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2012年度の日本の発電量9236.1億kWhから見る原発の必要性

電事連の資料を見ると、日本の電力の発電量は、2012年度(2012.4〜2013.4)は、9236.1億kWhだった。

 電事連:2012年度 の発受電速報 (2013.4.12)
 https://www.fepc.or.jp/library/data/hatsujuden/__icsFiles/afieldfile/2013/04/12/hatsuju_fy2012_0412.pdf

内訳を見ると
・火力  :6668億kWh
・他社受電:1899億kWh(電源開発の発電量:東北電力並の発電設備を持つ)
・水力  : 570億kWh(実際は850億kWhくらい、他社受電の中にある)
原子力 : 159億kWh(大飯原発3号機、4号機の発電量)
・新エネ :  26億kWh(家庭で自分で使っている分は含まれない)
・合計  :9236億kWh

この中の他社受電というのは、主に電源開発(J-Power社)という電力卸売会社の発電量であり、日本の電力会社は正確には巷で言われている10社ではなく、実は11社ある。この会社は全国に発電所を持ち、その規模は東北電力並である。この会社の主な使命は、原発が停止した時のバックアップ電源として事実上、用意された会社、だから、電源開発は、全国の電力をバックアップするための国策企業である。この会社は、全国に発電所だけでなく、機関送電網も持っており、日本の電力を支える企業、事実上の電力業界の影のドンのような会社。原発が停止しても、電力は足りるというのは、この会社の発電所(火力と水力)と送電網があるため。テレビには、この会社は出てこない。もっぱら、この会社を外した10社合計の統計を用いて、電力が足りない、足りないと詐欺的報道をしていた。でも、今年の夏もぜんぜん大丈夫だったのは、この会社の全国に散らばるバックアップの発電設備と送電網があったから。

 Wikipedia電源開発(J-Power社:国策企業)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%BA%90%E9%96%8B%E7%99%BA

この会社の発電設備は、火力と水力で成り立っている。原発は、青森の大間原子力発電所が現在、建設中であるが、福島第1原発事故以降、その稼働は不透明だ。2011年の統計から見て、大まかなエネルギー別発電量が算出できる。まず、火力の規模は例年、水力が850億kWhなので、他社受電の水力の発電量は280億kWhとなる。つまり、他社受電1899億kWh−280億kWh(水力)=1619億kWh(他社受電の中の火力)となる。6668億kWh+1619億kWhが日本の火力発電の規模である。2011年、石炭は2400億kWh、石油は1370億だったので、そこから天然ガスを規模を算出すると

 2011年の発電量 エネルギー白書2013 P.138
 http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2013/2-1.pdf

2012年度、想定発電量(合計は確定値:9236億kWh)
 火力 :8287億kWh(推計値)
  ガス:4332億kWh(推計値)
  石炭:2400億kWh(推計値:2011年と同じとして算出)
  石油:1370億kWh(推計値:2011年と同じとして算出)
 水力 :850億kWh(推計値:例年と同じ850億kWh)
 原子力:159億kWh(2012年)
 新エネ: 26億kWh(2012年)

石炭や石油は、稼働率が比較的、高いので、それ以上の運転をしてないと仮定すれば、石油と石炭は、2011年のレベルと大して変わらないと考えられる。稼働率が50%台だった天然ガスが、恐らく70%台にまで稼働率を上げることで、電気を賄っていると仮定すると、以上のような推計値となる。70%台というのは、ドイツなどでもやっているレベルであり、正常に稼働できる水準なので、無理をしているということではない。代替、このくらいの数値が、妥当だと思う。

さて、これで生じる燃料コストが3.11以前とどう変わったか検証してみよう。比較対象として2010年の燃料コスト、火力発電を中心に、どの程度、燃料コストが上がったのか試算してみる。

 世界の天然ガス価格の推移(月次)
 http://ecodb.net/pcp/imf_group_ngas.html

 石炭価格の推移
 http://ecodb.net/pcp/imf_usd_pcoalau.html

 原油価格(平均)の推移(年次)
 http://ecodb.net/pcp/imf_usd_poilapsp.html

 USドル/円の為替レートの推移(年次)
 http://ecodb.net/exchange/usd_jpy.html

燃料価格(年間平均:当年4月〜翌年3月まで)
        2010年   2012年
天然ガス   9.99ドル  18.25ドル(100万BTUあたり)
・石炭   106.40ドル 103.25ドル(1トンあたり)
・石油    79.03ドル 105.01ドル(1バレルあたり)

 為替    87.78円   79.79円 (1ドルあたり)

BTU、トン、バレル、ドルなど、単位がバラバラなので、これを1kWあたりのコストとして、試算してみる。各火力発電効率は概ね40%として算出するものとする。

 石油連盟:換算係数一覧
 http://www.paj.gr.jp/statis/kansan/

 各単位の換算式
  天然ガス:3.4BTU=1W ✕ 100万BTU ✕ 発電効率40%
  石炭  :7700Kcal/Kg✕1.163(W)✕ 発電効率40%
  石油  :1バレル ÷ 159リットル ✕ C重油:9962Kcal/L ✕ 1.163(W)
       ✕ 発電効率40%

 各燃料単位毎の発電量
  天然ガス: 118kWh(100万BTU)
  石炭  :3582kWh(トン)
  石油  : 737kWh(バレル)

 1kWhあたりの燃料コスト
        2010年    2012年
  天然ガス   6.69円    12.34円
  石炭     2.61円     2.30円
  石油     9.41円    11.37円

 燃料コスト
        2010年        2012年(消費電力は推計)
  天然ガス   6.69円(2657億kWh) 12.34円(4332億kWh)
  石炭     2.61円(2323億kWh)  2.30円(2400億kWh)
  石油     9.41円( 811億kWh)  11.37円(1370億kWh)

        2010年        2012年(消費電力は推計)
  天然ガス   1兆7775億円    5兆3457億円
  石炭       6063億円      5520億円
  石油       7632億円    1兆5577億円
  合計     3兆1470億円    7兆4554億円
  
  燃料コスト増加:4兆3084億円(2012年度:2010年比)
  日本の貿易赤字:6兆9273億円(2012年度)
  差額     :2兆6189億円

日本の貿易赤字の大半を電力の燃料コストの増大が占めている事がわかるが、それが解消されたとしても、貿易収支が2兆6189億円、赤字であることが分かる。また、この燃料コストは、天然ガスを諸外国に比べて高額で購入している点が問題であり、その点を考慮して、現在2013年の為替水準(1ドル100円)も想定し、試算してみる。尚、発電量は2012年と同じとして計算し、最新の燃料価格を反映して試算してみる。

 諸外国の最新の天然ガス価格(100万BTUあたり)
 http://ecodb.net/pcp/imf_group_ngas.html

      2013年8月
 日本   :17.25ドル(1725円:14.62円/kWh)
 アメリカ : 3.43ドル( 343円: 2.91円/kWh)
 ヨーロッパ:10.97ドル(1097円: 9.30円/kWh)
 

日本が突出して高い価格で天然ガスを購入していることが分かる。そこで、諸外国の天然ガス価格に基づけば、どのように発電コストが変わるか試算してみる。為替は1ドル100円として試算し、発電量は2012年度と同じ4332億kWhとして試算する。

 日本のガス火力の発電量4332億kWhを各国の天然ガス買い付け価格から計算
  日本   :6兆3334億円(2012年度 推計5兆3457億円)
  ヨーロッパ:4兆0288億円(日本との差額:2兆3246億円)
  アメリカ :1兆2606億円(日本との差額:5兆0728億円)

アメリカ並みに安ければ5.0兆円、ヨーロッパの水準であれば、2.3兆円安く買える事になる。問題なのは、諸外国に比べて高額な買い付け価格で天然ガスを購入していることが日本の貿易赤字を増大させていること。このような高額な買い付け価格の原因は、コストを高くすればするほど、原価に対して3%上乗せできる料金制度にある。よって、この総括原価方式を是正し、同時に日本は、少なくともヨーロッパ並みに天然ガスの買い付け価格を設定するべきである。

また、より高効率のコンバインド発電設備の導入による電力あたりの燃料消費量の削減や、電力消費自体を抑制する事も同時に行わなければならないと考えられる。そこで2010年の電力消費量とコストと2012年の電力消費量とコストを見ながら、どの程度、を行うべきか試算してみる。(この試算は、日本の天然ガスの異常に高額な買い付け価格をEU並:10.97ドルに是正することを前提とする)

まず、削減目標額を試算してみる。震災前の2010年度並みの火力発電の総燃料コスト3兆1470億円を目標として試算する。発電量は2012年を基準に、燃料価格は2013年8月の最新のものをベースに試算。

 最新の燃料価格(2013/8)
  天然ガス:17.25ドル(100万BTU:1725円 14.62円/kWh✕4332億kWh)
  石炭  :82.46ドル(トン:8246円 2.3円/kwh✕2400億kWh)
  石油  :108.06ドル(バレル:10806円 14.66円/kwh✕1370億kWh)

         2010年        2013年(消費電力は推計)
  天然ガス   1兆7775億円    6兆3334億円
  石炭       6063億円      5520億円
  石油       7632億円    2兆0084億円
  合計     3兆1470億円    8兆8938億円

5兆7468億円分、削減すれば良い。その規模は、石油と天然ガスを合わせた消費電力で3936億kWh分であるが、そんなものは不可能なので、今後10年の節電規模は1200億kWhとし、目標発電量を現在の9236億kWhから、2023年までに8000億kWhとする。これは、主に1500億kWh消費している照明をLED化することで、その大半の1000億kWhが削減できる。LEDと蛍光灯は現在、100lm/wと発光効率が同じなのだが、蛍光灯が360度照らしてしまうのに対し、大抵の照明は直下180度を照らせばいいので、半分の光を無駄に照らしている。LEDは必要な方向にのみ光を当てられるので、発光効率が同じでも大抵の照明需要では、その消費電力は半減する。また、電源変換部品も最新のものに置き換えると、さらに8%程度少なくなる。そして、今後LEDが発光効率が上がっていき、5年以内に倍の200lm/Wになることを見積もると、電力消費は現行の蛍光灯の1/4位下になる。つまり、10年以内にすべての照明をLED化すれば、1500億kWhが500億kWh程度になると考えられるのだ。また、古いモーターを使用した製品を最新のインバーターモーターにする事で電力消費が抑え込めるので、そういった機器の普及を図るなどして、1200億kWhの削減は十分可能である。(冷蔵庫、エアコン、断熱ガラス、工業用モーター)

そのように電力需要を削減した発電構成は以下のものとなる。再生可能エネルギー内需産業であるため、外国に燃料費として払うくらいならば、再生可能エネルギーに投資した方が貿易赤字を減らす事になる。

2023年(10年後)
 火力 :6000億kWh(2012年推計:8287億kWh)
  ガス   :3600億kWh
  石炭   :2400億kWh
  石油   :   0億kWh
 再生可能エネルギー:2000億kWh
  水力   :850億kWh(推計値:例年と同じ850億kWh)
  集光型太陽:350億kWh(7~10円/kWh)
  地熱発電 :250億kWh(12円/kWh)
  風力   :200億kWh(12円/kWh)
  太陽光  :200億kWh(23円/kWh)
  バイオマス:150億kWh

さらに天然ガス火力については、2020年までに30基程度(1基1000億円:100万kW✕30基=3兆円)が発電効率が1.3〜1.5倍のガスコンバインド発電設備(52%〜60%)に置き換わる。そこから考えると日本の天然ガス火力の平均発電効率は45%程度になると考えられる。これは、11%の燃料の削減につながる。

 
天然ガス買い付け価格(ヨーロッパ並に燃料コストを下げる)
 日本   :17.25ドル(1725円:14.62円/kWh)
 → アメリカ : 3.43ドル( 343円: 2.91円/kWh)
 → ヨーロッパ:10.97ドル(1097円: 9.30円/kWh)

 その上でコンバインドサイクル発電設備に移行し、平均発電効率を45%へ
 ヨーロッパ並みの燃料コスト:9.3円
 →その上でコンバインドサイクル:8.41円
 →発電量3600億kWh✕8.41円=3兆0276億円

         2010年    2013年    2023年
  天然ガス   1兆7775億円 6兆3334億円 3兆0276億円
  石炭       6063億円   5520億円   5520億円
  石油       7632億円 2兆0084億円      0億円
  合計     3兆1470億円 8兆8938億円 3兆5796億円

大体、10年後に震災前と同じくらいのコストになる。外国に燃料価格として5兆円も余分に払うよりも、その額を再生可能エネルギーと省エネに投資すれば、原発がなくても、電気は大丈夫である。つまり、原発は必要ないのである。

日本がするべきなのは、原発数基の電力を必要とすると言われているリニアモーターカーではなくLEDやインバーターモーターのような省エネ設備の普及と、コンバインドサイクル発電などの高効率の発電設備の増設、太陽、風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーの普及である。そうすることで、核汚染の危険のない安全な電力と、国内エネルギーの開発による内需拡大、それによる貿易収支の改善など、核リスクのない、安定した経済が両立可能なのである。日本の技術と投資がオールスターで取り組めば、不可能ではない。