SKY NOTE

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TPPを理解するには...現代のアメリカを理解するべき

TPPを理解する上で重要となるのは、90年代以降のアメリカを知っているかどうかなんだと思う。なぜなら、多くの日本人のアメリカのイメージは冷戦時の80年代のものに見えるからだ。しかし、90年代以降、共産主義というライバルが消え、資本主義が、その本質である利潤追求に対し、容赦なくなってきた冷戦後の90年代以降のアメリカを知らないと、その延長線上にあるTPPの凶悪さを理解できない。

それは、1994年に始まった北米自由貿易協定、行き過ぎた株主至上主義による厳しい雇用慣行、医療費の高騰など、様々な意味で資本の論理で市民の権利が蹂躙され、苦しむアメリカやメキシコ、韓国の人々を見ると、あんなものを日本に入れてしまってはいけないと思うのだが、日本のマスコミが報道しないが故に、デマだと思う人もいると思う。しかし、これは事実なのだ。統計データにも如実に現れていて、非常に厳しい数字が自由貿易協定によって生じている。北米自由貿易協定では、メキシコの農家2000万人の60%が貧困に喘ぎ、食えないのでアメリカに出稼ぎに行ったメキシコ人によって、アメリカ人の製造業の雇用が500万人失われた。大抵、自由貿易協定を結んだ国の失業率は実質20%を超えている。(アメリカの失業率の統計は、長期間、雇用されなかった人をカウントしていないので、それらを加えると20%を超えているという)これは、コスト削減の為に安い労働力を求め、雇用が自由に海外に流出するからだ。効率が良くなることは、いい事のように思えるが、実は、効率が良くなった分、余剰人員が生じて、沢山の失業者が生まれてしまう。それが自由貿易協定の怖いところなのだ。入国規制が緩和されて雇用が失われ、労働規制緩和で労働時間が長くなり、賃金が安くなる。つまり、労働者にとっては厳しい生活が自由貿易協定を締結すると生じるのである。自由貿易協定の中で競争原理が働くと、可能な限りコスト削減をしないと企業は生き残れないため、徹底的に人員がカットされる。

そして、そうやって得た利潤を、株主配当金として富裕層に還元するというのが、アメリカ社会の実態である。つまり、労働者の犠牲を最大化して、富裕層に還元するというのが自由貿易協定の実態であり、それは、日本にとっては非常に由々しき事態がTPPに入ると起こってしまうのである。しかも、この利潤によって景気は回復しない。というのも、富裕層は資金を自分の口座に貯めこみ、企業は利益を労働者に賃金として還元しないので、消費が落ち込み、市中に流通する通貨の量が少なくなり慢性的なデフレ経済になるのである。デフレになると競争が更に厳しくなり、帳尻を合わせるため、もっと労働者に厳しい雇用慣行が敷かれ、失業者が増え、労働時間は可能な限り長く、そして、賃金は可能な限り安くすることが企業が生き残るために必要になり、結果として、この悪循環によって大半の企業がブラック化する。既に日本はそうなっていますが、TPPに入ると、さらに、それに拍車がかかるのです。

これは、ノーベル経済学賞をとったスティグリッツ教授も述べており、彼はTPPには反対の立場で日本の景気浮揚策をこう述べている。

「円高を食い止め、製造業の輸出競争力を向上させる、サービス産業の強化、富裕層の資金を低所得の人たちに行き渡らせ格差の是正に取り組むこと」

円高はアベノミクスで是正されたが、製造業の輸出競争力は低下しており、貿易赤字は13兆円を超え、サービス産業の強化はIT化が遅れ十分ではなく、富裕層に富を偏らせるTPPは、彼の主張と逆行している。

 TPPと規制緩和を問いなおす ジョセフ.E.スティグリッツ
 http://shinsho.shueisha.co.jp/kotoba/1306tachimi/04.html#1

ノーベル経済学賞をとった高名な学者もTPPに反対なのです。つまり、これは素人の戯言ではないのです。れっきとした一流の学者の意見であり、テレビに出てくる三流経済学者よりも、はるかに彼の方が偉いわけです。この反対の意見を持つフリードマンノーベル経済学賞をとりましたが、フリードマンの言っている経済を実現した結果が、NAFTAや米韓FTAを始めとする自由貿易協定です。その自由貿易協定を結んだ国が豊かになったかというと、逆に貧しくなりました。失業率は上昇し、人々の生活は苦しくなりました。つまり、実態を見ると、スティグリッツ教授の意見が正しく、日本はアメリカの言いなりになってTPPに入るべきではないのです。

最後にスティグリッツ教授の言葉で締めましょう。

「ウォールストリートの言いなりになるな」