SKY NOTE

skymouseが思った事考えた事を記したもの

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約束通りに動かない日本というシステム

日本は、電車は正確に動くし、何もかもが約束通りに動く、でも、政治だけは国民の約束通りに動かない。しかし、そもそも政治が約束している相手そのものが違っていたら…と考えると背筋が寒くなる。

 

最近エアコンが設定温度通りに動かなくなって、温度情報を見てみると、外気が4度なのにエアコンのセンサーは8度、室温は16度なのにエアコンのセンサーの室内温度は21度という数字が出てきた。1時間つけていても設定温度に達しないので、メーカーに問い合わせると「今は外気が低いですから、設定温度を高めに設定して様子を見てください」と言われ、センサーが正確でないと、正しい動作が出来ないな…と思った。そう思いつつエアコンの設定温度を上げてみたら、暖かい温風が出てきたので、まぁこれでいいかと思った。

 

センサーか…と考えてみると、社会でいえば、センサーはマスコミである。これが正確に機能しないと政治が正しく機能しない。景気を温度だとすれば、いつまでたっても設定温度に達しないエアコンと同じで、全然景気という温度(GDP)は上向かない。

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そう考えると、日本はマスコミというセンサーが故障しているのだ。実際、図書館に行って、マクロ経済学の基本と言われるマルクスの「資本論」を読んでみると、テレビで言っている事と逆の事が必要だと書いてある。そして、資本論が予言した通り現実の景気がそうなっている。自分は、正しい分析というのは、正確な予測が出来る事だと思っている。その点、資本論は適切に現在の景気を予言していた。つまり、資本論が正確な温度センサーとするならば、正確な予測の出来ない日本のマスコミは壊れた温度センサーである。

 

では、どのように資本論が現在の景気について説明しているのかというというのを、説明したい。資本論は1000ページ以上もの長い本だが、基本的な事は「資本主義は剰余価値の追求である」と言っている。剰余価値というのは、利益の事である。粗利から様々な経費を差し引いた純利益みたいなものだ。資本論では、この剰余価値の追求が徹底されると、利益がどんどん一方方向に蓄積され、最終的には、一握りの富裕層と、それ以外の奴隷になると予言している。実際、世界の資本は、その通りになっている。以下の図は、オックスファムという研究機関が世界の資産について調査・予測したものだ。これは、茶色の線が全体の1%の富裕層の資産の合計で、グリーンの線は、残りの99%の資産の合計である。実線が実測値で点線が予測値である。このグラフの点線の予測値を見ると2016年で上位1%の総資産が下位99%の資産と拮抗している。

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資本論が予測した通り、資本主義を徹底して行うと、特定の階層に資本が集中し、他の階層の所得は下がっていく事が分かる。資本論では、剰余価値の累積によって、そうなると予言しているのだが、現実の数字はその様になっている。つまり、資本論は、この点について正確なのである。日本の場合、どこに剰余価値が累積しているのかというと、主に大企業の内部留保で、その中の特に限られた企業に、その殆どが集中している。2016年の1月時点で、その額は366兆円と言われる。銀行や保険業を覗くと315兆円との事。以下のグラフは金融業(銀行・保険業)を除いた内部留保の増加推移である。

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GDPの増加が横ばいなのに、内部留保は、バブル絶頂期で比較すると以下の通りになる。

 GDP :1989年 416兆円 → 2015年 499兆円 20%増加

 内部留保:1989年 99兆円 → 2015年 315兆円 218%増加

実に2割と3倍の違いとかなり多い、実数値で言えば、この26年間でGDPが83兆円増えた時期に、内部留保は216兆円増えた。なぜそうなったのかというと、それについては、マルサスの過少消費説が説明している。

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ここでいう所得の不平等とは、格差の事で、格差が広がると貧しい人々はモノを買う余裕がなく、豊かなものも所得の一部しか使わない状態になる為、需要が著しく萎縮する。その結果、豊かなものは貯蓄に励み再投資をしない。この貯蓄の増加が経済的均衡を崩すと言っているのだが、この均衡とは需要と供給の均衡の事である。マルサスは、これによって生産縮小の悪循環に陥ると言っている。つまり、格差によって需要と供給のバランスが崩れ、その結果、モノやサービスになるお金(需要)が減り消費されないので生産(再投資)できず、企業の貯蓄が増えて、結果として需要萎縮サイクル、つまり、デフレスパイラルに陥るといっているのである。つまり、経済の不均衡をもたらす格差こそ諸悪の根源であるとマルサスは言っているのである。

 

では、日本で、その格差はどのように生じているのかというと、税制で行われているのである。消費税で需要者からお金を奪い、それを法人減税によって供給者に渡すという、人工デフレとも言うべき政策が、過去28年にもわたって実践されて来たのである。

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税制によって人工的に格差が生み出され、それで需要と供給のバランスが崩れてデフレが引き起こされ、その結果、不況になっているが実態である。この間、日本は、その格差を縮めるどころが広げるような消費増税と、更なる法人減税を行い、さらに非正規雇用の拡大と、格差をより大きく広げる政策をしてきた。いわば、積極的にデフレを引き起こし不況にしてきたのだ。しかし、それを日本のセンサーである大手マスコミは、大きな間違いであると批判してこなかった。人々に経済の仕組みを正確に伝え、本当にしなければいけない、格差是正政策、例えば、消費税の廃止、内部留保への課税、大企業への増税などを訴えてこなかった。

 

内部留保へ課税し、政府が消費した場合のGDP増加余地

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米国は企業の内部留保への課税を行っており、最高税率は39%との事、その事が以下の論文に書かれています。

 参考資料:法人留保金貨税制度(内部留保)の日米比較 

この中で、内部留保に関して企業が投資計画があり、それが行政に認められれば課税対象から外すというものもある。

 

非正規雇用の所得格差、横軸が労働人口、縦軸が所得である。最低限の生活水準を下回る所得しかないのである。そして、その非正規雇用者の2/3は女性である。

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正確な情報が伝わらない事で、日本は、この28年の間、格差是正政策によって、需要と供給の均衡をもたらし、景気を拡大するという事が出来なかったのである。むしろ、その逆を行ってきたのである。大手マスコミは、誤った情報を流す事で、その片棒を担いできたといっても過言ではない。いわば、日本をエアコンだとすると、日本のマスコミは故障した温度センサーである。間違った情報を伝える事でいつまでたっても景気という温度が上向かないというわけである。つまり、日本が約束通りに動かないのは、正確な情報を流さないマスコミによる所が大きいのである。彼らは正確な情報を流すという社会との約束を破っている。それによって沢山の若者が結婚も出来ず、子供も育てられず、車も家も買えない生活を強いられているのである。下の図を見れば、日本だけが雇用者報酬が下落しているのが分かる。

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他の国は、順当に所得が伸びている。日本だけが下がっている。

これは許すべき事だろうか?この約束違反を厳しく罰するべきではないだろうか?私にはそう思えてならない。私たちは、電車が遅れたり、エアコンが壊れたらメーカーや駅員に文句を言うのに、なぜ、マスコミが真実を伝えない事に、私たちは文句を言わないのか?