慶應義塾大学の安藤和也准教授らが銅を自然酸化するだけで、プラチナを越えるスピン軌道トルクが生み出せる事を発見した。
従来、スピン軌道トルクの生成は、プラチナやパラジウムが必須とされていたが、それが自然酸化した銅でそれ以上のスピン軌道トルクの生成効率が10%を超えるなど、極めて大きくなることが分かった。(10%というのは、大きい数字らしい)
スピン軌道トルクとは、MRAMなどに使われている現象、それによって磁化反転する事で情報を記録する。電源がなくても情報を保持し続ける事が出来、高速に読み書きが出来るので次世代メモリの有力候補とされている。従来は、それに必要なスピン軌道トルクを生み出す素材に、プラチナやパラジウムなどのレアメタルが必要だったのだが、それよりも遥かに安い銅で出来るというのが、今回の研究成果の見るべき所。どのくらいコストが違うのかと言うと、2016年10月20日現在の金属相場でみてみると。
1gあたり
プラチナ :3500円
パラジウム:2400円
銅 :0.5円(1kgあたり500円)
また、量産時にネックになるレアメタルを使わなくてもいい事も重要。これによってMRAMのようなスピントロニクスデバイスが安定供給できる流れが生まれた事は大きな意味を持つだろう。先日の停電で家のパソコンのデータは消えたが、そういう事も、その内、なくなるだろう。メリットはそれだけじゃなくて、メモリが不揮発になると、プロセッサが止まっていられる時間が増えるので、省エネになって、バッテリー持続時間が延びる。また、止まっている分、熱密度が下がるので、その分、稼働時にハイクロックに動かす事が出来て、高速化も出来る。そういう事が出来るスピントロニクスデバイスがレアメタルを使わないで作れるようになると言う事は、量産しやすくなる事であり、そうなると安くなるので、MRAMの低コスト化と安定供給の両面において、今回の研究は重要と言える。