グローバル経済の基本的な欠陥は、全体を非現実的な一つの基準にまとめようとするところにある。そして、グローバル経済は、その役割を終えようとしていると言ったら、「何を言っているんだこれからはグローバルの時代だろ」と思われるかもしれない。でも、そうなるのだ。
私がこの種の現実と明らかに乖離していると見られることを言う時には、大抵多くの方に否定されるのだが、私の予測が正しいと言っておこう。というのは、それには十分な根拠があるのだ。グローバル経済がなぜ幅を利かせるのか、それは自由貿易が利益になる国、それに依存する国が多いからである。
しかし、TPPを始めとする自由貿易協定の中身の酷さを見ると、これは早晩、破綻することが目に見えている制度である。個々の国の事情を配慮しないで何の民主的正当性もないグローバル企業が国家を統治するような体制は、必ず市民の反感を買うだろうし、その歪は、必ず限界を迎える。それぞれの国の国民の不満が何らかのきっかけを境に爆発するだろう。(台湾のデモなどを見れば、もう既に爆発していると言っても過言ではないかもしれない)
また、技術の進歩により、グローバル経済の存在意義であった資源のグローバルな流通においても、大半の国の土地面積から、多収穫作物、有機廃棄物、自然エネルギーでエネルギー、資源、食料が自給できる技術が生まれつつある。シンガポールのように土地面積が少ない国では不可能だが、それ以外の大半の国では、エネルギー、食料、資源が技術の進歩で自給可能になる。
石油
・ウェットバイオマス→オーランチオキトリウム藻→石油(プラスチック)
省エネ
・自動車の電気化(石油燃料の約40%は自動車燃料に使用されている)
・断熱材
石炭
・ドライバイオマス→バイオコークス→石炭
電気
・集光型太陽光(発電効率は40%以上、レアメタルの消費量も少ない)
・風力
・バイオマス(農業廃棄物をバイオコークスへ)
・水力
省エネ
・LED(電気の15%程度は照明需要→半減または1/3になる)
・高性能断熱材(U-Vacua:20cmのウレタン断熱材相当の性能を1cm厚で実現)
安定供給
・スマートグリッド
・電気自動車のバッテリ
鉄
鉄からポリマーへ
・ナノ配向結晶ポリマー(鋼鉄より強いプラスチック)
20世紀は石油と鉄と、それらを流通させるドルを基軸とするグローバルな時代であった。しかし、それらを21世紀は電気とポリマーに置き換えることにより、国内の環境資源から自給可能な状況が生まれる。TPPやNAFTAなどの自由貿易協定における知的所有権の強化による高額な医療費、入国規制緩和による失業、労働規制緩和による低賃金、環境規制緩和による環境悪化で苦しむ個々の国々の市民の目には、新自由主義は、早晩、憎悪の対象になるであろうし、また、それがなくてもいいような技術革新がグローバル経済そのものの存在意義を否定する。技術の進歩が市民の反感を正当化する。結果として、新自由主義は、22世紀の歴史の教科書に「20世紀終盤から21世紀初頭に躍進した新自由主義は、特定の企業群による抑圧的な支配思想でしかなかった」と記されるであろう。必ず、このような傲慢なものは、歴史の中では市民の反感を買い、滅ぼされるのがセオリーなのだ。今回もそうなるであろう。言うなれば、グローバル経済は歴史に滅ぼされる。近いうちに…