SKY NOTE

skymouseが思った事考えた事を記したもの

Pref..
Speech
STOP
Follow..
QR Code
|◀
▶|
QR
×
voice
volume
0
rate
0
pitch
0

戦略を評価できない日本のマスコミ

日本には戦略がないという。しかし、日本のマスコミもまた戦略が評価できない。
 
GMの切り札 「VOLT」はほんとに燃費がいいのか?
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20101101/105128/
 
この記事の中のVOLTの性能は、残念な結果だった。私も100km/Lは、慶應大学の清水教授のIZAのエネルギー効率から、不可能ではないと思っていたから、16km/Lという性能にはガッカリした。(IZAのエネルギー効率は531kg(28.8kwh)の鉛電池を積んで548km走るから、電力換算で17.36km/kwh19km/kwh、業務用の発電用ディーゼルエンジンで1Lあたり、4kwh発電できるので、大体、69.44km/L76km/Lとなる。昔の鉛電池をボルトに使っている最新電池にすると360kgとなる。つまり、171kgをディーゼルエンジンとすれば、計算上、同じ燃費に出来たはずなのである)もっと言えば、走行性能をIZAと同じ効率にして車体重量を1.31tにすれば、100km/Lに出来たはずなのである。
 
しかし、この記事の中で電池容量16kwhにアメリカ政府が補助金をかけることを、単なる経済対策と見るのは、非常に底の浅い記事だと思った。それは、以前、このblogの下記のリンクのページで、車のバッテリーをスマートグリッドで使用し、一台あたり、4kwh×6000万台で2.4臆kwhの想定で計算したのだが、その場合は以下の図のようになる。
 
温室効果ガスを出さない社会
http://d.hatena.ne.jp/skymouse/20091213/1260632970
 
日本の1日あたりのピーク電力(クリックするとクリアな拡大画像が出ます)
 上:左上:2004年の春夏のピーク 右上:2030年の春夏の想定ピーク
 下:左下:2030年の春のピーク  左下:2030年の夏のピーク

 
この図のグリーンの部分がスマートグリッドで蓄電できる容量を使ったものとなる。これが4kwhの試算で電力のピークのかなりの部分を吸収できている事が分かる。(ちなみにこの図は、日本の電力需要をベースに、2030年までに、電子都市(-6%)、人口減少(-11%)、LED〔-13%〕などの省エネ技術を活用し30%程度、電力需要が縮減したピークの中で計算している)つまり、容量が多ければ多いほど、スマートグリッドの蓄電容量が上がり、自然エネルギーのムラをかなり吸収できる事を意味する。だから、その部分に重点的に補助金をかけるというのは、非常に戦略的なのだ。(長期戦略として優れている)
 
日本の発電量と構成(2030年を想定)(クリックするとクリアな拡大画像が出ます)

 
なのに記事では、それを短期的な経済対策といってしまう。非常に読みの浅い記事ではないか。電池の容量を上げれば、スマートグリッドの性能が上がり、それだけ自然エネルギーの導入をしやすくなるという事がなぜ分からないのか不思議でしょうがない。日本のマスコミは、戦略を評価できない事で、恐らく、今までも戦略性の高い情報が来てもきちんと評価できなかったと考えるのは想像に難くない。
 
このように日本には戦略がないと言われるが、実際に戦略的に優れたアメリカの政策がきちんと評価できないのでは、日本には戦略がないのではなくて、マスコミのレベルが低くて、戦略性の高い提案をしても、それを評価できないのではないかと言われてもしょうがないだろう。例え存在しても、それが評価されなければ社会的には存在しないのと同じになる。私が天才の義父について思った事と同じだ。彼は天才だったが、きちんと評価されなかった。高い能力、優れた提案は、適切な評価者がいてこそ意味があるものだ。優れた戦略性も、それを優れていると評価できる者がいてこそ、その存在が認められる。日本のマスコミは戦略がないと書く前に、自分達は優れた戦略を評価して記事を書けているか?と考えてみるべきだ。
 
私は日本の技術を戦略的に組み合わせれば、非常に付加価値の高い電力システムが生み出せると思っている。スマートグリッドだって、ずっといいものが作れる。しかし、旧来のマスコミが、このレベルでは、そういう提案をしても価値がないと見なされ、結果として、技術的優位性を持っていても、それを社会的に展開する事が出来ず、日本は、才能はあっても評価されないという状況になる。
 
日本に必要なのは、優れた評価者である。それが無能な為に能力があっても、それを生かせない。この絶望的な状況の中で希望と言えば、旧来のマスコミの頭越しに尖閣のビデオが出て、社会が変わってしまった事だ、あの事件は、個人がマスメディアを介さず社会を変えられる事を証明した。従来からYouTubeによって、個人がテレビ局になれるという事が理論的には想定されていたが、それが尖閣のビデオで現実になったところが、希望といえば希望。つまり、マスコミというメガホンを使う事なく、YouTubeなどを使って個人が社会に変えられる時代になったという意味で、あの事件は象徴的だった。
 
清水教授の電気自動車の会社「シムドライブ」のページ
http://www.sim-drive.com/
シムドライブには、日本の「三菱自動車」や「いすゞ自動車」などの企業が協賛している。