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NSマテリアルズ、ナノ蛍光体による波長変換で高色域ディスプレイを実現

産総研の技術移転ベンチャーの「NSマテリアルズ」が「QD」といわれる量子ドット蛍光体を用いて、青色光を吸収して励起し、別の波長の赤や緑の光にすることで、コレまで難しかった高色域のディスプレイを実現した。

NSマテリアルズが開発した液晶ディスプレイの広色域化を実現する量子ドット蛍光体「QD」


左が通常のディスプレイのスペクトル、右がQDのスペクトル、QDの方がRGBの出力のバランスが取れていて、緑や赤の色成分が強化され、その分、青色成分が減っていることが分かる。人間の目は緑成分が多いので、本当は緑が一番大きく、青と赤がそれより低い山形のスペクトルが人間の目の色域のバランスから言って妥当なのだが、このデモでは、それを均一にすることで、この量子ドットがRGBの表示色域を調整できることを示している。この量子ドットはカラーフィルタを使わず、光の波長を変えることでRGBを再現するため、光取り出し効率が高い。

この量子ドット蛍光体のいいところは、色域の拡大と調整次第で有害だとされているブルーライトを減らすだけでなく、減らしたブルーライトを他の色域に割り振ることで、光のエネルギーを無駄なく活用し、消費電力を低くしながら、色域を拡大するという事が実現できる点である。このように色の再現性が高まると、何がいいかというと、より実物に近い色表現ができ、色のリアリティが増すことである。

スーパーハイビジョン(SHV)の色域規格であるBT.2020を100%以上カバーできるという。現状では79〜82%

この図を見ると、黄色の線のQDスティック(導光バックライト:導光にQDを使う)がNTSCよりも赤が濃く表現でき、緑は若干薄い感じ、青系は同じ位という感じである。面発光(ダイレクトバックライト)であるQDシート(QDを表面シートに使う)だと、より緑の再現性が高くなり、鮮やかな緑が表現できる。

QDをつかったデモ映像

左端がQDフィルム、真ん中が通常ディスプレイ、右端がQDスティック

左端のQDフィルムを使ったものが一番、森の緑を鮮やかに再現しており、その次に鮮やかなのがQDスティックを使ったもの、そして、一番緑がくすんでいるのが真ん中の通常ディスプレイとなる。

このQDはマイクロ空間化学法という化学反応を超精密に制御する合成方法で、これを使うことで、様々な波長(色)の「QD」を自在に(3nm刻みで)作り出せる。

波長を30nm幅で調整されたQDナノ蛍光体

また耐久性、信頼性が高く、それは結晶性の高さによって実現されているという。既にセットアップメーカー、フィルムメーカー、部品メーカーなどと一緒に製品開発、共同評価をやっているという。

この素材をディスプレイのフィルムや導光に用いることで高純度な色を再現できる。色の再現性が高まると、映像の立体感が高まり、リアリティが増す。CEATECで色のきれいなディスプレイを見ると、今までのディスプレイがくすんだ色しか出せていないことが分かる。これにH.265規格の30bitDeepColor映像+4Kディスプレイなどが組み合わさると、色と解像度の両面で非常に質感の高い映像が見れるだろう。

NHK技研で8Kを見たが、4Kと見た目が変わらない。むしろ、コントラストの高い4Kの方が解像感があったくらいなので、4K以降の解像感は色やコントラストの方が解像度自体よりも大事になる。そういう意味で、この色域を広げるQDには、大いに期待している。また、今問題とされているブルーライトについても有害な周波数の光を有害でない赤や緑の波長の光に変えてしまうことで、鮮やかな映像(赤や緑)にかえてしまうという点で一石二鳥という技術なのである。

これを使った4Kの液晶ディスプレイが安く出てくると、面白いと感じる。さらにHBMなどの広帯域メモリバスを活用した超高速GPUによる美しい画像で見られたらもっといい。4K以降の解像感は視差、色、コントラストが重要だと自分では思っているので、30bit以上のDeepColorで彩られたCG空間をQDを使ったブルーライトが波長変換された目に安全でありながら、省エネで色鮮やかなディスプレイで見られるのを心待ちにしている。きっとそれは、とても素晴らしいディスプレイになるだろう。