SKY NOTE

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脱原発の対案

脱原発の対案がないと言われるが、少し計算すれば誰でも分かることなのに、なぜ、対案がないというのか訳が分からないが、とにかく対案がないらしい、そこで、その簡単な計算について書いて見ることにした。まず、電力は不足するか?ということだが、関西電力単体を見ると危機的だが、周囲の電力会社の余剰電力を使えば、十分リカバリー可能である。

電力会社の脱原発後の発電量(詳細は脱原発は可能か?を参照のこと)

赤い不足分を補うように他の電力会社が余剰電力が使用可能である。

これで市民の節電と、新設された火力発電と古い火力を総動員する事で短期的には電力不足を補える。それだけの規模の発電量を持っている。短期的にはそれでいい、中期的には、LED照明と断熱ガラスの普及である。これが最初の5〜10年くらいにやるべきことといえる。

照明の電力需要
 家庭: 382億kWh
 業務: 891億kWh
 産業: 233億kWh
 合計:1506億kWh

照明需要は全体で1506億kwhある。現行のLEDの発光効率は蛍光灯と同じ100ルーメン/Wだが、LED照明は、安定器がいらないのと、蛍光灯のように必要のないところまで放射状に光を発する光源ではなく、必要な方向にのみ光を出せるので、LEDの消費電力は蛍光灯の半分で済むのである。(実は、発光効率が同じでも、ほとんどの照明器具において、必要な放射角は180度程度であり、蛍光灯は360度照らしてしまうため、50%の光を捨ててしまっているのである)

この特性からどのように消費電力が減るかというと、20wの直管形蛍光灯で試算してみる。
蛍光灯の消費電力
 安定器:5W
 蛍光灯:18W(360度、無駄に放射状に光を散乱させてしまい50%のロスがある)
 合計 :23W

LED照明の消費電力
 蛍光灯:9W(必要な方向にのみ光を集中できるため半分で良い)
     殆どの照明器具の需要角度は180度である。
 合計 :9W

蛍光灯とLEDの比較
 蛍光灯:23W
 LED:9W(蛍光灯に比べて39%)

つまり、すべての照明をLEDに置き換えれば、1506億kWhが39%になると試算すると...

LED照明による節電規模
 2012年:1506億kWh
 2017年: 587億kWh(100lm/w 安定器なし:最大918億kWh節減)
 2022年: 293億kWh(200lm/w:最大1213億kWh節減)
 実質   :1050億kWh節減

LED照明に置き換えるだけで、918億kWh削減となる。しかも、今後、発光効率は上がっていき、100lm/w(2012年)→200lm/w(2017年)となると、最大で1213億kWh節電が可能だ。他にも、明るい時には調光して最大40%消費電力を減らすPanasonicエコナビなどがあり、結果として、その中間である1050億kWh程度がLEDによる節電規模となるだろう。これが5〜10年以内に達成できる節電である。何も発電所を作ることのみが脱原発ではないのだ。1050億kWh節電できるLEDの問題は、そのコストにある。これは量産すれば安くなると言いたいところだが、実はもう安いのだ。現状でも61%節電できるため、差額分を節電できるくらい長時間使っている照明ではすでにコストメリットが出ている。

18wの蛍光灯
 蛍光灯: 450円
 LED:3000円
 差額 :2550円

差額:2550円 ÷ 23円/kWh=110kWh

110kWh節電できれば、元が取れる。そこで、110kWhを節電分(23w-9w)=14wで割ってやると、7857時間となる。LEDの寿命は4万時間と言われているので、最初の8000時間つかった段階でコストメリットが出てくる。これは1日12時間365日使う年間4380kWh使う照明で考えると、約2年分である。LEDの寿命は10年程度あるため、取替も必要ない。蛍光灯1本分の寿命(6000〜8000時間)を使うと元が取れる計算である。つまり、蛍光灯の取り替え時期に現在のLEDは元が取れることになる。当然、LEDが量産されて安くなれば、この期間は短くなっていく。これにより、日本の総消費電力9550億kWh(2009年)の11%(1050億kWh)は消えるだろう。

重要なのは、このLEDの普及である。まだ高くて売れていない。しかし、コストメリットはある。そこで、エコ家電1%ローンをインセンティブ政策として提案する。財源は、環境債(金利1%)を発行して、それを企業や個人などに同じ1%で3年くらい貸し付ける。照明設備の交換時期にこの制度を使うことで、割安なローンで節電できることを説明し、同時にローンを払い終える頃には節電で減価償却できている。環境債を買う人には、現行の銀行金利より高いし、エコ家電を買う人には、原発の恐怖に比べれば安いものだ。最初は厳しいが徐々にコストダウンしていく課程で、メリットが浮き上がっていく。

まずはこれで、中期的(5〜10年)な節電目標は設定できる。LEDで発電所を作ることなく1000億kWh調達できる。普及さえ出来れば、現行技術で確実に実行できる水準だ。

次に断熱ガラスだが、これは、エアコンの消費電力を30〜40%減らす能力を持っている。保守的に考えて30%節減できると仮定して、エアコンの消費電力を仮定すると以下のようになる。

エアコンの消費電力
 家庭: 487億kWh(家庭の25%はエアコン需要)
 業務:1950億kWh(オフィスの消費電力の50%はエアコンと言われている)
 産業:???
 合計:2437億kWh+???億kWh(断熱ガラスで30%節電すると746億kWh節電)

断熱ガラスの普及によって2437億kWhの内30%が節電可能である。つまり、746億kWhは断熱ガラスを普及させることで調達(節電)可能となる。そこで、断熱ガラスの普及計画だが石油税の一部(8000億円程度)を利用し、10年間無利子で貸し付けることにする。日本の断熱ガラスは普及しておらず高い、そこで無利子融資をインセンティブにすることで、年間あたりの導入コストは、節電分と同等のコストに抑え、普及促進運動をすれば、746億kWh節電できる。もちろん普及していけば、恐らく、断熱ガラスは今の半額以下となるだろう。よって、将来的には、この融資制度でコストメリットが生じてくるはずだ。使いもしない道路を作るよりもはるかに有益である。(融資期間を20年とすれば、現行のものでも年間あたりのコストメリットは生じる)

断熱ガラスを普及させた場合
 7460億kWh(10年間の節電規模)×23円=16.9兆円
 融資規模:8000億円×10年間=8兆円(無利子融資だから、10年後に元に戻る)
 コストメリットは、8.9兆円となる。(10年間で)

つまり、LEDと断熱ガラスで、どのくらい節電できるかというと...

 LED  :1050億kWh
 断熱ガラス: 746億kWh
 合計   :1796億kWh

これで原発の2800億kWhの内、約1800億kWhは節電可能である。残り、1000億kWhを新しい発電設備を作ればいい、ここからが20年越しの長期プランとなる。これの実現のためには、地域独占体制をなくすため既存電力会社の分割、競争を促すために発送電分離、総括原価方式廃止をし、ピーク制御をするためにスマートメーター電気自動車の普及が必要である。そして、長期的な投資を可能とするために石油税の内3兆円を自然エネルギー分野の無利子融資枠(20年間)として活用する。つまり、日本は3.11以後は、道路ではなく発電所を作る形へシフトする。「道路(運輸)から発電所(電気)へ」である。
 
発電設備6500億kWhが将来の日本の発電設備である。現行の9500億kWhより遙かに小さいが、省エネ設備の普及、都市の電子化、円高による製造業の縮小、人口減少などにより、エネルギー需要が下がる事を見越した規模である。また、自然エネルギーの普及により外貨の必要性が薄くなるので、製造業の規模が縮小しても大丈夫なのである。また、資源もオーランチオキトリウムによる有機物から作るバイオ石油(2600万トン:プラスチックの国内需要は1600万トン)によるプラスチックと、電炉による再生鉄(国内の鉄需要とスクラップ鉄は両方共3400万トンと同規模)により、鉄とプラスチックは自給できる。(製造業の内需と外需の比率は1:2である)言ってみれば、内需に絞れば国内の製造業の規模は1/3になるということだ。それにつれてエネルギー消費量も1/3以下になる。人口も20年後に10%減る。

総発電量6500億kWh(2030年)
自然エネルギー(4600億kWh)
 
 太陽光発電  :1600億kWh(発電効率40%で約4万ヘクタール)
 ・原発問題で使えなくなった広大な土地に集光型太陽電池で1600億kWh
  SHARP:太陽電池セルで世界最高変換効率36.9%を達成(集光型としては46.9%相当)
  SKY NOTE:シャープ、発電効率36.9%を達成した化合物型太陽電池セル
 地熱発電   :1000億kWh
 ・潜在的な発電量は2000億kWhだが半分の1000億kWhとする
 水力発電   :850億kWh
 ・現行のまま
 風力発電   :700億kWh
 ・原発問題で太平洋側の漁業は壊滅、洋上風力発電所で安全な魚と電力を作る
 ・原発問題で生じた広大な土地の中で風況の良いところを使い発電
 住宅用太陽電池:450億kWh
 ・MITの開発中の安価な太陽熱発電設備3kW×1500万世帯
  資料:資料:MITが太陽熱発電兼温水供給システムを発表
 
バイオマス(900億kWh)
 バイオマス発電;900億kWh(除染作物を燃やして発電し、フィルタでセシウム抽出)
 ・原発問題で生じた汚染木材や、バイオ燃料生成時のカスを燃やす。
 ・石炭火力発電所を改修して使う。(除染フィルタ設備を設置)
 ・抽出したセシウムは、ジオポリマー(1000年持つコンクリート)で固めて保管
  放射能を閉じ込める。

化石燃料(1000億kWh)
 LNG火力  :1000億kWh(現在2600億kWh)
 ・最新型のコンバインドサイクル型を残し、二酸化炭素を削減

年度  2009年     2030年
需要 9550億kWh → 6500億kWh
家庭 1950億kWh → 1000億kWh(断熱ガラス、エコ家電:LED、冷蔵庫etc)
業務 3900億kWh → 1950億kWh(電子化、人口減少、LED、断熱ガラス)
              (20%電子化、10%人口減少、20%省エネ)
産業 3700億kWh → 1850億kWh(円高、人口減少、鉄→ポリマー、モーター)
              (円高30%、人口減少10%、省エネ10%)
石油    0億kWh → 1700億kWh(自動車、船舶、農業機械の電気化)

上記により、基本的に日本は、殆どのエネルギー(石油、電気)や資源(鉄、プラスチック)を自前で賄える仕組みが出来上がり、結果として、外需産業は現行のGDP比15%から20年後には8%程度に低下していくものと見られる。日本は内需経済に傾倒する中で、国際競争から隠居し、安定した社会を作ることが可能である。もはや、我が国の国民は老いているのであり、この現実を無視して、TPPに参入して外国の若者と国内の老人を戦わせるなど無理な事である。単に世界と戦うだけが能ではない、戦わずして生きることができれば、それは、それで上策なのだ。また、この自給システムは、温室効果ガスを減らし、原子力も必要ない為、このシステムを新幹線のように世界に販売すれば、必要十分な外貨を得られるだろう。

日本の人口ピラミッド(2009年)