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東芝とSK Hynix、4Gbit STT-MRAMをIEDMで発表

東芝とSK Hynixが12月7日、4GbitのSTT-MRAMを試作としたとIEDM(半導体バイスやプロセス技術に関する国際会議)で発表した。出来れば、2~3年以内に実用化したいとの事。つまり、2020年ごろには、不揮発のメインメモリを備えたPCが出てくる可能性があるという事だ。残念ながら、詳細を記した記事はNEONLINEにあったのだが、有料記事になってしまって見れない。というわけで、海外の中国語のサイトを紹介する。中国語がわからなくても数字を見れば、大体の詳細がわかる。

 

 SK海力士与东芝发布4Gbit STT-MRAM

 http://laoyaoba.com/ss6/html/91/n-622891.html

 

試作されたSTT-MRAMの仕様

・90nmプロセス

・メモリセル面積:従来のMRAM:50F2 → 新型MRAM:9F2DRAM:8F2)

・電圧:1.1〜1.7V

・アクセスタイム:30ns

・ダイサイズ:1cm角

 

メモリセル面積を見れば分かる通り、DRAMにほぼ匹敵するサイズにまで微細化できており、STT-MRAMが大容量化が出来る事を証明したものとなっている。従来、MRAMは、記録する時の強い磁気が必要で、その際に消費する電力が大きく、微細化(大容量化)できないと言われていた。それを従来の電流ではなく電圧で磁気記録するスピン注入トルクメモリ(STT-MRAM:Spin Transfer Torque Random Access Memory)にすることで低消費電力化し、大容量なメモリが可能になるとされて、幾久しく、実際の試作品が出てくるのに時間がかかっていた。

 

 スピン注入メモリ - Wikipedia

 

この度、東芝とSK-Hynixが開発したMRAMは、それを見事実証したものであり、理屈通りにモノが登場したという点でIEDMでも立ち見が出たほどの注目ぶりだったとの事。記事の中では出来れば2~3年後には実用化したいとの事だったが、恐らく3~4年はかかると見て、2020年に頃に登場するのではないかと思う。

 

1.プロセッサの低消費電力化

そこで、メインメモリが不揮発になれば、どうなるのかという話に移りたい。まず、プロセッサが完全に停止できる。ノーマリーオフという動作が可能になる。プロセッサは稼働中であっても、非常に短い時間の間、休んでいる事が多い。それはメモリがプロセッサよりも遥かに遅いせいなのだが、従来は通電してないと記録が保持できないメモリに合わせて通電したままとなっていた。しかし、これが電力カットしても記録が保持され問題ないとなると、プロセッサを止める事で、大幅な低消費電力化が可能となるのである。これは、家庭で使われているルータの低消費電力化に大きく貢献するだろう。実際東芝がMRAMを用いたARMプロセッサによるノーマリーオフプロセッサを試作している。

 

 STT-MRAMを用いた電力性能世界最高のキャッシュメモリを開発

 https://www.toshiba.co.jp/rdc/detail/1602_02.htm

f:id:skymouse:20161212153342j:plain

それによると、アクセスタイム3.3nsの高速MRAMを使って、100ns(1000万分の1秒単位)で高速電力遮断・復帰が可能な回路を開発し、消費電力を1/10に出来たという。今回は開発された30nsのMRAMとは、速度が違うが、要するにメモリが電力カットして動かせるという事は、それと連動するプロセッサの電力もカットできるので、IoT、ウエアラブル、サーバ、PCなど、様々なデバイスのプロセッサの大幅な省エネ化を可能とする。

 

自分としては、光ルータの消費電力を下げて欲しい。また、PCのスリープ時の消費電力も大幅に下げられるだろう。注目しているのは、このメモリがGPUに使われる事だ。というのは、GPUはメインメモリよりも必要メモリ容量が少なく、フルパワーで動いている事はあまりないのでMRAM向きだ。このメモリがGPUのメモリになれば、大幅な低消費電力化が可能になる。またモバイル機器の長時間動作、停電した時も、データが吹っ飛ぶ事はなくなり、家電製品のように瞬時に起動する事が出来るので、PCにあったもたつき感がなくなるのは大きい。リモコンで瞬時に起動し、アプリも瞬時に起動したり、熱の問題が緩和されるのでフルパワー動作がしやすくなる。スマホで3D撮影したり、それをVRで見たりする時にもMRAMによる低消費電力化は威力を発揮するだろう。面白い時代になった。

 

これでDRAMの時代が終わるだろう。微細化の限界が近づいた時に実用的な容量(4Gbit)とスピードと書き込み耐性を持ったMRAM(不揮発メモリ)が登場したのは、MRAMの実用化が可能になったのは、感慨深い。平面方向の大容量化は、今後15年以内に終わるだろうが、こういう不揮発メモリを積層して垂直方向の大容量化に進むだろう。その為には、積層時の熱の問題を回避する為に消費電力を低くする事が重要になってくる。それについて産総研東北大学が従来よりも少ない磁場で磁化できる新しい磁性体を開発した。

 

 産総研:磁気モーメントの渦の運動が可能にする省エネルギー情報記録

 http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20161208_01web.pdf

f:id:skymouse:20161212163254p:plain

というわけで、さらなる大容量化(=低消費電力化)も可能になってくるようなので、MRAMの未来は前途洋々といった所だろう。次世代のメインメモリの座はMRAMになるかもしれない。

 

 

 

 

 

資料:今回の発表の詳細

今回の発表を実現可能にしたと思われる技術の詳細な内容については、東芝のプレスリリースにのってる。

 

新設計のアーキテクチャの概要

 超低消費電力・高速メモリ「電圧トルクMRAM」の実現に道筋

 2016.12.5

 https://www.toshiba.co.jp/rdc/detail/1612_02.htm

 

・不揮発性磁気メモリ(MRAM)の新しい電圧駆動書き込み方式を考案

・電圧書き込みのエラー率を低減するための新型回路を開発

・大容量のラストレベルキャッシュへの電圧トルクMRAM適用に道筋

 

新しい電圧書き込み方式で低消費電力し、新型回路でエラーを低減することで、大容量のSTT-MRAMを実現したとある。

 

 省電力・大容量メモリの実現を目指して、書込み確率の大幅改善を実証

 2016.12.5

 https://www.toshiba.co.jp/rdc/detail/1612_01.htm

 

この中では、書き込みに必要な電力を1桁減らしたとある。(これが大容量化の肝)その内訳は、新規の2つのスピントロニクス物理原理(VCMA効果とスピンホール効果)を利用した新設計の新しい書き込みアーキテクチャの採用により、複数ビットの一括書込みを可能とし、消費電力を1桁下げて大容量化できたとある。(大ざっぱに要約する事こんな感じ)