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スティグリッツ教授、日本でTPPを痛烈に批判

ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授が師匠である宇沢弘文先生の追悼会に出席され、TPPを痛烈に批判した。

 民主党スティグリッツ教授朝食講演会 2016年3月17日
 TPPに関しては以下のリンクをクリックすれば、その部分から始まる。
 https://youtu.be/RX334pHGOJM?t=26m34s
 
 
冒頭は宇沢先生のエピソードを述べられ、その後、米国経済、そして、TPPの話に移った。国会でTPP法の審議が始まったので、スティグリッツ教授のTPPの話の部分について、抜粋する。

0.TPPについて

  • "「自由貿易協定?」協定は6000ページもある。それを読んだ奴にあった事ない"

…と痛烈にジョークで皮肉り、

  • "それは、Managed trade agreement(管理貿易協定)で、そうなのであって、フリーな貿易協定ではない。"

…TPPの本質について自由な貿易協定などではなく、その逆の管理貿易協定であると述べた。そして…

  • "それは、ほとんどが米国企業の為に書かれている"

…と述べ、米国企業の利権の為であると喝破した。

  • "オバマ大統領が、この協定は貿易のルールを21世紀に誰が書くのか、我々が書くのか、中国か、これをやらねば、中国が書くと、我々ではなく、実はロビーイストが書いたと言われるわけで、必要なら我々ならより民主的なプロセスでやると、キーイシューはすべてのTPP諸国の間で話しあわなければならない"

…とオバマ大統領の言質を引っ張り出して、以下のように反論した。

1.TPPにおける医療問題

  • "ヒポクラティスの誓いで原中先生も医者としてサインしましたよね。「危害を与えるな」と。だから医者たちは「ヒポクラティスの誓いに反するからサインできぬぞ」と"

…ヒポクラティスの宣誓書の話を通じて、TPPが医療を損なわせる事を暗に指摘して、だから、TPPにサインしてはいけないという風にジョークめかしていっている、その後、貿易協定の具体例に話をされた。

  • "この貿易協定は3部で構成されている貿易に関しては短い分です。(1番目は)ヘルプされる産業(利権を得る産業)ハートされる産業(悪影響をうける産業)、2番目は医療へのアクセス、知財というが医療の話だけ、ほとんどの国がジェネリックスとハッチ・ワックスマン法というものがある。バランスが良くない、大きな製薬会社のためになる"
  • "その(TPPの)条項がなければ、87%の薬がジェネリックで売られる"
  • "(TPPで)今でも高い錠剤の値段がさらに高くなる"
  • "オープンなディベートで買いたくないのが製薬会社、そのバランスが(TPPでは)アンバランスな形でジャネリックが手に入らないという形にしようということであった"

知財というが実際は、安いジェネリック薬(特許切れで安く販売される医薬品)を排除する内容であり、TPPは、大きな製薬会社の為のものであって、バランスが良くないと述べられている。そして、そういうTPP交渉を主導する大企業の意思についてもジョークめかして語られている。

  • "とにかくみんな全てを勝ち取りたい、保険大臣に合うと相当交渉したい、米国の大きな製薬会社は自分が欲しかったものをほとんど手に入れている"
  • "それはジェネリック薬へのアクセスを減らし、薬の値段を上げる"
  • "オバマケアでみんながアクセスできるようにと作ったものだがTPPはこれを根底から覆すもの"

…要するに製薬企業は、(TPPで)オープンでない寡占市場を欲していて、そして実際に、アメリカではそうなっていると語られている。(米国は世界一薬価が高い国)米国では安いジェネリック薬へのアクセスを減らし、薬価が引き上げられていると語り、(TPPで)そうなってはいけないよと語られていた。

2.TPPの投資条項の問題
そして、投資条項(ISD条項)の問題を語られ、それも「最悪」といっている。

  • "TPPの最悪なのは投資条項"
  • "投資を保護するというが、米国が主張しているのは知財保護はヨーロッパがやっている。著作権を守るとか、不平等をなくす事ではないわけ、規制をやめるというのが主な目的である"
  • "ビジネスのラウンドテーブルが要求した事であった。一部のコミュニティが押している。その協定のその部分は新しい規制を作りにくくしていく事"

TPPの投資条項というのは一部のコミュニティが押しているもので、政府の様々な規制をビジネスの都合で作りにくくしていくのが目的のもの、投資を保護するとか、著作権を守るとか、不平等をなくすというものではないと述べている。

  • "地球温暖化については、1980年代に初めて聞いた"
  • "炭素ガスの排出で企業の利益が落ちたら政府がカナダが環境の分野で訴えられる。環境に対するアセスメントが悪かったと民間の仲裁パネルに訴えられた。(それは)弁護士に託してビジネスに良い方に作られたもの"
  • "同じようなフィリップモリスでしょうか、規制に対して反発している。タバコが健康に悪いと書くだけでアメリカのタバコが売れなくなると、フィリップモリスも利益が減った訴訟を起こしている。(まるで)人を殺すのは自分達の権利だと言わんばかり"

…企業の都合で国に対して訴訟を起こされ、炭素ガスの排出で企業の利益が落ちたから訴訟、タバコの注意書きで利益が減ったから訴訟、まるで、人を殺したり、環境を破壊するのは自分達の権利だと言わんばかりだと言っている。

  • "重要な条文であるがプルトニウムを運ぶと訴えると書いてある"
  • "我々が書いたが、我々が訴えるぞと"
  • "これは21世紀の協定だから、すべての問題を考えたがノーだと言わざるを得ない"
  • "プルトニウムの問題、炭素ガスなどは入っていない、タバコだけ入っている。専門家がアスベストすら現法の元で規制の対象としている。アスベストの生産者は人の健康を害したではと、その会社が我々は知らなかったということで(国に対して)訴える事がある。そういう意味でTPPは格差を助長し、環境を守る正義の足を引っ張る"

…TPPで格差が助長され、環境を守るなどの正義の規制を作る事を阻害し、その足を引っ張ると言っている。

  • "その条項ひとつだけでも、TPPが原因になる"
  • "ヨーロッパは、民間の仲裁に訴えられないようなTPPに署名しないと言っている。日本がその協定に署名したら20世紀の協定に署名した事になる。21世紀において、近代社会のニーズに不十分な協定にサインする国がどこにある?"
  • "グローバルプログレッシブ運動について話をさせていただいてありがとう"

TPPは、これからの21世紀の近代社会のニーズには不十分な協定であり、ヨーロッパは署名しないと言っている。その様なものに署名する国がどこにあるのかとTPPを痛烈に批判されている。

まとめ

  • スティグリッツ教授のTPPに対する指摘は痛烈なもので、TPPは格差を生み出し、正義に反するものだと厳しく批判されている。特に医療の分野では、安いジェネリック薬を排除し、アメリカの製薬企業に都合のいい寡占市場を作って薬価を高騰させるものだと語られ、そういうものに入ってはいけないと語られていた。そした、投資条項については、最悪と酷評し、企業の都合に従って訴訟が行われ、正義が損なわれ、格差を生み出すと痛烈に批判されている。これを聞いた時、日本にもこれほど率直かつ舌鋒の鋭い先生がいたらいいなと思った。スティグリッツ教授の話を聞くとTPPがいかに大企業の言い分に偏った条約であり、そのために国の正義の足を引っ張るろくなものではない事が分かる。そういうものに改めて入ってはいけないと、先生の話を聞いて思った。そして、スティグリッツ教授の話を聞いていて、その師匠である先日なくなった宇沢先生についても、スティグリッツ教授のような誠実で優れた先生を残してくれて、ありがとうと思わずにはいられなかった。