SKY NOTE

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NHKスペシャル「COMPUTER」を見た。

率直に言って、基本的なことは、現在研究されていることを踏襲していて、どこかで聞いたことのあるような内容だったので、特に驚きもせず、ただ、見ていた。初めて見る人は、IBMの言葉を理解するコンピューター「ワトソン」あたりに驚くかもしれないが、現在のコンピューターのスペックからすれば、そうなるのが遅すぎたくらいであり、今更感がぬぐいきれなかった。WIREDを読んでいると、大体分かってしまうような内容だった。

自分が期待していたのは、従来にないようなアルゴリズムでスーパーコンピューターを動かし、全く別次元のことが出来るコンピューターを期待していたのだが、そういうものはなく、いわゆるビッグデータを使って、それを大量演算できるスーパーコンピューターに処理をさせる事で今までにないことを可能にしているという内容だった。

スーパーコンピューターを使って、無数の化合物の組み合わせの中から、最適な薬を見つけ出すみたいな話があったけど、昔からそういうのはやっているので新しいことでもなんでもない、スーパーコンピューターが新しくなったから昔よりもたくさんできるようになったというだけの内容。

後は震災防災シミュレーションで、予測型防災システムといい、100万人分の住所、年齢、性別、家族情報、道路や鉄道、避難場所などの地図情報、建造物の内容、使われている材料などの情報を下にシミュレーションをする。さらに危険を感じた時の人間の行動までシミュレーションして、100万人規模で予測するという事が京のスペック(10ペタフロップス)で可能になるという話。

京よりもソフトウェア的に優れていると思ったのが、IBMのワトソン、ワトソンは人間の言葉を理解し、人間のように考えることが出来る。(HAL9000のようなものやね)全米のクイズ王と対戦し、ワトソンが圧勝したのだが、印象的だったのは、クイズ王のワトソンに対する感想、クイズに答えるとき、直感が大切だといっているのだが、ワトソンにもその直感のようなものがあると感じたという点。いかにワトソンの計算アルゴリズムが優れているかということを示すコメントだった。クイズ王の「新しい時代がやってきたのだとおもいます。人間の頭脳しか出来ないことまでコンピューターがやってしまうのです」というコメントは、いよいよ来たなという感じがした。ワトソンには機械学習というプログラムを入れていて、子供が失敗を繰り返しながら学習していくプロセスを機械にやらせている。そうすることで、文章の中から、どれが重要なのかを選択する事ができるようになったという。個人的には、Google検索エンジンのようなことをしていると感じる。Googleの場合、人間の検索アクションを積み上げていって、それをデータベース化して、優先順位をつけるが、ワトソンの場合は、失敗を繰り返しながら試行錯誤して答えを経験していく事ができる。それがクイズ王に直感のようなものがあると言わしめたものなのだ。このワトソンの応用例が医療分野でワトソンに膨大な過去の症状のデータを見せて、意思が患者の症状をワトソンに説明すれば、ワトソンが病名を診断し、最適な治療法を教えることが出来る。映像では、タブレットコンピューターのボタンをワンタッチで押すと症状の候補リストが確率と共に出てくるところがすごかった。

その次に日本の研究で東大入試にスーパーコンピューターが挑戦するという内容なのだが、コンピューターは比較的、そう言う論理的なことは理解しやすいので、いずれは出来てしまう。というかIBMのワトソン辺りではすでに出来てしまうような内容でイメージ的にはチープ感は拭えなかった。

自分が期待していたのは、今までコンピューターにできないとされてきた。非常にアナログなこと、例えば、人間の感性を再現するような事、音楽を作曲するとか、抑揚をつけて喋るとか、感情に相当するものを再現するとか、そういうものを期待していた。それ以外の論理的な事は、基本的に処理能力があれば自然にできる事であり、新鮮味も何もない。出来ると簡単に予測できることでしかない。

左脳的なことは、基本的にコンピューターは得意だ。自分がすごいと思う内容は、視覚を通じて、それが何であるか分かるコンピューターとか、その視覚と思考を連動させて、状況を予測し、人間のように考え、そして、自らの目的を持ち、それに基づいて行動できる様な存在だ。限りなく人間に近いことが出来る。その上でスーパーコンピューター並の知性を持つと、人間はいらなくなる。人間はAndroidに働かせていればいい時代も夢じゃないという革命的なコンピューターを期待していたのだが、この番組の内容は、それよりも遙かに劣る内容であったので、しばらくは人間が必要みたいだ。ただし、単純なこと、論理的なことはコンピューターは得意なので、近い将来、ホワイトカラーの仕事が大量になくなってしまう可能性は高い。そうなると、人々は、今の倍の休みがあって、オフィスビルは、今の半分くらいはいらなくなると予測されるため、都市の消費電力が半減するかもしれない。必要なのはスーパーコンピューターを動かす電力だけという話になるのかもしれない。既に人語を解するレベルに達したことには注目すべきだろう。

自分が期待していたのは、映像からモノを抽象化し、言語と連携させ、あるいは、映像自体を互いに連携させて思考できるようなアルゴリズム、映像からモデルを抽出し、そこからパターン認識が出来るような従来の文字で考えるのではなく、それを超越したコンピューターが見たかった。10年前、フラクタル画像圧縮を用いた類似画像検索システムというのを見たのだが、それは同じではなくて、類似の映像を検索できていた。

 フラクタル画像圧縮を用いた類似画像検索システム
 http://sd.is.uec.ac.jp/research/intro/cbir/fractal/

デモ映像では、2002年のPC上であっても結構早いスピードで類似画像の検索が出来ていて、モニタを見ていて、そのスピードに「まるで魔法のようだ」「これは意識を持った眼だ」と驚嘆したものだった。何が言いたいのかというと、類似のものを言語で関連づけて、スーパーコンピューターに学習させれば、映像から何がどういうものか概念的に解釈できるはずであり、赤ん坊が言葉を覚えていく過程を再現できる。そして、言葉ではなく、目で見て何がどういうことなのか分かるようになる。番組ではそういうコンピューターが映像から状況を認識し、答えを出していく様を、コンピューターが出来ないという解釈をしているが、そんな事はない。映像と概念を連結させたり、映像そのものをイメージできるプログラムは、可能性としては充分有り得る。

映像と言語を繋げ、予測できるようにすることは、コンピューターが人間に近づく一歩となる。日本の研究者の言っていることは、あまりにも夢がなくて、面白くなかった。ある意味、単純にビッグデータを入れれば出来てしまうこと、一方、IBMの研究は、人間のように考えるコンピューターを作っているところで、ああこういうところで差がつくんだろうなと思った。アメリカの場合、ワトソンを始めとするソフトウェアアルゴリズムに見るべきところがあるんだけど、日本の場合は、産業研究の一環でしかない様に感じた。
 
自分だったら、どういうことを考えるかというと、天才と呼ばれる人たちを集めて、その人達がどのように考えているか質問して、それを再現するアルゴリズムを開発する事。いわゆる映像で思考する右脳的計算モデルをコンピューターにやらせる。そして、天才アルゴリズムをコンピューターに移植し、それにあらゆる世界中のデータをぶち込んで、神を作る。GOD COMPUTER、あらゆることを天才的に予測し、天才的な思考力で最善の選択を導き出せる。コンピューターの中の天才を生み出す。普通の凡才コンピューターとは次元の違うものを作るのが楽しいと思うのだが、どこかの研究所で作ってないかなと思う。まぁそこまで優れたコンピューターだと、ある意味、軍事利用も可能だろう。武器もエージェントも使わない思考戦争。正確な予測ができるのならば、運命をコントロールする神のように振る舞えるはず。政策立案だけでなく、世界を支配することだって可能だろう。究極のコンピューターについて考えると、悪の秘密結社みたいな発想になってしまう自分が怖い。