SKY NOTE

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東工大、4μmの超薄型DRAMウェハを開発(積層DRAM用)

東工大が300mmウェハの厚さを4μm(μm:1/1000ミリ)まで薄型化する技術を開発した。従来の2Gbit、300mmのDRAMウェハの厚みは775μmとのことなので、実に1/193.75と、ほぼ1/200程度に薄くなっている。

 東工大、向こうが透けて見える厚さ4μmのDRAMウェハ
 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20140611_652818.html

この技術をTSV配線(チップの積層配線)に使うと、TSVの長さを10μm以下まで短縮できる。(従来は100μm)これによって配線抵抗が1/10になり、配線性能の指標となる。その積は1/100に抑えられ、16層積層しても、電気的な課題が解消できるという。(つまり、多層積層しやすい)

このDRAMダイを16層積層しても、全体の暑さは200μm以下となり、16Gbitメモリを16枚積層すれば、1チップで32GBになる。これを従来の手法で実現するには、10nmや7nm級のプロセスが必要となる。

この技術が何がすごいのか、それは、現在DRAMの大容量化が微細化技術では、なかなか進まなくなっている中で積層技術(TSV:貫通電極)によって大容量化するという流れがある。サムスン電子が今年中にTSVを使ったDRAMを出荷すると発表しているので、本格的にDRAMのTSV技術の採用が進む中、積層する量が既存のプロセス技術で増やせるこの技術は、非常に有望なのである。

もっと言うと、積層することで大容量化とともに高速化が図れるので、重要なのだ。

 テラバイト帯域の次世代メモリHBMが2015年に登場 2014.4.12
 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/20130412_595546.html

積層技術を前提としたHBM(High Bandwidth Memory)というメモリ規格が来年にも立ち上がろうとしている。既に規格のスペック策定作業は終わっており、製造体制が揃うのを待つのみという段階で、この技術によってDRAMの大容量化、高速化が一気に進むことになる。積層すればするほど、低消費電力、大容量、高速化、低コスト化(容量辺り)が図りやすくなると言われるので、いかに、この技術が重要なのが分かるだろう。

特にスマートフォンタブレットなど実装面積があまり確保できない機器にとっては、それを小さく抑えられる積層DRAM技術は重要で、性能アップと低コスト化を両立する。しかし、初期の積層DRAMは高コストという話なので、そのメリットが出てくるのは、各社が本格的に量産する2015年以降となる。

さらにもっと言うと、MRAMやNRAMなどの高速で書き換え回数がDRAM並みの不揮発メモリと組み合わさると、PCのアーキテクチャそのものの変革となる可能性まで出てくる。既にHPが、この点について新しいアーキテクチャの開発を始めている。

 カーボンナノチューブを使った「NRAM」の基本動作を実証
 http://eetimes.jp/ee/articles/1406/12/news067.html

 HP、情報爆発時代の新コンピュータ設計「The Machine」を発表
 http://japan.zdnet.com/datacenter/analysis/35049357/

この中でHPは、OSやプロセッサがしていることの90%は、「異なるストレージ層の間で単にデータをやり取りすることだけだ」と断じ、それを解消するのが「The Machine」だと主張している。これは、従来のPCがデータ転送に、90%の労力を割いているのに対し、そういうボトルネックが解消される技術(高速不揮発メモリ、チップ積層技術)ができ始めているため、それに合わせたOS(Linuxベース:Androidバージョンも計画されているという)、ハードウェアを再設計することで、従来よりもはるかに高速で低消費電力なPCを作るという考え方である。

つまり、チップを積層する技術が高速不揮発メモリと組み合わさると、大容量、不揮発(書き換え回数DRAM並)、高速、低消費電力という条件が揃い、従来のPCのアーキテクチャを変えるほどのインパクトが生じるため、非常に重要なのだ。それが目前に迫っているため注目されているのだ。

では、こういう技術がどのように使われるのか、考えてみると、まず、タブレットに採用される。第一段階ではNVIDIAから、積層DRAMを採用して高速化されたスマートフォンタブレットが出てくる。広い帯域幅と低消費電力を強みに、グラフィック性能の優れたものが出てくる。

第二段階は3〜5年後、不揮発メモリと積層メモリの融合によるOSとハードを合わせたアーキテクチャの本格的な変革が生じる。これは、恐らく2020年代の話となる。この時の性能アップは、非常に大きい。現在、OSをフラッシュメモリ(SSD)に格納しただけでも高速になっているが、これに拍車がかかる。それは、スーパーコンピューターを1チップに収めたようなものになる。具体的には多数のプロセッサコア一つ一つに直接積層接続されたメモリ、それらが光インターコネクトで接続されたものである。これにより次元の違う速度が生まれる。CGが立体ディスプレイで、リアルな存在と見分けられない品質で表示され、それが、AIによって動いているので、まるで、そこに実在の人物がいるかのような錯覚に陥るだろう。まぁ初期の段階ではハードやOSが出来てもソフトが追いつかないだろうが...しかし、それだけの性能が生まれるということである。人間の仕事が無くなる恐れも出てくるほど進歩する。それが4〜5年後に、そういう可能性が生じる。その基幹技術がチップ積層技術なのだ。今回の東工大の薄いダイによって、大幅に積層チップ間のデータ転送にかかる電力が抑えられ、発熱が抑えられる事は、将来的にプロセッサとメモリの融合がしやすくなるという点で重要だと思う。そして、それが、恐らくPCそのものを変え世界を変えてしまうほどのインパクトになるだろう。