環境に適応したものが生き残るという適者生存の理屈を国に当てはめてみたらどうなる考えてみた。
- 地震が頻発する国には、原発は置くべきではないというのは福島第一原発の事故から見て明らかであり、一度メルトダウンすると周辺を放射能汚染して食料の生産が出来なくなる事態を考えれば、地震という環境要件を考慮すると原発以外のエネルギー源を獲得するのが適者生存として、適切であると言える。
- 福島第一原発3号機の爆発 2011.3.14 11:01(限定的な核爆発とみられる)
- LEDによる省エネ 922億kWh
- ちなみに2010年の日本の原発発電量は、3004億kWh、要は、これに匹敵する省エネ技術なり、発電エネルギーを獲得すればよいのである。現行技術で安定的に獲得可能なものとして、LEDが挙げられる。IEEJの試算では節電規模は922億kWhという。
- IEEJ:LED照明による省電力ポテンシャルと費用対効果の試算
- http://eneken.ieej.or.jp/data/3891.pdf
- LED照明の普及を後押しするため、エコポイントを復活させたり、企業には低利の融資などをしても良さそうですね。
- モーターのインバーター化 505億kWh
- 次にモーターのインバータ化です。産業用モーターの消費電力は3600億kWhこの内、インバーターの使用による効率改善により505億kWhが削減できる見通しであることをNEDOの資料にある。
- 汎用誘導機に置き換え可能なインバータ内蔵高性能SRモータの研究開発
- http://www.nedo.go.jp/content/100580951.pdf
- これが普及していないのは初期コストが高額との事なので、低コストなモーターやインバーターの開発が急務ですが、それと並行して国は補助金や税優遇、低利の融資などをするべきではないでしょうか?ちなみに置き換えコストは1兆円を見積もっているとのこと、具体的には、インバーターと永久磁石を使ったSRモーターを2015年からはじめ、2020年には量産体制にはいり、2030年に置き換え率70%目指すとの事。
- 人口減少(9%:632億kWh)
- 総務省の試算によれば2030年の日本の人口は1億1662万人とのこと、2010年の人口が1億2805万人なので、そこからすると、2030年には、人口が9%減少することが想定されています。つまり、これに合わせてエネルギーの消費量も9%減ると想定すると、2030年の電力消費が省エネが進んだとして現在よりも25%少ないものとして、その9%程度が自然減となると試算すると、2013年の電力消費は9360億kWh→2030年想定:7020億kWh×9%(人口減少分)=632億kWh自然減となります。
- 日本の人口推移(総務省)
- http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/html/nc112120.html
- 以上でほぼ確実に削減できるであろう項目の削減規模を合わせると、合計で2059億kWhとなります。今度は、国内のエネルギー資源を見てみましょう。
- 地熱発電 560億kWh
- 現在、日本の地熱発電の規模は、出力50万kW、年間発電量27億kWhであるが、これは潜在的な資源量からすると著しく低い数値である。日本の地熱資源埋蔵量は2347万kWであり、年間2056億kWh発電できる余地がある。
- 日本の地熱発電の出力推移(1996年に50万kWに達してから頭打ち)
- 認可出力と発電電力量
- http://geothermal.jogmec.go.jp/history/history.html
- 資源エネルギー庁の資料によれば、地熱資源の2347万kWの内1922万kW(81.9%)は、国立公園内にあり、要するに国の保護方針を変更すれば、既存の温泉などとは関係なく、この部分は開発できる余地がある。
- 地熱発電の開発可能性 (独)産業技術総合研究所
- http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g81201a05j.pdf
- その国立公園の1/3程度を活用するとして計算すると、640万kWの発電出力が得られ、年間560億kWh発電できる計算になる。
- バイオコークス 395億kWh
- バイオコークスは、有機ゴミに圧力をかけて固めると石炭と同質の燃料になるという現象を利用したバイオ燃料です。製造効率は乾燥バイオマス100に対し85〜97%の割合で生産できるとの事。
- バイオコークス(有機物を圧縮して固めたバイオ石炭)
- 近畿大学:バイオコークス
- http://www.kindai.ac.jp/bio-coke/
- バイオコークスの原理
- http://www.dowa-ecoj.jp/sonomichi/biocoke/02.html
- バイオコークスにするのに有望な有機ゴミは、稲わらです。発生量は米の1.1倍程度です。現在日本は米を83億kg生産しています。これの1.1倍程度の稲わらが発生するとしますと稲わらは、91億kgとなります。また、日本には使われていない田んぼは100万haあります。これを活用して、飼料米の生産をすると、多収穫米で100億kgの飼料米が生産でき、同時に稲わらも110億kg発生します。主食の米と飼料米を合わせれば、201億kgの稲わらが生じます。これをバイオコークスにすると、その96%の193億kgになり、IGCC石炭火力発電(発電効率50%)ならば395億kWh発電できると考えられます。
- 稲わら由来のバイオコークスの熱量:4096kcal/kg(石炭比59%)
- http://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/shoko/chiikisangyo/files/h22_bic_houkokusho_2.pdf
- 稲わら由来のバイオコークス総重量:193億kg
- IGCC石炭火力発電:発電効率:50%
- 発電量:4.1kWh×50%×193億kg=395億kWh
まとめ
- 以上の内容は、現行技術において、比較的実現可能性があり、安定した電源確保が可能な点に留意して調べた結果である。
- 省エネ
- LED :-922億kWh
- モーターのインバーター化:-505億kWh
- 人口減少 :-632億kWh
- 省エネ合計 :-2059億kWh
- 発電
- 地熱 :560億kWh
- バイオコークス :395億kWh
- 発電合計 :955億kWh
- 2010年原発の発電規模:3004億kWh
- 2030年省エネ+発電 :3014億kWh相当
省エネと発電を合わせて、3014億kWhに相当する電力の確保が可能と分かる。異常気象、資源争奪戦など国際環境が変化する中で日本が生き残るためには、食料やエネルギーの外部への依存度を減らすことが急務と考え、それを確実にこなせるだけの保守的なプランで考えたとしても、十分に原発は要らないことが分かる。しかし、なぜ、経済産業省は、原発が2030年の時点で20%も必要なのかよくわからない。原発分は、省エネと再生可能エネルギーで賄えることが政府の資料で分かっているのに、どうして、国民の生存環境を脅かす危険な原発が必要なのか?実におかしなことである。