SKY NOTE

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「我慢」と「経験」から、「おもいやり」と「分析」の時代へ

9月3日のルビコンの決断という番組で農業サラリーマンという話が面白かった。

この話では、農業を企業化しようと奮闘する経営者の視点で書かれている。
 
1.不満が続出する農業(思いやりが生むブレークスルー)

  • ある若者が正社員として就職できるという事で来た。その青年はサーフィンも出来て、正社員で働けるのならば、地方もいいかなという動機だった。しかし、仕事は朝早くから夜遅く、休日もなしという過重労働に辞めるものが続出した。普通はこういう職場では「我慢、我慢」という事が叫ばれるのだが、この経営者は違った。「若者が仕事ばかりで休みもなし、これでは駄目だ」と考え、なんとかしなければと考える様になった。

 
2.加工に活路を見いだす

  • 農業が、このような過重労働になってしまうのは、理由があった。天候に左右される農業で安定した収益を得る為には、農作物を多様化して、リスクを分散する必要がある。しかし、それだと手間のかかる農作物の場合、朝早くに出荷する為に二時起きだとかになってしまう。そこで、この経営者は、比較的手間のかからない作物に絞り込み、日曜祝日を休みとし、残業時間はなしという事にした。それと同時に高収益を生み出す為に農作物を加工し、収益面のリスクを別の形で解決した。つまり、農作物の多様化の代わりに、加工によって収益を確保したのだ。

 
3.台風で振り出しに戻る(分析が生むブレークスルー)

  • しかし、このように巧くいきかけた経営にも新たな問題が立ちふさがる。台風で人参が全滅してしまったのだ。若者達は、「農業ってむなしいな、努力しても天気次第で駄目になってしまう」この様子を見て、これではいけないと考えているとき、この台風でも全滅しなかった人参を作っている老人がいた。この経営者は、この老人に張り付き、その方法を教えてもらう。やっと聞き出したのは、土の堅さと、土の甘さだった。しかし、話を聞く途中で老人はなくなってしまう。残ったのは、老人の畑の土だけだった。

 
4.巧みの技をITで分析

  • そこで良い人参を作る為に、若者達に土の甘さと柔らかさを伝えるが、そういう曖昧な感覚(どの程度甘ければいいのか、どの程度柔らかければいいのか)を伝えるのは難しかった。そんな中、事件が起きる。農業のやり方を教えてくれないと言って若者同士が喧嘩をしていたのだ。

 

  • 「こいつ、全然教えてくれない!」
  • 「農業ってのは、経験と苦労の賜物なんだ」「言葉で教えられるものじゃないんだ」

 

  • これを見た経営者は、今までの農業は、経験と勘の蓄積によるものだった。しかし、それでは、あの人参畑の老人のノウハウを若者達に継承できない。そう悩んでいたとき、農業情報をITで分析するという会社の社員に出会った。この事によって、土の甘さや柔らかさを客観的な数値に変換し、そのデータを元に農業を行える様にした所、台風に負けない人参を作る事が出来た。

 
まとめ
1.我慢→おもいやり:安易に社員に我慢を要求しない

  • この農業法人の社長の優れた所は、社員の不満をきちんと聞き、それに解答していく経営者としての、ひたむきさだ。単に不可能だから我慢しろと強要するのではなく、別の視点から解決策を見いだし、過重労働に対する社員の不満を解消する。つまり、安易に社員に我慢を要求せず、社員の為に必死になって頭を動かし、加工に踏み出すという決断をしている。こうする事で辞めていく社員を引き止める事に成功した。グローバル経済だと言って社員に我慢を強いるアメリカ型経営者には爪のあかを煎じて飲まさせたいところだ。

 
2.勘と経験→分析:能力の継承をその分析によって達成する

  • 今まで、勘と経験に頼っていた事を、数値的なデータに転換して匠の技を再現するという戦略に打って出た所は称賛に値する。これによって誰にでも匠の技が継承できる様になった。

3.我慢ではなく思いやり、経験を分析する事で継承

  • 私がこの経営者を賞賛するのは、単に我慢を強いるやり方だと、皆が不幸になってしまうという事をよく理解している事だ。言うのは簡単だが、これはなかなか出来る事ではない。しかし、この経営者は「こうあるべき」というラインがしっかり頭の中ににあって、それを貫いた所が素晴らしい。こういう経営者の元だと多分、社員の士気も高く、優秀な社員が育つだろう。この経営者の思慮の深さを見たとき、私はソニーの初代社長、井深大を思い出す。彼もまた社員の創造力を生かす為に奔走した経営者だった。トリニトロン管を開発しているときに銀行に嘘を言ってまで開発費を捻出したところは、体を張って社員の意欲に答えようとする所で共通している。我慢ではなく思慮深く部下の不満に対応する姿は素晴らしい。さらに単なるおもいやりではなく、そこに実質的な代替案も用意している。加工食品に乗り出す事で安定的な利益を確保した。さらにそれでも、台風などによって全滅するなどの深刻な問題に対しても、匠の技を見つけ、それをデータ化して継承する所などは非常に面白い。常に変化に対して我慢や忍耐ではなく、合理的で思いやりのある決断をしている所が素晴らしいのだ。

 

  • 合理を思いやりを実践する手段として活用している所が人間的で素晴らしい。

 
私が思いやりを重視するのは、私の発想も出発点は常に思いやりからであり、そこから分析的発想が生まれる事を知っているからである。ここに単に我慢を持ってきてしまうと、我慢すればいいという事で思考停止に陥ってしまう。そういう思考停止が結果として人に無理を強いて不幸にしてしまうという事を骨身にしみて知っているから、この経営者には共感するものが多かった。
 
思いやりが問題意識を生み、その問題意識が分析的思考を生む。もし、ここに我慢を持って来ると、その時点で問題意識は生まれず、従って分析もされず、その結果答えも出ないで状況に流されるだけという事になってしまう。状況に立ち向かいあらがう為には、実は思いやりが大切なのだ。そこから物事の出発点が生じ、ブレークスルーがその結果として生まれるのだ。思考停止をしない為には、思いやりという高い目標を持たなければいけないのだ。
 
我慢という名の思考停止、我慢を超える合理性、その合理性の出発点は思いやりという高い目標、目標があるから前進があるという事を体現した経営者だと思う。合理を金の為に実践し、人を切り捨てる経営者とは次元が違う。