SKY NOTE

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成果主義を導入して「2番」になったソニー

2000年に本格的にソニー成果主義を導入して、はや10年、成果主義の結果を総括してみたいと思う。最近、ソニーWiiのモーションコントローラーを真似たようなものを10月21日に販売するそうだ。
 
 SCEJ、PS3用「PlayStation Moveモーションコントローラ」
 対応ソフトを同梱した数量限定パックを10月21日に発売
 http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20100706_378857.html
Wiiのモーションコントローラーが出る前から実は、ソニーはこの種のコントローラーを検討していた。PlayStation2の頃だったと思う。だから、ソニーは開発が遅れたと言うよりも、社内で、これは売れるかどうか検討中に、売れないと判断されて、切り捨てられた。その結果、任天堂に水を空けられた。ちなみにトヨタ任天堂成果主義を導入していない。
 
良く考えてみよう。成果主義を導入しなかった任天堂トヨタは今でも世界的に優良なメーカーだが、その間のソニーの凋落ぶりは、推して知るべしと言うべきか...携帯音楽プレーヤーでは、AppleiPodに負け、ゲーム機では任天堂Wiiに負けた。ソニーは新しいものが作れないのではない。現にWiiのようなコントローラーをWiiが出る以前から研究していた。しかし、「新しいものを評価できなかった」のだ。
 
成果主義という評価制度の悪いところは、成果を予測するところにあると思う。新しいものは大抵予測できない。新しいからこそ前例がないから予測なんて最初から出来ないのだ。だから、これが新しいという直感を信じるしかない。しかし、成果主義では、そういう直感よりも、「成果が予想しやすいもの」つまり保守的なものが選ばれる。現にPlayStation 3の標準コントローラーは、PlayStation 2のコントローラーのデザインを踏襲したものになった。新しいコンセプトは入らず、それまでに発展した技術を積み上げるのみにとどまった。

成果主義を導入する前、ソニーの創業者、井深大氏が病院の床でソニー成果主義を導入すると聞いた時、「ソニーソニーではなくなってしまう」と言ったのだという。
 
これは、成果主義を導入すると新しいものを肯定する直感を正当化できない事が、井深氏には分かっていたからだ。そして、それが分かっていなかったのが、出井 伸之氏だった。彼は、アメリカ型経営にSONYの活路があると信じ、SONY成果主義を導入したが、結果は、ウォークマンプレイステーションの敗北という惨憺たるものだった。彼は新しいものを選定する事に失敗し、新しいとされていたものに飛びついたに過ぎない。それがどういう性質のものなのか、良く理解する事なく、SONYを誤った方向に導いてしまった。
 
つまり、出井氏はAppleのCEOのジョブスや任天堂の社長の岩田聡氏に劣っていたと言えるだろう。能力的に劣っていたのは、先見性と、物事の本質を見抜く力だ。問題の特性を考えるのではなく、GEのような既に成功しているものを手本にして何かをやろうとした事が問題だった。つまり、その発想そのものが二番手の発想なのだ。トップを狙う人間の発想ではない。彼の「二番手思想」からは、成果主義のようなものは、とても合理的に映ったのだろうが、実際は、SONYを一番から二番に格下げしただけだった。
 
成果主義の保守的特性に早くから気づいていた井深氏は、さすがSONYの創業者だと思う。だが、彼の生み出した会社の経営陣は、その先見性を継承できなかったようだ。それがSONYの不幸だ。私のいた中学校に、昔、SONYの人が来て、講演をした。テープレコーダーを作った時には、当時は誰も買ってくれなかったが学校が買ってくれた。だから、今、ここで皆さんに恩返しと思って、講演していると言った時、SONYにもマイナーな時代があったんだなと思った。そして、私のいた中学校のモットーである「開拓精神(フロンティアスピリッツ)」は、私たちの考え方と同じですと言った時、胸が熱くなる思いだった。しかし、そのSONYが今、恥ずかしげもなく、他社のまね事をして新しいと言っているのを見ていると、昔のSONYは見る影もないなと半ば白い目でSONYを見つめる私がある。SONYは変わってしまった…そして、そのSONYに追随して、成果主義を導入した結果、日本も変わってしまった。ルールや制度を作って問題を解決しようと言う輩が増えて、創造すると言う事をしなくなった奴に未来はない。
 
未来は自分達で作るものであって、システムが作ってくれるものではない。重要なのは、何が価値があるものなのか理解する事。成果主義は、その価値の保守化を促し、ソニーを1番のメーカーから、成果の予想しやすいトップの猿真似をする2番のメーカーに押し下げた。