SKY NOTE

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広島大学:鉄のように強度のあるプラスチック

科学雑誌ニュートンを読んでいたら、広島大学で、鉄鋼のような強度をもつプラスチックが開発されたという記事を見て、釘付けになった。高分子を90%以上結晶化する事により、強度が飛躍的に向上したプラスチックを開発したと言う。結晶化とは鋼も同じで、何回も叩いたり伸ばしたりすると強度が上がるのは、この結晶化によるもの。コレと同じ事をプラスチックにも行い、結晶化率を90%以上にまで高め、非常に強度の高いプラスチックを開発したと言う。いわば、プラスチックの鋼と言うべきものを作ったと言う。その性能は鉄鋼の2倍の厚みが必要だが、重さは1/4ですむという非常に軽くて丈夫な高分子素材。しかも、従来の繊維強化ポリマーに比べて低コストでリサイクルも可能だと言う。
 
鉄鋼のように強い汎用プラスチックの創製(広島大学のリリース)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20100419-2/index.html
 
こっちの方が分かりやすい↓
鉄鋼を超える強度を保つシート状汎用プラスチック
整列したナノ結晶をダイヤモンド同等強度を持つひも状分子が結ぶ
http://moriyama.com/node/2010/04/20/2581

  • サイエンスライターの方のブログなので、このブログ読むより内容がずっといい、自分、このニュースの内容は難しくて分からない部分が多い為、上記のリンクで、読む事をオススメする。

 
広島大学大学院総合科学研究科
・彦坂 正道:特任教授
・岡田 聖香:博士研究員
 
新しい高分子材料の特徴
・鉄鋼を超える比強度
・安価
・水に浮く軽さ
・リサイクルが可能
 シート状の超高性能汎用高分子材料(汎用プラスチック)
 
研究のねらい(引用)

  • 「ナノ配向注9)結晶体(NOC:Nano Oriented Crystals)」でした。ひも状の高分子鎖が、融液段階で、毛玉状に絡まっているために非晶が発生するのですから、これを一定方向にきれいに並べた上で結晶化すれば、結晶化度の高いナノ配向結晶体が実現すると考えました。そのためには、高分子融液を引っ張って伸ばしながら結晶化させる必要があります。しかし水を引っ張ることができないのと同様に、融液つまり液体を引っ張ることは簡単にはできません。問題は、いかにして融液を伸長するかということでした。

 
製法(引用)

  • 融点以下に冷やした高分子の融液(これを過冷却注10)融液と言う)を潰す(compress)ことによって伸長するというアイデアでした。左右に細長い溝の中に融液を入れて瞬間的に圧力を加えて潰すと、融液内には左右に広がる激流が生じ、急流にさらされた布のようにひも状分子が引き伸ばされ、高配向したナノ結晶が実現する可能性があると考えたのです(図2、3)。本研究グループは、このアイデアを実現して、SPring−8において観察し、この仮説の正しさをナノレベルの解析で検証することに成功しました。
  •  次にどの程度の速さで潰せばよいかが問題になります。そこで融点以下に冷やした高分子の融液を潰す圧力と速度を変えながら伸長と配向の様子を観察したところ、1秒間に数百倍も伸長するような、大きな伸長歪み速度注11)によって、同じ結晶化温度でも結晶化が一気に100万倍も速くなる「臨界伸長歪み速度」が確認されました(図4)
  • さらに、そのメカニズムを知るために、SPring−8で臨界伸長ひずみ速度以上で伸長結晶化して得られる試料の様子を観察しました。すると過冷却融液中の高分子鎖が平行に並んだ完璧に近い配向融液になり、無数の核がミリ秒オーダーで生成し、融液全体の92%が結晶化することが確認されたのです(図5)。NOCの実現が確認された瞬間です。

 
性能(引用)

  • NOCは、引っ張り破壊強度注12)、つまり引っ張る力に耐える強度が同重量の鉄鋼の2〜5倍という値を示し(図6、7)、しかも耐熱性は通常のポリプロピレンより50℃以上高い176℃でした(図8)。また光の波長より小さいナノ結晶であるがゆえに高い透明性を示しました(図9)。さらに何も混ぜ物を加えないので、高い収率でリサイクルができる可能性がありました。しかも高分子融液を潰すという単純な工程が加わるだけなので、従来の成形法を少し改良した成形法で成形ができるために、製造コストは従来のプラスチックと大差はありません。
  • さらにこのNOCをX線回折法で調べると、20〜30nm(ナノメートル=10−9m)のナノ結晶が一列に並んでいました。しかも長さが2µm(マイクロメートル=10−6m)の1本のひも状分子鎖が100個以上のナノ結晶を貫いて、強い結合によって結びつけていたのです。このひも状分子は、炭素が共有結合で連なっているものなので、ダイヤモンドと同じ強度を持っています。つまり無数のナノ結晶が整然と並び、これをダイヤモンドと同等の強度を持つひも状分子がしっかりと連結している構造だったために超高性能が生まれたと考えられます。本研究グループは、この構造を「鎧モデル」と名づけました(図10)。

 
書いてある内容が難しいので、重要だと思われる部分を、そのまま引用したが、要するに過冷却現象を利用して通常は液体の高分子溶液を引っ張ったり、潰したりすると、92%以上が結晶化して飛躍的に強度が高まった。その構造はダイアモンドに似ており、実際にダイアモンドと同じ強度をもっているという内容のようだ。しかも、それが従来の繊維強化プラスチックに比べて低コストで、整形(繊維強化ポリマーは整形が難しかった)も簡単にでき、リサイクルも可能だと言う。つまり、超強くて、安くて、整形もしやすく、リサイクルも可能という理想的なポリマーである。
 
その特性は...
・鉄鋼の2〜5倍の比強度、アルミニウムの6倍の比強度
・透過率99%(ガラスの代替として有望:軽いガラスみたいな感じ)
・通常のポリプロピレンよりも50度高い耐熱性(126℃ → 176℃)
・整形性が高い
・ポリマーだから錆びないので建設材料としても有望
・耐水性(ポリマーだから当たり前だが、鉄と比べて)
 
この特性から見ると、ガラスや鉄の代替剤としてほぼ理想的な特性を備えていると言える。車のボディに使うとフロントガラスからボディまでこのポリマーで作れるだろう。ポリマーだから軽くて断熱性の高い断熱窓も作れるだろうし、錆びないから建築材としても有望だ。そうなると、この素材とジオポリマーが組み合わされば、非常に寿命の長い建築物が作れるかもしれない。とても夢が膨らむ素材だ。しかも、それが安いというのだから素晴らしい。
 
ナノ配向結晶体(NOC)の特性