SKY NOTE

skymouseが思った事考えた事を記したもの

脱原発は可能か? 統計で分析してみた ver 1.2

NHKスペシャルの「日本再生」という番組で、原発がなくても日本は大丈夫かと言う趣旨の番組を見たが、日本の発電設備の発電容量という基本的な事が全く説明されていないのは、数字を示さず議論すると言う日本のテレビ番組の特殊性だと感じた。衛星放送でBBCなどの海外番組を見ると、必ず、客観的にズバリ比較が出来る数値が出てくるのに、日本では数字のない主観のぶつかり合いの討論になってしまう。そこで数字をベースにきちんと客観的に議論できるようにデータを用意した。8月13日のこのブログのページでも同様の事を書いたのだが、2012年稼働予定の発電機の指摘があり、その指摘にそって修正(東京電力の予備率4%→8%など)したものと、8月12日以後変わった数値(東京のピーク)や、再検討したところ、変更が必要な数値(年間のピーク:60時間→132時間:年比率1.5%)などを改めたものを以下に提示する。

 namiさんご指摘ありがとうございます。おかげでより正確なデータとなりました。
 http://d.hatena.ne.jp/skymouse/20110813/1313178776#c

結論から言うと、脱原発は出来ないことはないという感じだ。では、まず、送電網の説明からしなくてはいけない。この脱原発は、各電力会社で電力を融通することで可能となるため、どのように融通できるのか図を作ってみた。ちなみにこの六角形の面積はピーク電力に比例している。

画像をクリックすると拡大します。
送電網が融通できる電力に限りがある。例えば北海道は60万キロワットが融通の上限であり、東京電力中部電力から最大120万キロワットしか融通できない。そういう制約を考慮しつつ、電力構成を考えてある。記事の中に頻繁にJ-Power(電源開発)という電力卸売業者が出てくるが、この会社は通常の電力会社と違って、電力会社に電力を売る会社であり、東北電力の規模に匹敵する規模の発電設備を全国に分散して所有している。脱原発は、このJ-Powerの発電設備&送電設備をフルに活用することで可能となっている。調べてみると、原発が止まったときのことを考えて、まるで測ったかのようにちょうどいいバランスで配置されていた。(電源開発の経営陣は、もしかしたら、この事態を想定していたのかもしれない)重要なのはピーク電力であり、猛暑日が去年は12日間あって、その内の最大ピーク時間帯の11時間(朝9:00~20:00)、つまり、年間132時間程度の問題であり、要はそれを上手くクリアすれば脱原発は可能になるというわけだ。たった年間132時間のために、原発のリスクを背負うよりも、その132時間を上手く切り抜けて脱原発をしたほうが賢いと思う。
 
ではまず、北海道電力から始めます。

1.北海道電力
北海道は冬5%の節電で脱原発は可能

Wikipedia:北海道電力
北海道電力は、ピークが生じるのが、夏ではなく冬の1月であるため、基本的にこの夏は電力不足にはならないし、東北電力の融通も受けやすい。直近では、今年の1月12日に579万キロワットのピークを記録した。それに対し、泊原発を停止すると、供給電力は532万キロワットとなり、47万キロワット足りなくなる。そこで5%の節電(29万kW)をし最大需要を550万kWに抑え、東北電力からの電力60万キロワット融通してもらうことで、予備率7%程度(8%程度が理想)で脱原発が可能となることが分かる。融通する東北電力の電気が足りなくなる様なことはない。東京電力の冬場の潤沢な予備電源が使えるので大丈夫である。北海道電力の電力不足は、夏場ではなく冬場なので5%節電すれば、泊原発を止めても大丈夫である。(3月に東京で停電が起きたのは、火力発電が地震によって整備点検が必要になったためであり、それがなければ、冬場は電力は潤沢にある)
 
2.東北電力今年並の節電をすれば、来年も脱原発できる。

Wikipedia:東北電力
東北電力は、既に原発はすべて停止しており、既に脱原発しているといってもよい。2011年の8月9日に記録した1249万キロワットの需要に対し、適切であるとされる8%の予備率を加算した1358万キロワットを満たそうとすると、113万キロワット足りなくなる。しかし、2012年には、新仙台火力95万kW、仙台火力45万kW、相馬火力発電所100万kWが復旧予定なので、電力不足は解消される。しかも余剰電力が152万kWもあり、関西電力に120万kW融通できる余裕まである。今年、東京電力から融通を受けたのは、原発が稼働している東京電力の余剰電力を使ってJ-Powerの揚水発電設備を使ったほうが結果的に安かったからであるが、来年になると、必要ないばかりか、他の電力会社に融通できるほどの出力が戻る。

 東北電力:復旧予定.pdf
 東北電力:相馬火力発電所復旧予定(東京電力と共同出資200万kW)
 
3.東京電力
今年度並に節電し(4936万キロワット以内に抑え)予備率を8%にすれば脱原発は可能

Wikipedia:東京電力
今年の東京電力の最大供給能力は5680万キロワットだが、それに対し、2011年8月27日現在までの最大ピークは、2011年8月18日の4936万キロワットであり、それに8%の余裕度をかけると、5365万キロワットとなる。315万キロワット余っている。しかし、2012年に脱原発をすると、原発分(481万キロワット:東京電力381万キロワット+日本原子力発電100万キロワット)がなくなり、J-Powerから調達している揚水発電分を200万キロワット減らし、300万キロワットとする。(原発がないから夜間の余剰電力が少なく水が汲み上げられない)すると、供給電力量は、581万キロワット減り5099万キロワットとなるが、2012年には、停止している横須賀火力発電所を再稼働させて、ガスタービンと合わせて260万キロワット、被災した相馬火力100万kWも復旧し、5389万キロワット供給可能となり、2011年の最大ピーク4936万kWに適切であるとされる8%予備力を加算した5365万キロワットを賄う事が可能だ。つまり、今年並の節電をすれば、脱原発は十分可能である。2013年以降は、さらに160万キロワットの新しい火力発電所が稼働する予定
 
4.中部電力
既に脱原発をしている中部電力

Wikipedia:中部電力
浜岡原発が止まったことで既に脱原発をしている中部地方、強力な火力発電所があるために、原発がなくても電気は余っている。今年度並か、それ以上に節電をし、電力の足りない大阪電力や中国電力を供給してほしい。198万キロワットの余剰分を、152万キロワットは関西電力へ、46万キロワットは、中国電力に融通する。脱原発が出来ている上に他の地域に電力を配る余力すらある中部電力。ただ、その余裕ゆえか、外の地域に比べて、対前年度比の節電率が-4.85%と低い。もっと節電をして、他の電力の足りない地域に電気を配って欲しい。

5.北陸電力
脱原発は既にしており、整備すれば、余裕が生じる北陸電力

Wikipedia:北陸電力
最大需要が533万キロワットで、今年の最大供給量は583万キロワットだが、発電設備を見ると、もっと発電できることが分かる。地震が起きたとき、整備が終わってない発電所がまだあるようなので、その整備を来年の夏までに終わらせれば、供給電力は630万キロワットとなり、予備率を8%とすれば、関西電力に51万キロワット融通できる。

6.関西電力
最も厳しい関西電力、しかし、周囲の助けを借りれば脱原発は可能

Wikipedia:関西電力
脱原発が全国で最も困難なのが関西電力、2011年の最大需要2785万キロワットに対し、原発がなくなると、460万キロワットなくなるが、同時に古い火力発電所を復活させるので、240万キロワット プラスとなり、脱原発で220万キロワットが減る計算になる。2785万キロワットの予備率を8%とすると、3008万キロワットが供給電力となるが、334万キロワット足りない。それをJ-Powerから132万キロワット、中部電力から152万キロワット、北陸電力から51万キロワット、東北電力から120万キロワット調達することで脱原発は可能となる。関西電力は、2012年の夏までに古い火力発電所を稼働できるように整備し、中部、北陸、J-Power、東北電力との供給契約を結ぶ事が必要だ。それが出来れば脱原発は可能だ。
 
7.中国電力
節電をし、J-Powerの助けを借りて、三隅発電所をきちんと整備すれば脱原発は可能

Wikipedia:中国電力
現在、82万キロワット供給している島根原子力発電所が止まると、供給電力が989万キロワットとなり、今年の最大ピーク1083万キロワットに足りなくなる。予備率を8%とすると必要な供給電力は1177万キロワットなり、トータルで188万キロワット足りない。そこでJ-Powerから142万キロワット、中部電力から46万キロワット融通してもらう事で、なんとか脱原発が可能だ。心配なのが三隅火力発電所(100万キロワット)で頻繁に故障しているので、ピーク時の132時間の間は確実に動くように、来年の夏までに故障しないようにきちんと整備をすれば、脱原発は可能だ。

8.四国電力
伊方原発を停止すれば足りなくなるが、J-Powerから電気を買えば脱原発できる。

Wikipedia:四国電力
伊方原発を停止すると供給電力が607万キロワットが493.8万キロワットになり、今年の最大ピーク544万キロワットに足りなくなるが、J-Powerから100万キロワット調達すれば、予備率8%の591万キロワットが確保できる。重要なのはピークの132時間なので、このときだけ調達すればよいのだ。

9.九州電力
J-Powerから300万キロワット調達すれば、原発の穴を埋めることが出来、脱原発できる

Wikipedia:九州電力
今年の最大ピーク1533万キロワットに、予備率8%をかけると、1666万キロワットとなるが、原発がないと1385万キロワットしかなく、281万キロワット足りなくなる。しかし、J-Powerから300万キロワット調達すれば、その穴を埋めることが出来る。よって、九州電力脱原発は可能だ。

10.J-Power(電源開発株式会社)の設備の内訳
脱原発を支える縁の下の力持ち、J-Power

Wikipedia:電源開発
電源開発の発電設備の内訳、日本全国の発電所が点在しており、そこで最も近くて最適な組み合わせの電力構成を検討した結果、以上の図のようになった。J-Powerの設備をフルに活用すると脱原発は今すぐ可能である。

まとめ
調べた結果、脱原発は北海道をのぞく殆どの地域で適切得あるとされる予備率8パーセントを確保した状態で、脱原発は今すぐ可能である。予備率が若干少なくなるが、は、そこは省エネを進めたり、自然エネルギーを普及させれば、上げることは可能だ。

注:北海道に融通できる電力は60万kWまでなので、この図を見ると、脱原発をすると予備率が3パーセント以下になってしまうが、北海道の今年の1月のピークの数値は、節電も何もしていない数値であるため、北海道が5%節電をして、東北電力または、東京電力から60万kW融通を受ければ、7%の予備率を確保した形で脱原発は出来る。

マスコミは、今すぐ脱原発は出来ない、夢想だといっているが、彼らが一度でも私のようにそろばんを弾いてきちんと説明したことがあっただろうか?ないだろう。よく電力がない、不安だとわめいているテレビを見ると、それが一体どれくらい足りないのかということが知りたくなるが、そういうことは全然、報道されない。私の死んだ義父ならば、「そんなもん、調べて計算すれば分かるじゃねぇか、おまえは足し算もできねぇのか?」と言っただろう。というわけで、疑問に思えば、不安だとわめく前に、きちんと調べるというきわめてオーソドックスな事をしてみました。こういう普通のことをしないで、ただ不安だ、不安だとわめくのは、非常におかしいわけです。そのおかしさが今の日本の問題点であります。日本は、当たり前のこともまともにできない癒着大国なのです。

電力が足りていることは分かったので、次に必要なのは、より安定し、そして、安全で長期的に利用できるエネルギーです。そこで提案するのが以下の政策です。

0.産業用や業務用の使えば使うほど安くなる料金制度を改める

  • 産業用や業務用の電力料金は、家庭用電力料金と違って、使えば使うほど割安になる電力料金制度になっている。この料金制度を家庭と同じように節約するほど安くなる制度に改める。またピーク時間帯の料金を割高にし、それ以外の時間帯を割安にする新しい料金体系を整備するべき。

1.グリーンローン

  • 二酸化炭素を減らす自然エネルギー設備に対し、20年間無利子で融資する制度です。原資は石油税3兆円です。使いもしない道路に使うよりも、放射能二酸化炭素の心配もない安全なエネルギーに使うべきです。3兆円を原資にして以下のものに融資をします。金利ゼロなので、利益が出れば元手ゼロで自然エネルギーでビジネスが出来るというわけです。
  • 集光型太陽光発電:7500億円(年間75億kwh 20年後に1500億kwh:5円/kwh)
  • 風力発電    :8400億円(年間35億kwh:12円/kwh)
  • 断熱ガラス   :8000億円(40万円×200万世帯)
  • バイオ石油   :6100億円 

2.環境債(5年間 金利1%)を原資にしたエコ家電、エコカー1%ローン

  • 環境債という新しい債券を発行し、それを原資に、車だったら150万円(5年間)、家電製品ならば10万円(3年間)まで、融資が可能で冷蔵庫や低燃費車を1%の低利で購入できる政策です。銀行の金利が1%未満の時にお金のある人は、環境債を買うメリットはあるでしょうし、借りる人は1%の低利でエコ家電やエコカーを購入できるのです。

3.全国の図書館にワットチェッカー

  • 全国にある2800箇所程度ある図書館に3800円程度のワットチェッカーが本と同じように借りれるようにするべきです。ワットチェッカーを使う人が増えると、メーカーは電力消費量に嘘がつけなくなるので、虚偽記載が出来なくなり、本当に省エネの製品を作るようになります。また、電力消費が見える化することで、節電意識を向上させる効果があります。図書館につき30台の3800円程度のワットチェッカーを配備すると予算は3億1920万円となります。たった3.2億円程度で日本全国の節電意識が高められるとしたら、安いと思いませんか?