SKY NOTE

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演技と予測は似ている

最近、埼玉テレビでガラスの仮面(毎週月曜日:午後六時)がやっているのだが、その中でマヤが自分とは全く違うアルディス役を演じるのに悩んでいるとき、紫のバラの人の計らいで、過去にアルディス役を演じた初老の女性にアドバイスをしてもらった「感覚の再現」というのが予測に通じるものがあると思った。
 
 ガラスの仮面 第36話
 http://jdouga.com/603/36.html

この中で、女性はマヤに普通のバラを渡し、そのバラを「なんて綺麗なバラ」と言ってみなさいという。「なんて綺麗なバラ」と目を輝かせて言うマヤ、今度はバラを潰して同じセリフを言ってみなさいと言うと、「なんて...きれいなばら...」とぎこちなく喋る。それを「それは嘘ね」と言われてしまう。そして、バラを完全に取り去って、「綺麗なバラがあるものと思って、喋りなさい」と言われると、持ち前の創造力でマヤは「なんて綺麗なバラ」と素直に言うことが出来た。それをみて、初老の女性は、「それが演技というもの、感覚の再現、ないものでもそこに有ると思って、演じればいいのです」とマヤを諭す。

つまり感覚の再現とは、そこにないものでも、あると思ってイメージし、それに対してどう感じるかという事をマヤは持ち前の創造力を働かせて再現(感覚を再現)した。元々の才能はある。ただ、その才能に対する自覚がマヤには足りなかった。それを、この初老の女性は教えてくれたのだ。これの何が予測に該当するかというと、例えば、社会のその後を予測するときに未来の社会の雰囲気を相手の立場になってイメージし、それに対して、皆がどう感じるかということから、次に社会がどのように動くか予測できるのだ。

つまり、対象になりきるということは、そのものの心を認識することであり、それが予測に繋がるのだ。もっと言えば、それは人間ではなく物であってもいい、物理現象を把握し、そのものに成りきって考える事でより、的確な予測が可能になる。

例えば、私はアメリカのイラク戦争は失敗すると予測した。その予測は、イラク人の立場を考えれば簡単に予測できる。私は、イラク人をイメージした。砂漠地方に立ち、夜は寒く、昼は暑い、上空には米軍機が飛び交い、戦争でインフラがズタズタで、電気や水、石油が十分に供給されず、配給所で炎天下の中並んでいると、その横を米軍の大型輸送車が砂塵を巻きあげて通る。大抵のイラク人はこう思うだろう。自分の国はアメリカにボロボロにされたと、確かに独裁者フセインはいなくなったけれども、今度はアメリカという支配者が現れたと感じるに違いない。困窮する生活の中で怒りをぶつける対象がアメリカ人や、そうでないにしても、やり場のない怒りで社会が満ち満ちていることは分かる。だから、アメリカに対して、「ありがとう」などという雰囲気ではないのは、誰の目にも明らか。つまり、アメリカの統治政策は極めて困難になる。彼らの失敗は、基本的なインフラ設備を軍事設備だとして徹底的に破壊したことだった。生活に必要なものを供給できなくなれば、市民の怒りを買う。

だいたいイラク人の立場になって考えれば、簡単にわかることを列挙してみた。その後のアメリカの状況は、そのとおりになった。統治政策は困難を極め、アメリカは勝利の撤退ではなく、敗北とも勝利ともつかない戦争終結を迎えた。イラク人を演じるという事をブッシュがやっていたら、それがすぐ分かったろうに、彼は自分の理念に固執し、それが分からなかった。

マヤが演じることが上手なのは、マヤの心が優しいから、だから、人の心に寄り添って考えることが出来る。そして、その心が空だからだ。何も無いからからこそ、外部のものを受け入れる事ができる。つまり、演じるということは、自分の心を空にして、その上で対象に寄り添って考え、それを行動で表現するということなのだ。予測と演技の違いは、イメージしたあとで、行動に示すのではなく、頭の中で推測することなのだが、それ以外は同じ。

感覚の再現で分かる事は、そこにないものであってもあると思って考える事と、予測と演技が非常によく似ているということ、つまり、予測するということは、頭の中で現実を演じることなのだ。私は、歴史の先生の言葉に「歴史を学ぶのに一番適しているのは、人間のドラマを理解することだ」という言葉を聞いて、先生の言っていることは的を射ているなと改めて思った。未来が分からなかったら未来を演じてみるとよかろう。それで未来という歴史がわかるかもしれない。

現実を演じることで未来が分かる。現実とは一つのドラマなのだ。