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日弁連、児童ポルノ禁止法改定案に反対声明「善良な社会風俗の保護が目的ではない」2013.6.13

やはり、日弁連児童ポルノ禁止法に反対声明を出した。普通、治安を守る良い法律に、法律の専門家である日弁連が反対することはないので、よほど、この法律はマズい内容だということなのだろう。

 児童ポルノ禁止法改定案に日弁連が反対声明 「善良な社会風俗の保護が目的ではない」
 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1306/14/news041.html

自民、公明、維新の3党が提出した児童ポルノ禁止法改定案に対し、日本弁護士連合会は6月13日、山岸憲司会長名で単純所持の刑罰化について

  • 改定案では捜査権の乱用を招く懸念が全く払拭できないと批判。漫画・アニメの規制も視野に入れた「調査研究」の実施を規定していることについては、同法の目的は「あくまでも実在の子どもの人権保障であって、善良な社会風俗の保護ではない」

また、日弁連は、児童ポルノの定義について

  • 「性欲を興奮させまたは刺激するもの」という主観的要件が含まれており、児童ポルノの構成要件該当性を客観的に判断できない上、広範囲かつあいまい・不明確な定義になっている

主観的な基準がダメなのは、過去の治安維持法の経験から、逮捕権の基準が、恣意的に解釈され、言論統制になる恐れがあるため、客観的に定義できないと、限度を設けられなくなり、警察の逮捕権の拡大につながり、市民の自由を権力者が制限できる恐れがあるためだ。この問題を病気に例えるとガン細胞に似ている。ガン細胞は自らが死ぬ遺伝子が壊れてしまい、無限に増殖し続けるため、他の健全な組織を破壊してしまい、最終的には死に至らせる。これと同じ事が治安維持法の時代にもあり、言論の自由が封殺され、民主主義は死に絶えた。児童ポルノ禁止法改定案にもその傾向が見られ、日弁連はその点も指摘している。

  • 3党による改定案では、処罰の対象となる単純所持を「自己の性的好奇心を満たす目的で」と限定しているが、「このような主観的な目的には曖昧さが残ることは否定できず、しかもあくまでも内心の問題なので、少なくとも捜査段階では、所持しているという客観的要件を満たせば身体が拘束されるおそれがある」
  • 取り調べの可視化が進まない現状では「密室での取調べの中で、主観的目的について無理に『自白』させられるという事態が生じるであろうことが容易に推測できる」と懸念し、「主観的要件での絞り込みは捜査権の乱用を防ぐ方法にはなり得ない」とした。

要するに曖昧な基準で人を逮捕できる。これが過去の治安維持法で問題になったことで、当時は「治安を維持する」という抽象的で曖昧な名目で1925年〜1945年までに7万人以上が逮捕された。(当時、日本併合下にあった朝鮮半島でも独立運動に対し、2万3000人が逮捕された)一見正しそうに見えるが、普通の刑法では物を盗むとか、人に傷を負わせるとか、具体的な基準を設定するのに対し、治安という、どのようにでも解釈できる抽象的な言葉で、宗教団体や、右翼活動、自由主義等、政府批判はすべて弾圧の対象となった。

 Wikipdia:治安維持法

つまり、客観的な制限のない文言を含む刑法は、主観的にいかようにでも解釈でき、市民の権利を合法的に奪える事が問題なのだ。日弁連の声明でも以下の様に述べられている。

  • 漫画・アニメなどの「調査研究」については、「表現の自由に対する重大な侵害になり得るので、このような『検討』項目を、軽々に法律に規定することは反対である」

つまり、一見、エロ漫画をターゲットにした具体的で客観的な基準があるようにみえるのだが、そのエロ漫画の設定基準が、「自己の性的好奇心を満たす目的で」という、客観的には定義できない極めて主観的な(内心にかかわる)基準なので、治安維持法の時に名目にされた「治安維持」という曖昧な基準と同様に拡大解釈される恐れがある。つまり、これは刑罰の対象が主観的で解釈が自由にできるために単純にエロ漫画に留まらない事が問題なのだ。「そんな事、政府がするわけない」という人も多分いるだろう。日本は、過去数十年に渡って平和だったから、でも、その平和を支えてきたのは、こういう主観的な基準のルールを憲法や法律家が、やってはいけない事として厳しく規制し、言論の自由や市民の権利を保護してきたからです。原発で言えば、安全装置に該当します。主観的な基準で人を罪に出来る法律は、法体系のメルトダウンをもたらします。だからこそ、日弁連は反対しているのです。さらに、この法律には、問題がまだあり

  • 改定案はネット事業者に捜査機関に協力する努力義務を盛り込んでいるが、「努力義務としつつ、実際の運用面では協力が強制されていくことが大いに懸念される。その結果、犯罪と関係ない多くの市民のプライバシー情報が捜査機関に収集される事態になりかねない」と懸念している。

これは、努力義務としつつ、実質的な検閲の強制になる可能性を言っている。市民の言論の自由を担保するためには、政府が一般市民の情報を監視するような真似ができないように憲法21条第二項で「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」とある。これは、治安維持法のときに、電話やはがきなど市民の情報を検閲し、人々の通信行為を政府が監視し、市民の自由を奪った。ウソのような話だが、当時は、それがやられていて、それがバレると特高警察がやってきて、逮捕という時代があった。特定の情報を発信すると逮捕、そういう事が、特定の情報を所有していると逮捕、しかも、その条件が曖昧となれば、児童ポルノ法改定案は、治安維持法にかなり類似している側面が多いのである。よって、これは市民の自由を侵害する可能性のあるものとして、日弁連も反対しているのである。

最後にこの種の法律を作っても、犯罪は減るどころか増える傾向にあることを犯罪白書のデータから説明する。このデータからいって、出版物や情報媒体(2D)の規制は、現実の女性(3D)への犯罪に走る人間を増やす傾向があり、逆効果である事がわかる。

児童ポルノ法可決後の性犯罪の実態

この統計は、法律が厳しくなったから検挙数が増えたからでは?という話が来ると思うが、これは、検挙数の統計ではなく、認知件数と言って、被害届が出された数なので、捕まった数ではなく、性犯罪者の増加を意味している。

  • 児童ポルノ法施行後の性犯罪の増加率(1999年基準とし2006年と比較)
  • 強姦    : 10.8%増加(2006年 203件増加:1999年比)
  • 強制わいせつ:105.8%増加(2006年 4500件増加:1999年比)
  • 公然わいせつ: 93.6%増加(2006年 1170件増加:1999年比)
  • わいせつ物 :  3.4%増加(2006年 23件増加:1999年比)

この児童ポルノ法改定案に社会的メリットは全くなく、どちらかというと、為政者の方にメリットがある法律である。為政者は自分に都合の悪い人間の逮捕が自由(主観的な基準だから解釈は自由)にできる口実を手に入れる反面、子供達は、2D媒体の規制によって増加するであろう性犯罪者の被害にあって心が傷つき、苦しむことになることが統計から予測される。