世界のPC出荷台数が13.9%と大幅ダウン。アメリカの調査会社IDCが4月10日(現地時間)に発表した。
世界PC出荷台数、13.9%減と過去最大の減少率──IDC調べ
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1304/11/news032.html
世界全体
PC出荷台数:7630万台(前年同期比13.9%減)
この記事にあるグラフによると、PCの出荷台数が減り始めたのは、2012年の1〜3月期で、この頃からPCの減退傾向が始まっていた。原因はWindows 8の評判が悪いことだという。
Windows 8の不評の原因
・大幅なインターフェースの変更
・タッチ機能搭載のPCの価格の高さ
どうやら、新インターフェースで使いにくいと思われ、新しいインターフェースに対応するためのPCも価格が高いとして敬遠されたようだ。つまり、Windows 8は、使いにくくて高いという印象を持たれてしまった。それに対し、タブレットやスマートフォンは、使いやすくて安いという事なのだろう。この相対的な付加価値の差がPCのコンピューターにおけるシェア低下を決定的にしてしまったといえる。この流れは止まらないだろう。
メーカー別のシェア
順位 | メーカー名 | 2012Q1 | 2013Q1 | 前年同期比 |
1 | HP | 1572万台 | 1200万台 | -23.7% |
2 | Lenovo | 1171万台 | 1170万台 | 0.0% |
3 | Dell | 1011万台 | 901万台 | -10.9% |
4 | Acer | 895万台 | 615万台 | -31.3% |
5 | ASUS | 540万台 | 436万台 | -19.2% |
その他 | 3974万台 | 3308万台 | -10.0% | |
合計 | 8863万台 | 7629万台 | -13.9% |
ざっと眺めてみると、PC最大シェアのHPの売上が大幅に減退している事から見て、これはWindows 8に対して、消費者が買い控えをしている傾向とみられる。これに対して、2位の企業顧客がメインのLenovoは変化なしというのが象徴的、搭載しているOSのメインは、Windows 7とWindows 8の影響を受けなかった。ここからみて、Windows 8は、PCの需要を上げるのではなく下げる効果があったといえる。MicrosoftのWindows 8担当マネージャーが首になったのも頷ける内容だ。3位のDellも10.9%下がっている。これは、全体の下落傾向の13.9%に近い。そう言う意味で全体の下降局面にDellは引きずられた格好だ。そう言う視点で見ると、DellのユーザーはPCの平均的なユーザー像とも言えるのかもしれない。4位のAcerは、31.3%下落と、大幅に下がっている。低価格PCブランドは、Windows 8の逆風と低価格なタブレットとスマートフォンのダブルパンチを受けた格好だ。5位のASUSも同様である。その他の傾向は10%下落である。
全体的に見て、低価格ラインではタブレットやスマートフォンでやられ、パフォーマンスラインでは、Windows 8の逆風にやられたといえる。今後、高付加価値のタブレットやスマートフォンなどが登場すると、パフォーマンスラインも大幅に下落する可能性がある。OSとハードも含めて、大幅なテコ入れをPCはしないと、タブレットやスマートフォンにシェアを奪われ続けることになるだろう。TSV技術を使った高速PCや市場のニーズに合ったインターフェースのOSが早急に求められる状況といえる。
自分の目測から言えば、PCは、消えてなくなるカテゴリになるのではないかと思う。その理由は、HTML5やOpenGLなどの標準化技術にある。これらのテクノロジーによって、ソフトウェアプラットフォームがウェブベースで統合され、低価格 or 無料でパフォーマンスも十分ということになれば、企業も個人もWindowsを選ぶ必要がない。あるとすれば、過去のソフトウェア資産。その大半はOfficeアプリケーションであり、それらの互換性は、完全ではないにしろ、十分なものが既にウェブベースで実現されているので、わざわざ大枚をはたいてOfficeを買ったりWindowsを買う理由は、なくなってきている。
ジョブスが生きていたら、誇らしげに「PCの時代は終わった」とグラフを見せてプレゼンしていただろう。PCの時代が終わった後、残るものはなんだろうか?恐らく、それは平均化の時代に入る。全てのプラットフォームの垣根がなくなる。ディスクトップ/ゲーム機、ノート/タブレット、スマートフォン、これらは、ハードの形態は違うので、それぞれ残るだろうが、ハードの特性が似ているディスクトップ機とゲーム機、ノートとタブレット、これらは市場がバッティングするだろう。タブレットにキーボードをつければ、ノートとも言えるし、PCにワイヤレスコントローラーをつければゲーム機とも言える。逆にゲーム機にキーボードをつければPCとなる。そういうクロスオーバーの時代では、最も安くて、最も付加価値の高いものが選ばれる。そう言う意味で命令効率の高いARMコアを使ったPCが優位に立つ可能性が高い。だが、そこにはWindowsの居場所はないだろう。残るのはFirefox OS、iOS、Androidだろう。ChromeはFirefox OSとバッティングするが完全にフリーで使えるという点からいって、中長期的には、Firefox OSに軍配が上がると見ている。標準化技術の弱点は決定に時間がかかることで、そこから察すると、AndroidやiOSは、音声認識やAIなど先進的なAPIを搭載することで逃げ切り戦略をとることになるのではないだろうか?そう考えるとAppleとGoogleは、いかに先進的な技術を取り込むかという競争になるのかもしれない。
何れにしても、ボーダーレスの競争なので、どうなるか予測がつかない。単に最も強いものが勝つということではなく、氷河期のネズミのように賢いものが状況に適応してかつ、それがこれからのコンピューター市場でより厳しく問われることになるのかもしれない。PCは極限まで小さくなり、メガネの形になって、モニターすらなくなり、サーバと繋がって情報共有なんて時代もすぐそこだと思う。だが、重要なのは、そこへ向かう過程なのだ。その過程をうまく描けたものが勝者となる。