SKY NOTE

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成功した改革にみる魅力的なインセンティブ

歴史を見ると、成功した改革には、それなりに魅力的なインセンティブが働いている。それをやると、何かが達成できると人々が希望を持った時、改革は広がりを見せ、一定の勢力となり、既存勢力を駆逐し、新しい世界が拓けるというのが、大体のパターンである。

古くは、平家と源氏の時代、平家が地方の豪族に重税を課し、源氏の武士たちが、平家にこのままいいようにやらせてしまうと自分たちが困窮して滅ぶという危機感が生じた時、源氏の統領である頼朝が現れ「いざ鎌倉へ」というわけで、地方の源氏の武士たちが結集して、平家を打倒した。ここでのインセンティブは平家を倒せば、この困窮をクリアできるというものだ。つまり、問題の根源は平家であって、これを滅ぼしてしまえば、自分たちが生き残れると思った。だが、平家は強い、その強さを挫くには、力が必要なのだが、それを源氏の正統継承者である頼朝が号令をかけることで、一つにまとまる機運が生まれ、最終的には、平家を打倒した。ここでは2つのインセンティブがある。

平家を倒すことは...
 1.経済問題の打開(困窮からの脱却)
 2.頼朝を中心に結集できれば勝てる可能性(ビジョンの実現性)

どんなに優れた提案も、その実現性がなければ絵に描いた餅である。そこで重要なのは、その提案が実現可能かということだ。頼朝は、その点において皆をひとつに纏めることができた。それは平家への怒りもさることながら、源氏が1つにまとまる大義名分としての頼朝の立場がそうさせたといえる。この人を中心にすれば皆が文句なく一つにまとまれると信じる正当性があった。そして、まとまることは力を結集することであり、それは、ビジョンの実現性に直結していた。

つまり、希望には2つの要素がある
 1.こうなったらいいなという希望(願望)
 2.その希望の実現性(リアリティ)

1は、誰でも思いつくが、重要なのは、2の部分である。それがないと、夢幻として否定されてしまう。この実現性には、皆がひとつにまとまれる大義名分が必要なのだ。単に平家を倒そうと思っている豪族は沢山いたとしても、それらを統合して組織として編成するリーダーが必要になってくる。しかも、そのリーダーには皆が集結するだけの正当性を持っていないといけない。それが上手かったのは、スティーブ・ジョブスである。彼は実際の製品ができるまで、商品を徹底的に秘密にしたが、それは演説の際に「one more thing?」という言葉の次に、実際に商品を紹介し、リリース日を「today」として、リアルに新しい世界を提案していった。つまり、「新しい世界が今日からはじまるよ」と実際のものを通じてコミュニケートすることにより、人々の希望をかきたて世の中を動かしていった。単なる新商品ではなく、今までと全く違うものを提案したからこそ、そのインパクトは1の願望を大きく満たすことになり、そして、それが実際の製品によって目の前にあるので、2のリアリティを満たし、それが変革を生み出していったのだ。

このように今までと違うもの、革新的なものを提案することは、そのリアリティを強調するものが必要だ。リアリティとは、明瞭さである。4Kの映像を見るとリアリティがあると感じるだろう。そういうビジュアル的な要素が大きい。言葉では中々リアリティは伝わらないが、ビジュアルがあると、リアルに感じる。そして、そのビジュアルにリアリティがあるほど、願望を実現できる可能性が感じられ魅力的となる。

つまり、願望を満たすものがリアルであればあるほど、魅力的に見える。Jobsの場合は実際の製品だった。頼朝の場合は源氏の統領という立場、キング牧師の場合は、優れた弁舌から繰り出されるカリスマ性、改革や変革の中心には「この人なら変えられるかもしれない」という一種のリアリティがある。そのリアルさがあってこそ、改革は成就するのだ。ただ、これはヒトラーも同様のことをやって負の方向に改革を推し進めた。共通しているのは、皆がその提案にリアリティを持った瞬間に、それは実現可能となるのだ。

例えば、小泉改革だが、これは実際には、日本を非正規雇用でデフレ経済に固定化させる改悪だったのだが「郵政民営化すれば全て解決」という荒唐無稽で実際には全く根拠が無い提案だった。それをマスコミがこぞって持ちあげることで、あれだけ目立ってるんだから、そうなるに違いないということで、荒唐無稽で根拠がなくても露出が多ければ、それは正当なものとして認め、改革という名の大規模な改悪が実現された。

つまり、露出量が多ければ、それは正当なものとして認めるという愚行が結果としては、日本をここまで強力な長期不況に陥れた要因であった。しかし、その事実を誰も批判すること無く、過ごしてしまったが故に、現在の安倍政権で私達はさらに厳しい状況に立たされている。平和憲法が形骸化し、テロの脅威にさらされ、武器を輸出し、今までになく他国から恨まれる状況を生み出している。さらに国内では残業代ゼロが来春提案されると言われており、また、その範囲もどうやら拡張される様相だと言われている。つまり、正しい正当性を見出さず、単にマスコミが持ち上げているだけのことを安易に認めてしまうことで、私達は酷い社会を創りだそうとしている。それは後世に対して非常に無責任な態度であり、断罪されるべき愚行だ。

そして、罪を自覚するものは改めなければいけない。なぜなら、この愚行は、自分のみならず、将来の子どもたちを犠牲にしかねないからだ。正しい正当性を見出し、そこに皆の総意を結集しなければ改革は達成しない、最も魅力的な結論は、常識に基づいて、正しいことを行おうとする姿勢にある。マスコミに総意を委ねるのではなく、自らの意志に基づいて総意を形成する事が今の日本人に必要なことであり、そうせねばならない局面に今、私達は立たされている。

最後に最も魅力的なインセンティブとは「あなたの常識」である。

多くの人に聞きたい、残業代をゼロにして過労死する社会が正しいと思いますか?自国の農業を潰してまで関税を撤廃して国民が飢えることが正しいと思いますか?テロと戦うと言って、外国に武器を売ることが正しいと思いますがか?多くの日本人は、これにNOと応えるだろう。なぜなら、日本人の多くは平和な常識家だから。その常識こそ、平家を打倒した源氏、公民権運動で黒人差別を否定したアメリカ人、スティーブ・ジョブスの革新に賛同し、世界を変えた人々に共通することだ。革新とは常識の中にある。

革新とは、古い常識が新しい常識に変わることだ。安倍政権が繰り出す旧態依然とした古い常識を否定し、マスコミが作る総意ではなく、自らの常識を信じて正しい正当性を見出すこと、それが最も魅力的なインセンティブになる。