SKY NOTE

skymouseが思った事考えた事を記したもの

Pref..
Speech
STOP
Follow..
QR Code
|◀
▶|
QR
×
voice
volume
0
rate
0
pitch
0

レ・ミゼラブルと自由貿易協定

アカデミー賞を見ていて、受賞する映画がアメリカの世相を表していると感じる。というのは、レ・ミゼラブルリンカーンレ・ミゼラブルは、貧困により、パンを盗んだ男が改心して、市長にまでなった。しかし、元犯罪者の素性を隠していたため、ジャベールという腕利きの刑事に追われながらも、引き取った娘、コゼットを育て、愛し、死んでいくという物語。この物語がヒットするというのは、貧困の苦しさ、その苦しみの中で優しく強く生きるという。幸せな世界ではヒットしない本、つまり、そういう作品が共感を呼ぶということは、今のアメリカの民衆が経済的に苦しいことの現れである。そして、もうひとつはリンカーン、「人民の人民による人民のための政治」という演説と奴隷解放をした有名な大統領、リンカーンがヒットするのは、今のアメリカに民主主義が失われていることの現れである。

喉が渇いた時、水がおいしいように、レ・ミゼラブルリンカーンがヒットしているのは、その作品で描かれている正義や民主主義が今のアメリカに欠乏しているからこそ、そういった作品がヒットする。それが十分にあれば、当たり前の作品として面白くもなんともないが、それがないからこそ、人々は感動するのだ。そこで、なぜ、タイトルに自由貿易があるのか、それは、現在の自由貿易協定が、経済を中心とした弱肉強食の無法社会を目指しているからである。それはまるで、北斗の拳の世界の経済版といっても良い。経済的な強者が、貧しい人々を「彼等の自由」の名の元に蹂躙するのが、現在の自由貿易協定の正体である。そういう意味で無法なのである。弱者には一切配慮しないでいい自由、それが自由貿易協定の「自由」なのだ。

つまり、レ・ミゼラブルリンカーンがヒットした要因は、アメリカの自由貿易協定が、いかにアメリカ国民を痛めつけているかの証拠なのである。アメリカ最大の労働組合はTPPやNAFTAを始めとする自由貿易協定に対し「我々は底辺への競争を強いられている」と共同声明で苦言を呈している。なぜならば、自由の名の元に賃金が途上国並みに引き下げられ、環境規制は緩くなり、所得や環境は低い方に合わせられる「底辺」の競争を強いられていると言っているのだ。一般庶民は、企業の利益のために自由に賃金を下げられ、自由に環境を破壊されてしまうというのが、自由貿易協定の実態なのだ。同じ自由でも全く違う自由なのである。それによって、アカデミー賞に受賞する映画が、リンカーンレ・ミゼラブル、この時点で私はアメリカ、かなりヤバイと感じた。TPPに日本が入ったら、恐らく、どんな作品がヒットするか、恐らくフランス文学だろう。このつぎにヒットするのは岩窟王(復讐劇)あたりだろうか。