SKY NOTE

skymouseが思った事考えた事を記したもの

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論理性について

よく、日本人は論理的に考えることが出来ないと言われる。昔、NHKがうちに来たことがあった。その時に一般の人に取材すると「言っていることが矛盾してしまう人がいるが、あなたは矛盾がないね」と言われた事を思い出し、なぜ、自分は矛盾しないでいられるのかと考えてみると、義父の質問の仕方が影響しているのではないかと思った。どういう質問かというと、

義父:「お前はこう言うけど、それなら、お前はどうするんでぃ」
私 :「うぅ...」(きちんと答えられない)
義父:「お前は人に文句をいっているのに、それを解決できないんじゃ同じじゃねぇか」
私 :「うぐぅ...」(さらに苦しい)

要するに義父の質問の仕方は、論理的に整合性のないことを必ず突っついてくるので、そのシンプルかつ厳しい追求を想定すると、矛盾の存在が許されない。義父は、天才だったので、子供の私程度の意見に対しての返事は、文章にすると一行、言葉にするとワンフレーズで終わってしまう。要するに問題点の本質を一言にまとめて、シンプルにさらりと言ってしまう。そして、それがかなり厳しい。頭のいい人の批判は短くシャープな事が多い。

要するに厳しい批判者がいると、論理的に多少は鍛えられる。といっても、私の場合、基本程度であり、私程度の人間は、論理的に矛盾してしまう事はある。ただ、極端に矛盾したり、おかしくなるということは少ない。多分、論理的に矛盾してしまう人というのは、私の義父のような鋭い批判者がいないのだと思う。

論理的に人が鍛えられるのは、大抵「なぜ〜なのか?」という疑問を繰り返すことによって、その考え方が洗練されると思う。それと、フラットさにこだわること、これは、日本社会では敬遠される考え方だ。なぜなら、フラットさにこだわるということは、人の心情という歪曲したものを無視することにほかならない。成熟した人は、その歪曲した心情を把握しながら、フラットの論理を、そこに上手くねじ込んだり、優先順位を設定して、適当に取捨選択をして、うまくマネジメント出来るのだが、そこまで私は偉くないので、ついついフラットにハッキリ物を言ってしまう。これは、欧米社会では認められても、日本社会では認められない。日本人の論理性が低いのも、この歪曲した心情を尊重するあまり、ストレートでフラットな論理を排除しているからなんだと思う。そして、排除する過程で、矛盾する論理や、破綻している論理でも認めてしまう。

故に日本社会では、自分の頭で考えるときは、フラットな論理で矛盾なく考え、人と話すときには、その論理ではなく、それを通すために人の心情という歪曲したものに合わせる努力をしなければいけない。それは、四角い管を丸い管に接続するような面倒な作業だが、日本社会では、そう言う配慮をしないと受け入れられないことが多い。つまり、論理的には正しくても、心情的に正しくないという理由で排除されてしまう。

これは、欧米でもあるのだが、日本は特に顕著だ。欧米でもスペースシャトルチャレンジャー号の事故前に、エンジニアが、Oリングによる水素漏れの問題点を論理的に正しく指摘していたが、専門家とそうでない人間の齟齬により、爆発事故が防げなかった。優れた技術者であるが故に、一般の経営陣との対話では、その知識の格差、意識の格差が顕著であり、その結果、対話が成立せず、事故を防げなかった。

故に、フラットでストレートな論理的な考え方は、答えを見つけることは出来ても、それを人間というカーブの塊のようなものに伝えるためには、注意が必要なのだ。

その解として、チャレンジャー事故の原因究明をNASAに依頼されたファインマン博士の実験を通じたコミュニケーション手法を紹介したい。フラットな論理が否定できるのは、その論理が頭の中にあるときだけである。というのは、頭の中であれば、どうとでも改変できてしまうため、それを頭の外に出す必要がある。ファインマン博士は、事故原因の究明のための公聴会で、冷たいグラスの水の中にOリングのゴムを入れて、Oリングが冷たくなると固まって、機能を果たさないことを証明した。ファインマン博士は、実験を通じて、頭の中でフラットな論理を歪曲(改変)できない状態にして、事故原因を說明した。公聴会で固まったOリングと同じ素材のゴムを触って、多くの人が、その明解な主張に感嘆し、納得した。

エンジニアが事故前にやるべきだったのは、ファインマン博士のように、Oリングのサンプルを持ってきて、それを冷却したものを経営陣に実際に触らせて、危険であると説得することだった。しかし、彼は、言葉だけでそれを伝えようとした。その結果、状況が頭の中で展開し、改変が(歪曲)出来てしまった。結果としてチャレンジャーは爆発し、6人の宇宙飛行士の尊い命とスペースシャトルが失われた。

重要なのは、改変可能な頭の中に止めず、それを何らかの形で頭の外へ持ち出し、それを目で見たり、触ったり出来る状況を生み出し、改変不能にすることなのだ。そうすることで、フラットな論理を人に納得させることが出来る。