプレスリリースから>
- リチウムイオン電池の正極材料のような無機物質では、原料粉末を混合して合成する固相法が主流ですが、汎用性の観点からは、気相法や液相法を利用することが有効です。本研究で用いた方法は、環状エーテルを使ったゾル-ゲル法であり、金属塩化物のようなありふれた塩を溶解した水溶液に環状エーテルを添加することにより、溶液のpHをゆっくりと上昇させて、金属塩の反応を制御することが可能となります。溶液のpHが増加すると多くの金属塩は水酸化物を形成しますが、反応速度は金属塩の種類に応じて大きく異なります。本手法はpHを徐々に上昇させることにより多種類の金属塩の反応速度を制御して、原子レベルで元素を均一に混合できるという特長があります。今後、様々な系での物質設計結果の実証に応用できると期待されます。
従来は計算コストが高すぎて、出来なかったことが、昨今のコンピューターの性能向上によって出来るようになったとのこと、しかも、コンピューターの計算通りに実際の材料の特性が現れたというから凄い。
自分は、自然エネルギーのムラを吸収するためには、リチウム電池の充電サイクルが足りないと思っていた。それは計算してみれば分かる。
集光型太陽電池(4円/kWh)の電気は非常に安いのだが、昼間しか発電しない上に大規模化すると、電気が余る事が問題だと思っていた。年間発電量2000億kWh程度にまで上げると、ピーク出力2億kW(年間日照時間1000時間とする)となる。この規模は、最近の日本の電力ピーク需要1億5700万kWよりも多く、日本全国が晴天だと電気が余る。
そこで集光型太陽電池の電力全てを電気自動車のバッテリーで充電すると、何サイクル必要か計算してみた。乗用車の買い替え周期は、最近は13年であるので、この数値を元に計算してみる。
電気自動車 使用年数13年
年間走行距離 平均10000km
稼働率 2.8%(平均時速40km/年間250時間稼働)
車体重量 600kg(軽量素材で現在の車の半分の重量)
バッテリー容量 32kWh
日本の乗用車数 約6000万台
乗用車全てのバッテリー容量 19億2000万kWh
年間充電量 2000億kWh
年間必要サイクル数 104回
13年使用における総サイクル数104回×13年=1354回
大体、1400サイクルあれば、車の使用年数分、電池としても使えるという事になる。京大とシャープの開発した電池は、このサイクル数だと92%程度の容量を保っている。これによって、自然エネルギーのムラは、電気自動車のバッテリーで吸収できる性能(耐久性)を持ったになる。
つまり、自然エネルギーの弱点を克服できるという材料が出来たことを意味する。これの意味することは、原発はいらないとハッキリいえる事だ。日本は電気自動車と集光型太陽電池をスマートグリッドで繋ぐことで、クリーンで安くて安全な国産電力(再エネ)を安定的に調達できるという性能が、このサイクル数の意味するところだ。原発にはもはや完全に存在意義はなくなったと言える。
当面は、高効率なコンバインドサイクルによって燃料費を3割程度削減し、中長期的には、電気自動車の普及、集光型太陽電池、スマートグリッドの建設によって、自然エネルギーで、電気を調達できる国になっているでしょう。恐らく、最終的には化石エネルギーを電気のために輸入する必要はなくなっているでしょう。