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東北大、レアアースの要らないEV用の大出力モーターを開発

東北大学レアアース磁石を一切用いない、レアアース磁石並みのトルクを実現したアキシャルギャップ型スイッチトリラクタンスモータを開発したことを発表した
 
 東北大、EVに適用可能なレベルのレアアース不使用大出力トルクモータを開発
 http://news.mynavi.jp/news/2012/12/04/055/index.html?rt=top
  
  東北大学のプレスリリース本文のPDFから抜粋

この開発成果は、東北大大学院工学研究科の一ノ倉理 教授、中村健二 准教授。後藤博樹 助教の研究チームと日立製作所日立研究所共同研究によるもの。

 東北大学:磁石レスで大出力トルクのモータ開発に成功〜(プレスリリース本文.pdf)
 http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2012/12/press20121203-01.html

このモーターは、磁石を用いないスイッチトリラクタンスモータ(SRモータ)というもので、構造は、固定子が鉄心と巻線、回転子は鉄心のみという単純な構造の磁石レスモータで、頑丈で高温に強いという特長を持つが、同じサイズのレアアース磁石を用いたモーターに比べるとトルクが小さいという欠点があった。

 Wikiipedia:リラクタンスモータ
 SRモーター:Switched reluctance motor

研究グループは、この問題をラジアルギャップ型からダブルロータタイプのアキシャルギャップ型に変更した。(リンクの図を見ると、モーターのコイルが軸方向に二重構造になっている)
 
 東北大学のプレスリリース本文のPDFから抜粋

また、高価な鉄-コバルトを使わず通常のモータ鉄心材料であるケイ素鋼板を利用することでコストの削減を試みた。その結果、通常のラジアルギャップ型SRモータの約1.5倍のトルク密度(39.6N・m/L)を実現できた。これにより、レアアースモーターのトルク密度(35〜45N・m/L@20A/mm2)と同等レベルになり、モーター構造の改良によって、レアアースを使わなくても同程度のトルクが実現できる可能性を示すものとなった。

トルク密度
 従来の技術
  レアアースあり:35〜45N・m/L@20A/mm2
  レアアースなし:26.4N・m/L@20A/mm2(約1.5倍を割った数字)
 今回の開発成果
  レアアースなし:39.6N・m/L
   方式:磁石を使わないスイッチトリラクタンスモータ(SRモータ)
   構造:ダブルロータタイプのアキシャルギャップ型
   素材:低コストなケイ素鋼板を使用

 アキシャルギャップSRモーター(トルク密度)
 
 東北大学のプレスリリース本文のPDFから抜粋

これにより、レアアースを使わないモーターで同等水準のトルク性能を持つ電気自動車が作れる可能性が示された。今後は、このモーターをインホイールダイレクトドライブモーターとして、電気バスに使用し、実走行試験などを通じて、実用化に向けた検討をさらに進めていく予定。それによって得られた知見を通じて、最適形状や最適設計法の確立を図ることで、レアアース磁石モータの性能を超える磁石レスモータの実現も夢ではないと考えられるとしている。

このモーターの登場は何を意味するかというと、レアアースを使わない低価格なモーターで十分なトルク性能を持つ電気自動車用のモーターが出来るという事が示され、それは、電気自動車レアアースの供給に支配されず、安定的に量産できることを意味する。そして、それは、石油の大量消費時代の終わりの始まりを意味する。日本の石油消費量の40%は自動車用燃料であり、船舶や農業機械の動力を加えると、その比率は50%を超える。これが電気モーターになると、何が違うのかというと、動力変換効率の大幅な改善が望める。

動力変換効率
 ガソリンエンジン :16%〜26%(動作状況により変動:出典変換効率のお話
 ディーゼルエンジン:40%
 電気モーター   :90%

これにより、動力変換効率が2〜3倍になる事がわかる。バッテリー技術の進歩が必要だが、それに対しては、車の車体の素材を高強度プラスチック(:広島大学が開発した低コストな高強度プラスチック:NOC)に変更すれば、ガソリンエンジンに比べて、必要エネルギー量は1/4〜1/6になり、高価な電池の大幅な削減が可能だ。これにより、大幅なコストダウンが可能となる。つまり、あとは、こういう研究成果を実用レベルのものに組み立てる作業に移る事になる。高効率のモーター、電源、バッテリー、日本の技術の総力を結集すれば、石油の消費量を大幅に削減し、その上で自然エネルギーに転換すれば、エネルギーの輸入依存度を大幅に下げることが出来る。今回の発表は、そのひとつのピースがまた揃ったといえる。