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高級鉄を電炉で作る時代が来た(東京製鉄、愛知新工場が一部稼働)

東京製鉄、愛知新工場が一部稼働 自動車分野への参入目指す
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20091124AT1D2404E24112009.html
 東京製鉄田原工場(同社のホームページから抜粋)
 

今日は、製鉄の時代の変革の始まりかもしれない。ついにスクラップ鉄から高級鉄を作る工場が稼働する段階に来た。通常、高級鉄といわれる硬い鉄は、石炭を燃やして作る高炉方式が必要だった。しかし、電炉で作れるとなると何がいいのかというと、電気と屑鉄(スクラップ鉄)さえあれば、高級鉄が作れるという事が重要なのだ。生産能力は250万トン、日本の鉄の全生産量の1臆1000万トン(2004年)の2.27%だ。
 
この電炉のメリット 

1.電気で作れる高級鉄(二酸化炭素ゼロor1/4で作れる高級鉄)


2.鉄スクラップ(屑鉄)で作れる高級鉄(自給出来る高級鉄)

  • 今までは、鉄スクラップから出来る鉄は柔らかい低級鉄だった。しかし、高級鉄も作れるとなれば、事実上殆どの鉄製品がリサイクル品に出来ると言うわけだ。日本のスクラップ鉄の規模は3440万トン(2005年)である。鉄全体のシェアでいうと31%である。しかし、自国で消費している鉄は全体の2/3程度、1/3は輸出用だった。そこから計算すると、約7000万トンが、この国で消費されている鉄である。しかし、その内、国内で消費した鉄の半分が輸出製品に回されるので、実質的には3500万トン程度が、この国の純粋な鉄需要である。人口が減る事(推定11.6%減少:2030年)も考えると、新規の鉄の需要が減ってくる上に、バイオナノファイバーなどの新素材が、鉄の需要を侵食してくる事も考慮に入れると、2030年の日本国内の鉄の実質的な消費量は3000万トンを切るところまで下がって行くと予想する。つまり、高級鉄が屑鉄から出来るという事は、日本国内で日本国民が使う鉄を完全に自給出来るという事を意味する。(輸出される鉄(33%)、国内で輸出製品に使われる鉄(33%)を省くとそうなる)

 
今まで輸入してきた鉄(12億トン)から生じるスクラップ鉄(屑鉄)が増える傾向にある事と、新興国の旺盛な需要により鉄鉱石や石炭の価格の高騰が予想される為、スクラップ鉄のコストメリットがますます高まる。現在でも通常の高級鉄(車用の高級鉄)に比べて20%安いという話だ。資源価格の高騰、温暖化対策、資源自給の観点から総合的に見ると、これからの高級鉄(全体の7割を占める鉄)は鉄スクラップ(屑鉄)を資源とした電炉で作る時代が来ると考える。今日はその始まりなのだ。スクラップ鉄は安くて自給出来る鉄なのだ。
 
 スクラップ鉄(屑鉄)の量(3440万トン:2005年/鉄備蓄量12億トン)
 http://www.jisri.or.jp/recycle/recycle01_01.html
 
 電炉・鉄スクラップ業界の課題と展望/鉄鋼・座談会 <下>
 (鉄の需要構造が説明されている)
 http://www.japanmetal.com/scrap/scrap_a23.html
 
つまり、2009年11月27日は、二酸化炭素を出さず、自給出来る高級鉄の生産が本格的に始まった日なのである。あと20年もすれば鉄の生産状況は大きく様変わりする事だろう。つまり、日本国民が使う鉄の100%が自給出来る体制が整えられると言うわけだ。この事は高齢化によって、さらに厳しい国際競争を強いられる日本にとっては朗報である。国際競争(不毛なコスト競争)の事を考えて低コストな労働力として移民を受け入れる事などしなくていいのだ。移民はどこの国へ行っても問題になっている。だから、するべきではない。移民賛成派は、移民に手を焼いている他国の状況を理解していないから、そういう事が言えるのだ。ある意味、移民と言うのは二級市民を作るという事だ。労働市場で派遣労働という二級労働者を生み出したように、今度は移民によって同じ事をしようとするのは愚の骨頂である。そのことが間違いであると今日のニュースはまざまざと教えてくれる。こういった自給可能な選択肢があれば、別に二級市民とか、二級労働者など必要なく、この国はやっていけるのだ。今日示された技術は、明日の日本を支える大きな柱となるだろう。エネルギー、資源、食糧を自給出来れば、事実上国民が食っていくのに困る事はない。鉄という素材を上手にリサイクル出来る技術は、エネルギーや資源の自給に繋がり、結果として、外国(外貨:ドル)に依存する状況を軽減し、その結果、もし、この国が財政破綻をしてデフォルト(債務履行)を起こし、円が急落しても、外国から何も買う必要がなければ、国民の生活が困窮する事はないのだ。自給率向上とはそういう強さを持つ事が出来るのだ。2009年11月27日は、その自給に欠かせない技術を用いた工場が実際に稼働した日と言える。
 
鉄は電炉で作ればいいのだ。そして、自給出来る時代へ向かう。そういう意味で2009年11月27日は記念するべき日だ。