SKY NOTE

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TPPのような「裏切り経済」では、儲からない

台湾の立法院占拠の情勢を見る。

中国版TPPとも言えるサービス貿易協定反対の若者達を見て、正常な民主主義社会とはこうあるべきだと思った。ただし、それが自分の国でないことが残念。

 サービス貿易協定に反対する台湾の群衆
 

若者の抗議が一定の成果を上げ、サービス貿易協定は白紙に戻った。ほとぼりが覚めたところで、再び馬英九は、サービス貿易協定に挑むかもしれないが、これほどの反対運動が起きたのだから、それまで政権が持つかどうか分からなくなった。ある意味、この対応は民主主義社会として正常な若者の行動である。

そんな事を思いながら、TBSドラマ、LEADERSを見た。
内容は、戦前、戦後のトヨタ自動車の歴史を綴ったもので、トヨタ自動車の社名が愛知自動車になっている。

 動画 LEADERS (4時間のドラマ)
 http://www.free-douga.jp/drama.php?num=968

戦後の貧乏だった日本、仕事がなくなると餓死する可能性があった時代、そんな時代の中で自動車産業こそ、日本復興の切り札だとする愛知自動車の社長、愛知佐一郎の物語、地方財閥の御曹司だが、お坊ちゃん育ちのくせにチャレンジ精神が旺盛で、思いやりのある人間性溢れる人物。愛知自動車が経営難の時に人員整理の話が出てきた際、「家計が苦しいからといって家族を追い出す家がどこにある」という台詞にある通り、彼は一貫して人員整理に反対した。

これとTPPや台湾の立法院占拠と何が関係あるのかと思うと感じるだろうが、関係は大有りである。共通点は、仲間を切り捨てないという事だ。自分が助かるために仲間を切り捨てるよりも、何とかして販路を確保して、人員整理だけは避ける。そういう努力を愛知佐一郎は精力的に行っていた。そういう仲間思いの社長の姿勢と、社員が一体となって、日本最大の自動車会社、トヨタ自動車(ストーリでは愛知自動車)が生まれた。

それは、現代においても、有効な方法論であることは、最近のユニクロの経営方針の変更にも見ることが出来る。ユニクロは柳井社長が「年収100万円も仕方がない」と言って有名になったブラック企業であるが、このほど、その方針を若干、転換し始めたようだ。
 
 

 ダイヤモンド:“ユニクロの決算書、「ここ」がヤバかった!”
 正社員1万6000人増加の真相とは?
 http://diamond.jp/articles/-/50572#gunosy

この中で、ユニクロは、パート・アルバイト店員30000人の内、16000人を正社員に格上げするという経営の大転換をしました。ユニクロのそれまでの正社員数は24000人、実に正社員の数を66%増員するという。この背景には、ユニクロの決算があった。

 パート・アルバイト:30000人→14000人
 正社員      :24000人→40000人(16000人増員)

ユニクロの社員一人当たりの売上高は2405万円、前年同期比の2422万円に比べ、約17万円減少していますが、この程度であれば、横ばいという程度で深刻といえるかどうかという内容ですが、問題は社員一人当たりの営業利益にありました。ユニクロの社員一人当たりの営業利益は、280万円で、前年度の330万円と比べると50万円も下がっていたのです。つまり、売上は横ばいであるものの、社員一人当たりの営業利益が15%も減っていたのです。

 ユニクロ(社員一人当たり)
  営業売上:2422万円(前年同期)→2405万円(今年度)−0.7%
  営業利益:330万円(前年同期)→280万円(今年度) −15%

このユニクロの営業利益低下の原因は、パート・アルバイトが増えすぎてしまったことにある。ここから分かる通り、パートやアルバイトなど、低コストではあるが、待遇の悪い社員を増やしすぎてしまうと、顧客対応も、それに応じて悪くなり、それは利益に跳ね返ってくることが分かります。つまり、人を大事にしない企業は、結果として、利益を減らしてしまうのです。ここから考えると、TPPによって移民を増やすことが本当に、この国の利益になるのかという事になるのです。低コストな労働は一見、利益を上げやすくなると思いがちですが、それは国内の労働品質の低下を招くこともありうる。そして、低賃金の顧客が増えすぎてしまうことによる慢性的なデフレにもなることを考え合わせると、全く合理的でないことがわかると思います。

つまり、社員を大事にして世界有数の自動車メーカーになったトヨタ、社員を粗末に扱って、営業利益を落とし、慌てて正社員を増やしたユニクロ、これらに共通するのは、社員をきちんと待遇する事で「利益を稼げる企業」になるということだ。結局のところ、人の力で動いている以上、そのパフォーマンスを引き出せたものが勝つ事になるし、同時に、その働いている人々は消費者でもある。消費者の財布にお金がなければ、商売にならないわけで、TPPなどで、移民を増やして安月給の社員を増やしたところで、結局、労働の質の低下と低賃金労働者を増やして、デフレの慢性化を招いて、景気悪化を常態化する。そういうデメリットだらけの、TPPのようなものに対して、台湾の学生はノーといった。これは正しい判断だし、民主的に正しい行動だった。

そして、その判断の根底にあるのは「仲間を見捨てない姿勢」だ。同胞を大事に扱う事で、その価値を引き出し、利益を生み出す。これは、日本が強かった時代の考え方にも合致する。つまり、私たちが弱くなったのはグローバル競争に追いつかなかったからではなく、実際は、グローバル競争に勝つためと言って仲間を切り捨て、粗末に扱った結果ではなかったかと思うのだ。そうすることで労働の質の低下を招き、安くしないと売れないような競争力のない商品を作り、同時に低賃金の非正規雇用も増やしてデフレを慢性化した。その中で内部留保や配当金を積み上げて、株主にばかり金を譲り、一緒に働いている仲間の給料は切り捨てる。そういう裏切り行為が、この景気低迷の本質ではなかったかと、そう私は、台湾の学生たち、昔のトヨタ、今のユニクロを見て思うのだ。